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公式企画参加してみた⑨ なろうラジオ大賞6

ルームメイトとの卒業旅行は、お花見とお弁当

作者: モモル24号


 私の名はマイニー。大学生活の終わりに卒業記念旅行をしようと考えた。


 どうせなら楽しい思い出を残したい。卒業旅行をどうするか、ルームメイトのエブリに相談をする事にした。


「ねぇエブリ。卒業旅行の事なんだけどさ」


「旅行? お金がなくてバイト三昧な私達のどこにそんなお金があるのよ」


 はぁ‥‥やっぱり駄目だったか。私とエブリは貧乏留学生だ。日本の大学へ入学する時には、お金を出してもらえた。


 でも生活費用が足りない。私は親友で同じ留学生のエブリと、アルバイトをしながら大学生活を送って来たのだ。


 大学を卒業した後、私達は母国へ戻る。せっかく憧れの日本へ留学出来たのだ。オンボロの下宿先とアルバイト先のスーパーのレジ打ち。それが帰国した後、日本の情景の記憶とか悲し過ぎると思わない?


「いいじゃない、アニメは沢山見れたわ」


 エブリが日本へ来たのは新作アニメを見て、レアなグッズを集めるため。彼女の推しは癖が強い。


「マイニー、あなただって、美味しいもの沢山食べたよね」


「それを言われると‥‥」


 ぐうの音も出ない。お腹はぐうぐう鳴る。苦学生になったのは趣味にお金をつぎ込んだから。


 オンボロの下宿先は古いだけで、風情があって私は好き。狭い部屋をシェアしたのも、エブリとは仲良しで一緒に居たかったから。


「現実を見なさい、マイニー。私たちはやり過ぎ(無駄遣い)なのよ」


 がっくりと肩を落とす私。楽しい三年間だったのは認める。でも、卒業旅行を諦めたくない。


「美味しいものをいつもお裾分けしてくれたお礼に、卒業の記念はわたしが用意しましょう」


 それはお互い様だと思う。でもエブリが同じ気持ちを持ってくれていて嬉しかった。


 ────そして、私たち二人の卒業の時が近づく。日本へ長く滞在出来るのは、これで最後。そう思うと寂しくなる。


「さて、約束を果たす時が来たね」


 下宿先の部屋で、エブリがニヤッと紙袋を持ち上げてみせた。


「いざ、伝説の地へゆくでござる」


 エブリの変な日本語に私は笑う。彼女が案内したのは、通いなれた大学の裏庭の一本桜の下だった。


「ここは‥‥富士山が見える!」


「大学に通っているものだけの特等席よ。ほら、花見のお弁当も」


 焼いた鮭をほぐした具沢山おむすびに、ほうれん草の入った卵焼き。いつもよりちょっと贅沢だ。


 麦茶を紙コップに注ぎ、私達は零さないように声を上げる。


「乾杯〜!」


 他の学生には日常の景色。でも私達には最高に価値ある卒業記念の思い出となった。


 

 お読みいただきありがとうございます。


 そこで暮らす当たり前が、他の誰かにはかけがえのない宝物になるかもしれせん。

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― 新着の感想 ―
日本の美しい景色に、日本の文化とも言えるお弁当。 きっと二人にとって、素敵な思い出になるでしょうね。 後書きのお言葉も心に沁みました。 温かなお話をありがとうございます。
マイニーとエブリ、国に帰ってもまた日本に遊びに来てほしいです(о´∀`о) 桜と富士山はザ・日本!って感じでいいですね(*´꒳`*)
心温まるお話でした。 帰国したら、日本にいたときのすべてが思い出になるのでしょうが、最後に素敵な思い出が作れてよかったですね。 私は、日本に滞在している外国人の方のユーチューブをよく見ています。 みな…
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