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<神に見つめる人>  作者: 空白
『死』への恐怖
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運命に揺れる星の夜

私は再び家の規則に反抗し、森へと駆け出した。そこで出会ったのは「カロスト」という名の人だった。確かに彼に会ったことはないはずなのに、記憶の奥底に奇妙な懐かしさが込み上げてくる……


私は彼のそばに座り、その星空をぼんやりと見上げていた。今日は何かがいつもと違う気がするけれど、それが何なのかは分からなかった。


「浅羽…」

「その人、本当に彼にとって大切なんだね。寝言でも名前を呼ぶなんて…」


そう呟きながら私は立ち上がり、この静かな森を見渡した。風で草が揺れる音以外、何も聞こえない……

「眠い……」


目を閉じようとしたその時、遠くから足音が聞こえてきた。同時に、不吉な予感が胸を満たしていく。


「起きて!何かが近づいてくる!」


すぐにカロストを起こした。私も死の恐怖を感じていたが、体が動かない……足がすくんでしまっている。それなのに彼は私を頼もしそうな目で見てくる!逃げ出すなんてできないよ、ああもう!

足の震えと共に耳鳴りも起きたが、私は前方を凝視した。何が来るのかを見極めるしかない。


「まあまあ、セルト閣下。こんな所でお会いできるとはね。」


なぜ……暗闇の中、見えるのは赤い光る瞳だけ。そして、漂う血の匂いが耐え難い……気持ち悪い……。その声も、聞き覚えがある。


「なぜお前がここにいる……」

「そんなに警戒するな。私はただ、あのお方の命令を遂行しているだけだ。」


彼は誰だ?「あのお方」とは誰だ?なぜ私を知っている?私の頭の中では疑問が次々に湧き上がるが、誰も答えてはくれない。


「捕まえた」


金属がぶつかり合う音が響き、その後赤い光が一瞬閃いた。次に気がついた時、私は血の海に倒れていた。

「逃げ…ろ………」

必死に伝えようとしたが、喉からは声が出ない。


……


再び目を覚ました時、私は王城の近くの草地に横たわっていた。そして、あの時の傷跡はどこにも残っていなかった。

すべてが奇妙すぎる……あの人は一体誰だったのか……?


