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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

放火魔エルフが世界樹を根絶やしにするまで

作者: 結城 からく

 防御魔術が張り巡らされた鉄柵。

 それらを木刀で切り裂きながら俺は進んでいく。

 異変を察知した兵士が俺を睨んで警告する。


「おい、ここは領主様の世界樹園だ。立入禁止だから出ていけ」


「…………」


 俺は足を止めない。

 すると兵士が槍を突きつけてきた。


「聞こえなかったのか。痛い目に遭いたくなければさっさと――」


「黙れよ、馬鹿野郎」


 俺は遮るように返し、木刀の一撃を叩き込んだ。

 吹っ飛んだ兵士は腹を押さえて悶絶する。

 兵士は苦しそうに叫んだ。


「侵入者だ、誰か来てくれ! 木材泥棒が出たぞォッ!」


「木材泥棒だ? ふざけんじゃねぇよ。俺は盗みに来たんじゃない」


 俺は兵士を見下ろす。

 そして背中の火炎放射器から伸びたノズルを掴み、堂々と宣言した。


「——燃やしに来たんだ」


 ノズルから放たれた炎が、視界いっぱいに広がる樹木を包み込んでいった。

 樹液と魔物の血の混合燃料を使った炎は簡単に消えず、風に煽られる形で瞬く間に広がっていく。


「ああ、世界樹がっ」


「水魔術の使い手を呼んでこい! とにかく急げッ!」


 遠くで消火活動が始まったが、決して間に合うことはないだろう。

 倒れる兵士は愕然とする。


「お前、まさか……放火魔のエルフか!」


「そのまさかだよ」


 俺は兵士を殴って気絶させた。

 それからあちこちに炎を散らしながら敷地内を闊歩する。


「さっさと片付けるか」


 樹木が燃えるほど、辺り一帯が黒煙に包まれていく。

 視界不良の中、兵士達が次々と俺に襲いかかってきた。


「あのエルフを殺せェッ! 消火班も動かすのだ!」


「上等だ! 邪魔するってんなら、ぶっ潰してやるよ」


 俺は木刀一本で薙ぎ倒す。

 火炎放射器は殺人用ではないので使わない。

 人間を焼き殺して喜ぶほど悪趣味ではなかった。


 為す術もなく倒される仲間を見て、兵士の一人が後ずさる。

 その兵士は怯えた表情で訴える。


「やめろ! これ以上は世界樹が全滅してしまうっ!」


「寝ぼけてんのか? そのためにやってんだろうが」


 敷地の奥に進んでいくと、ひときわ大きな樹木がそびえ立っていた。

 無駄に幻想的な燐光を帯びて全体が淡く光っている。

 まだ炎が届いておらず、神々しい雰囲気を放っていた。

 俺はその樹木を見上げて舌打ちする。


「ったく、馬鹿みたいに育ちやがって……叩き斬ってやる」


 俺は木刀に魔力を込め、全力で振るう。

 渾身の一撃が樹木を叩き斬り、斜めに割れた樹木が崩れ落ちる。

 そこに炎が移って全体が一気に燃え上がった。


 すぐそばで地主らしき貴族が呆然と膝をついている。

 その男は涙を流して喚いていた。


「あ、ああっ、あああああ……」


 俺は薬草の葉巻をくわえて声をかける。


「すまんな。こうするしかなかった。次は別の金儲けをしてくれ」


「ど、どうして……どうしてお前は、世界樹を燃やすんだ!」


「偽物が蔓延るのは許せねえからだ」


 怨嗟の言葉をぶつけてくる男を無視して、俺はその場を立ち去った。

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