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<神に見つめる人>  作者: 空白
『死』への恐怖
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雷獄の果て、滅びの鍵

緋は自身の因縁を断ち切るため、仲間たちを遠ざけ、命を懸けた孤独な戦いに挑む。一方、嵐をはじめとする仲間たちは、緋の自己犠牲を止めようと奮闘するが、その思いは彼女に届かない。


戦場では激しい攻防が繰り広げられ、都市は破壊され、仲間たちも次第に追い詰められていく。緋は太刀を胸に突き立て、過去の罪と宿命を受け入れながら、自らを犠牲にして魔神に立ち向かう決意を固める…


緋は胸腔から紫紅色に染まった太刀をゆっくりと引き抜き、その刃を握りしめた。彼女の視線は鋭く、目の前の敵を見据えている。


次の瞬間、彼女の周囲に強烈な魔力が集まり、衝撃波となって周囲に広がった。大地が砕け、無数の雷光が緋の周りを駆け巡る。空は漆黒の雲で覆われ、その中に無数の閃光が走る様子が見て取れる。


「祭・雷獄虚影」

緋は高々と太刀を掲げると、一気に血の魔神へ向けて振り下ろした。その瞬間、周囲の空間からはガラスが砕けるような鋭い音が響き渡った。


遠くからその光景を見つめる陵の胸は、恐怖で締めつけられるように感じた。心臓の鼓動は止まり、全身が凍りつくかのようだ。彼の目に映るのは、ただひたすらに「死」を思わせる光景だった。


緋の周囲では、赤黒い剣気が空を裂き、魔神の放つ球体は触れた瞬間に爆裂し、血のような赤い光が街に降り注ぐ。


太刀を握る緋の手は小刻みに震え、その両手には大小の無数の傷が刻まれている。戦場は静寂に包まれたかのように見えたが、その静けさの中には深い絶望が渦巻いていた。彼女の白い髪と漆黒の翼は徐々に元の純白へと戻り、翼は儚くも崩れ落ち、空へと舞い散る。


「……まだだ……終わらせる……!」

緋は太刀を振りかざし、魔神に向けて最後の一撃を繰り出した。斬撃が走った瞬間、戦場の空気は圧倒的な魔力で満たされる。遠くにいる陵さえも息が詰まり、呼吸が困難になるほどの重圧を感じた。


雷光とともに魔神の身体は真っ二つに裂け、その裂け目からは赤黒い傷が広がり、次第に侵食されていく。魔神は怒りの咆哮を上げたが、その声も次第に弱まり、傷口から半透明の物体が飛び出し、地中深くへと消えていった。


緋は太刀を再び握ろうとするが、その右手は徐々に霧散し、彼女の身体は少しずつこの世界から消え始めていた。

口元から鮮血を吐き出しながらも、緋は地面に落ちた魔神の暗紅色の魔晶を拾い上げ、それを嵐に差し出す。


「これがあれば……さっきの人を……生き返らせられる……」

「お前が使え!お前の方が今危ないんだぞ!」嵐は叫び声をあげた。


しかし緋は弱々しく首を振り、無理やり嵐の手に魔晶を押し付けた。そして力尽きたように地面に膝をつくと、胸に掛けていた小さなペンダントを左手で握り締めた。


「……何人殺してきた……これで少しは償えるだろうか……」

「いい主人と会えるように……」


そう呟くと、緋は太刀を鞘に収めた。荒れ果てた戦場の地面には、少しずつ新しい草が芽吹き始めた。


緋は静かに目を閉じた。彼女の身体は四肢から徐々に崩れ去り、光となって空へと消えていく。


「お父さん……お母さん……」

彼女が再び目を開けた時、目の前には幼い頃の自分がいた。笑顔で走り回る天真爛漫な少女――かつて「天才」と呼ばれた自分自身。


緋はその頃、15歳だった。


幼さの残る彼女は遊ぶのが大好きで、毎日外を駆け回っていた。


彼女は伝説的な種族である「彼岸龍」の一族に生まれ、その中でも天才と称えられていた。


魔法を使わずとも人の姿を保つ特異な力を持ち、どこまでもその才能を誇っていた。


血の月が空に昇り、村を覆う影は圧倒的な存在感を放っていた。その巨体はまるで山のようにそびえ立ち、一振りで建物を粉砕し、地面を抉る。村人たちは次々と逃げ惑い、緋の耳には悲鳴と怒号がこだまする。


「……逃げなきゃ……!」


緋は足を引きずるようにして走り続けていた。体力は限界に近く、呼吸は荒くなるばかりだった。自分の力では到底立ち向かえないと分かっていながらも、彼女の足は止まらなかった。


その時、大地が突然大きく揺れ、足元の地面が崩れた。緋の身体は制御を失い、暗闇の中へと落ちていった。


「っ! うそ……!」


気がつくと、彼女は冷たく湿った地面に横たわっていた。周囲は闇に包まれ、わずかに響く水滴の音だけが耳に届く。手探りで前へ進むと、洞窟の奥に一筋の光が見えた。


「ここは……?」


緋が慎重に光へ向かうと、その先には何かが置かれていた。それは、一振りの太刀だった。太刀は朽ちた台座に立て掛けられ、薄い光を放っていた。その異様な雰囲気に緋は一瞬怯んだが、不思議と目が離せなかった。


洞窟の奥で太刀を握った瞬間、緋の視界は暗転し、気がつくと異様な光景の中に立っていた。


空には逆さまに浮かぶ山々が並び、大地は赤黒い水で満たされている。この奇妙な空間の中心に、一人の影が佇んでいた。


その影は人間の形をしていたが、顔も輪郭も漠然としており、明確には見えなかった。ただ、その目だけが緋を鋭く見つめ、深い声で話しかけてきた。


「小娘、お前が私を目覚めさせたか。」


緋はその声に戸惑いながらも、勇気を振り絞って問いかけた。

「……あなたは誰?ここはどこ?」


「我が名は「凋零と創生の鍵」、または『終焉の花』でも呼ばれる。お前が立つ場所は、お前の心の深淵だ。」


緋は一瞬言葉を失ったが、再び意を決して口を開いた。

「私には力が必要なの。……守りたい人がいるの!」


影は不気味に笑いながら一歩前に進み、緋を見下ろした。

「守りたい……か。だがその力を得るには、相応の代償を払わねばならぬ。お前はその覚悟があるのか?」


緋は息を飲みながらも、その目に迷いの色はなかった。

「ある。何だって払う!」


その答えに影は再び笑みを浮かべ、太刀が緋の目の前に現れた。

「ならば、契約を交わそう。我が力をお前に貸し与える代わりに、お前の龍鱗、そして右眼の色をいただこう。」


緋は少しの間その条件を考えたが、すぐに頷いた。

「いいわ。全部持っていって。」


その瞬間、緋の身体に激痛が走った。龍鱗は次々と崩れ落ち、右眼の視界が色を失っていく。膝をつく彼女の耳に、影の声が低く響いた。


「お前の力でどこまで抗えるか、見せてもらおう。」


視界が元に戻ると、緋は再び洞窟の中にいた。そして手には太刀が握られていた。


「……これが、私の……力……」


でもしかし…

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