私は疑問を抱きながら家に戻ると、父からいつも通りの叱責(しっせき)を受けた。「また勝手に外で何かしてきたのか」と……。

でも、そんなことを言われるたびに、自由を渇望する気持ちは強くなった。


その後、再び家を抜け出し、またカロストと出会った。そして彼を家の近くに住まわせるようになった。


「一体なぜ…..」

夜、私は自分のベッドで何度も自問したが、やはり答えは見つからない。


ほどなくして、私は彼との三度目の出会いを迎えた。真相を知りたいという気持ちもあったが、未婚夫のもとへ向かう道中の退屈を紛らわせるためでもあった。


しかし、彼の語る話を聞いていると、疑問はむしろ増えるばかりだった。突っ込みどころは山ほどあるが、どこから言えばいいのか分からない。


今、私は未婚夫のナミエル・ドロフォムに抱きかかえられ、迎えの馬車に乗せられた。

馬車の中は派手ではないが質素で落ち着いており、不思議と安心感を与えてくれる。


「セルト、最近どうだい?」

彼は微笑みながら私を見つめている。その笑顔は職業的なもののようで、どこか虚偽的だ。まるで義務感から笑っているように見える。


「まあ普通かな。そっちは?」


「俺はもちろん最高さ。君とこの素晴らしい午後を過ごせたんだからね。」

「ただ、これからは……」


彼はその後、これからすることについて延々と話し始めたが、私は聞く気にはなれなかった。

所詮これは家同士の経済的な安定を図るための政略結婚だ。それに彼も苦労しているのだろう。


馬車は静かな小さな町に到着した。


柔らかな日差しが石畳の道に降り注ぎ、穏やかな空気が広がっている。ナミエルは私の手を引き、一軒豪華ではないが温かみのある雰囲気の小さなレストランに案内してくれた。


店内には木製のテーブルと椅子が並び、古い木の香りが漂っている。壁には田舎らしい風景画がいくつか飾られていた。


「ここは、僕が子供の頃よく来ていた場所なんだ。今はあまり来なくなったけど、味は変わらないよ。」

ナミエルはそう言いながら、椅子を引いて私を座らせてくれた。


「意外ね。あなたみたいな人がこんな普通の場所を好むなんて。」私はつい彼をからかってしまった。


「ハハ、そうかもしれないね。でも、あの華やかな宴会場にいるより、こういう場所のほうが自由に話せる気がするんだ。」


私たちは数品の素朴な家庭料理を注文した。その間、彼は幼い頃のエピソードをいくつか語り始めた。


その声色には、珍しく純粋な懐かしさがにじんでいた。


「その頃、父はまだあんなに忙しくなくて、時間を作ってここに連れてきてくれたんだ。その頃の僕は、今よりずっと自由だった気がするよ。」


彼は頬杖をつきながら窓の外を見て、遠い目をしていた。


「そうなのね。なんだか私たち、少し似ているかも。」

私も静かに答えた。声には、少しのため息が混じっていた。


その瞬間、空気が静かになった。

私たちはしばらく無言のまま、店内に流れる穏やかな音楽だけが耳に響いていた。


突然、ナミエルはポケットから小さな箱を取り出した。


その中には繊細な銀のチェーンのネックレスが入っており、小さな青い宝石が光を受けて輝いていた。


「これ、君にあげるよ。高価なものじゃないけど、君に似合うと思って。」


私は彼の微笑む顔を見つめたまま、手を伸ばしかけて引っ込めてしまった。どうしてか、少し戸惑ってしまったのだ。


「私、お返しを用意していないけど……」

私は小さな声でそう言った。


「お返しなんていらないよ。ただ、君に渡したかっただけだから。」


彼は優しくネックレスを私の首にかけ、留め具をそっと締めた。その時、彼の指先が私の首筋に触れ、私は思わず視線をそらした。


「ありがとう。」

小さな声で礼を言いながら、青い宝石が陽光を受けて輝く様子を見つめた。

一瞬、心がときめいたが、その感情をすぐに理性で押し込めた。


食事を終えた後、私たちは町の通りをゆっくりと歩いた。周りには行き交う人々の笑い声が響き、暖かな午後の時間が流れている。


彼は野花の小さな束を買って私に手渡してくれた。私は花束を受け取り、そっと香りを嗅ぐと、淡い香りが鼻をくすぐり思わず微笑んでしまった。


「ナミエル、どうして私にこんなに優しくしてくれるの?これって、みんなにも同じなの?」

つい、私はそう口にしてしまった。


「いや、君には特別、少しだけ心を込めているのかもね。」

彼は少し間を置きながら、意味ありげに笑った。


そんな一日。穏やかに見えるその時間の中で、心の奥に複雑な感情が静かに渦巻いていた。


時間は瞬く間に過ぎ、気がつけば日も沈んでいた。

「もう遅いから、そろそろ帰らないと。今日はありがとう。」

「こんなに遅いなら、ここに泊まっていかないか?叔父上には俺から説明するよ。」


疲れが全身を覆っていた私は、彼の提案に従うことにした。


彼の別荘に入ると、私の家ほど豪華ではないが、必要なものは全て揃っていた。この控えめな雰囲気こそが、私が求めていたものなのかもしれない。皆から尊敬される存在であるよりも……。


簡単に身支度を整えた後、ベッドに横たわった。しかし、彼は私の隣でこちらを見ている。

「あなたも疲れているでしょう?早く寝て。」

「それじゃあ、失礼するよ。」


彼が布団をめくるのを見て、私はようやく違和感に気付いた。

「私たちはまだ結婚していないのよ。同じベッドで寝るなんて……」


そう言って起き上がろうとした時、彼にベッドに押し戻された。


「いずれ君は俺のものになるんだ。今夜くらい一緒に寝てもいいじゃないか。」


彼の言葉に嫌悪感を覚えたが、最終的に妥協するしかなかった。


「分かった。でも絶対に触らないで。これは経済的な結婚で、子供を作ることは考えていないから。」

「分かったよ。早く寝よう。」


その後、不安を抱えながら眠りについた。だが、その夜はよく眠れなかった。彼が何を考えているのか、ずっと気になって仕方がなかった。


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