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放火魔エルフが世界樹を根絶やしにするまで

作者: 結城 からく
掲載日:2025/02/02

 防御魔術が張り巡らされた鉄柵。

 それらを木刀で切り裂きながら俺は進んでいく。

 異変を察知した兵士が俺を睨んで警告する。


「おい、ここは領主様の世界樹園だ。立入禁止だから出ていけ」


「…………」


 俺は足を止めない。

 すると兵士が槍を突きつけてきた。


「聞こえなかったのか。痛い目に遭いたくなければさっさと――」


「黙れよ、馬鹿野郎」


 俺は遮るように返し、木刀の一撃を叩き込んだ。

 吹っ飛んだ兵士は腹を押さえて悶絶する。

 兵士は苦しそうに叫んだ。


「侵入者だ、誰か来てくれ! 木材泥棒が出たぞォッ!」


「木材泥棒だ? ふざけんじゃねぇよ。俺は盗みに来たんじゃない」


 俺は兵士を見下ろす。

 そして背中の火炎放射器から伸びたノズルを掴み、堂々と宣言した。


「——燃やしに来たんだ」


 ノズルから放たれた炎が、視界いっぱいに広がる樹木を包み込んでいった。

 樹液と魔物の血の混合燃料を使った炎は簡単に消えず、風に煽られる形で瞬く間に広がっていく。


「ああ、世界樹がっ」


「水魔術の使い手を呼んでこい! とにかく急げッ!」


 遠くで消火活動が始まったが、決して間に合うことはないだろう。

 倒れる兵士は愕然とする。


「お前、まさか……放火魔のエルフか!」


「そのまさかだよ」


 俺は兵士を殴って気絶させた。

 それからあちこちに炎を散らしながら敷地内を闊歩する。


「さっさと片付けるか」


 樹木が燃えるほど、辺り一帯が黒煙に包まれていく。

 視界不良の中、兵士達が次々と俺に襲いかかってきた。


「あのエルフを殺せェッ! 消火班も動かすのだ!」


「上等だ! 邪魔するってんなら、ぶっ潰してやるよ」


 俺は木刀一本で薙ぎ倒す。

 火炎放射器は殺人用ではないので使わない。

 人間を焼き殺して喜ぶほど悪趣味ではなかった。


 為す術もなく倒される仲間を見て、兵士の一人が後ずさる。

 その兵士は怯えた表情で訴える。


「やめろ! これ以上は世界樹が全滅してしまうっ!」


「寝ぼけてんのか? そのためにやってんだろうが」


 敷地の奥に進んでいくと、ひときわ大きな樹木がそびえ立っていた。

 無駄に幻想的な燐光を帯びて全体が淡く光っている。

 まだ炎が届いておらず、神々しい雰囲気を放っていた。

 俺はその樹木を見上げて舌打ちする。


「ったく、馬鹿みたいに育ちやがって……叩き斬ってやる」


 俺は木刀に魔力を込め、全力で振るう。

 渾身の一撃が樹木を叩き斬り、斜めに割れた樹木が崩れ落ちる。

 そこに炎が移って全体が一気に燃え上がった。


 すぐそばで地主らしき貴族が呆然と膝をついている。

 その男は涙を流して喚いていた。


「あ、ああっ、あああああ……」


 俺は薬草の葉巻をくわえて声をかける。


「すまんな。こうするしかなかった。次は別の金儲けをしてくれ」


「ど、どうして……どうしてお前は、世界樹を燃やすんだ!」


「偽物が蔓延るのは許せねえからだ」


 怨嗟の言葉をぶつけてくる男を無視して、俺はその場を立ち去った。

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