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第1話 青年との再会

初めまして!

もしくはまたお会いしましたね!

この作品は過去作「MT―メタル・トルーパー戦記―」のリメイク版です。

少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです。

  どこまでも広がるような青空。

 その下に広がるのは、緑溢れる大地……ではない。

 抉られた大地になぎ倒された木々。

 悲惨さに目を覆いたくなるような光景の中で、五つの人影があった。

 いや、人影ではない。

 人影のように見える巨大な人型のロボットが五つ、真っ直ぐと道沿いに進んでいた。


「いや~、今回も大勝でしたね隊長!」


 ロボットからまだ年若い男の声が周りに響き渡る。

 その事に眉をひそめながら、先頭を歩くロボットの乗り手が通信装置のスイッチを入れる。


「伍長、いまはパトロールの任務中だ。口を閉じろ」

「いいじゃないですか。負けたばかりのアーストンの連中なんて、警戒する方が馬鹿らしいって奴ですよ」

「……まったく」


 隊長と呼ばれいた男は、言うだけ無駄だと思い口を閉ざす。

 だが伍長の言う事も分からないでは無かった。

 彼らが所属している国であるガスア帝国と因縁の相手であるアーストン王国。

 その一領地を巡る戦いが終わったのは、つい先日。

 虎の子であったアーストンの機動部隊を散々に痛め付けたのである。

 立て直しにも時間が掛かるだろうというのは、隊長だけだはなく上層部も同意見であった。

 とは言え作戦中の無駄な会話は避けるべきだと思い直し再び忠告しようとした時、伍長がある噂を口にし始めのである。


「そう言えば聞いた事あります? アーストンの悪魔の話」

「悪魔?」


 普段ならこの手の話題は気にしない隊長であったが、妙な胸騒ぎがして伍長の話に耳を傾ける。


「何でもどんな危険な任務だろうと必ず生きて帰ってきて、敵対したエース機を必ず討ち取るって奴がいるそうなんすよ」

「……よくある噂話だな」

「まだまだ。実はコイツはまだ年端もいかない少年兵だって噂なんですよ。有り得ないですよね」


 笑いながら言う伍長に対して、隊長は静かにその噂を分析していた。

 どの国も人員不足なのは言うまでもない。

 少年兵がいるとしてもおかしくはない。

 だが碌な教育も受けてないであろう少年兵が、熟練された兵士を打ち倒すというのは信じられない。

 大方噂に尾びれがついているか、アーストンが戦意向上のために流したデマであろうと隊長は結論づけた。


「隊長? どうしたんですか?」

「……いや、何でもない。そろそろ口を閉じろ」


 隊長が再びパトロールに集中しようとし始めた矢先であった。

 後方から爆音が鳴り響くと同時に、機体の警告音が鳴り響いたのである。


「何だ! どうした!」

「た、隊長! 上です!」


 隊長が上を見上げるとそこにはアーストンの船がガスアの陣地に、多方向から向かっていたのである。


「くっ! アーストンめ! まだこんな余力を!」

「た、隊長。どうすれば……」

「うろたえるな! まずは味方と合流する! 急げ!」


 そう言って部隊を引き返そうとした時であった。

 再び機体の警告音が鳴り響くと、レーダーに急接近してくる機影が見えた。


「!? 総員警戒!!」


 だがその言葉を言い終わる前に、一番右端にいた彼の部下の機体が長いブレードによって切り裂かれていた。

 派手に爆散する部下の機体をバックに、こちらを見つめるその姿はまるで……


「あ、悪魔だ……!」


 伍長がうろたえながら震える声で呟いた言葉が、ピッタリだと隊長もつい思ってしまう。

 だが気持ちを切り替えると、隊長は大声で通信装置に叫ぶ。


「落ち着け! 相手は一機、囲んで撃破するぞ!」

「り、了解!」


 隊長の一喝で落ち着いたのか、部下たちは敵機を囲みこむ動きを取る。

 だが。


「こ、こいつ! 速い!」


 動きを再開した敵機は想像以上のスピードを見せ、かく乱していく。


「くそぉ! くそぉぉ!!」

「伍長! 乱射するな! 味方に当たる!」


 恐怖のためか敵味方かまわず撃ち始める伍長を止めようとする隊長であったが、既に敵機は次の動きを見せていた。

 動きを止めた味方に肩から突撃して盾しながら突撃すると、もう一機にぶつける。

 衝撃で動けなくなっている所に、二機ともブレードで両断されてしまうのであった。


「あ、ああ……」


 目の前の惨状に伍長が何も言えなくなってしまう中、隊長は冷静に考え始める。

 敵機はアーストン製の『シルフ』。

 機動性を重視させた機体ではあるが、あそこまでのスピードを出せるスペックではないはずであった。


(特殊なチューニングをしてあるのか? それとも……パイロットが化物か?)


 いずれにせよ三機を瞬く間に撃破した相手である。

 伍長と連携すればこちらが有利に戦えるはずである。


「あぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「伍長!?」


 だが恐怖に支配された伍長は近接戦闘用のソードを抜くと、そのまま突撃してしまう。

 すぐさま援護するように、ライフルで敵機に向けて牽制する。

 この攻撃で倒せなくても伍長が落ち着きを取り戻せばいい、そう思っていた隊長であった。

 だが敵機はまるで舞を踊っているかのように弾丸を避けて行くと、伍長の機体の腕を切り落とす。


「た、隊長! 隊ちょぉぉぉぉぉう!!」


 伍長の断末魔は敵機がブレードを薙ぎ払い、彼の機体の上下が切り離された事で途絶えた。

 爆散していった部下の機体の残骸を見下ろしながら、隊長はただ静かに敵機と向かいあう。


「化物め……部下の仇は取らせてもらうぞ」


 隊長は一人そう言うと、バーニアを噴かせてこちらから突撃していく。

 弾切れまで撃ち尽くすとライフルを捨て、ソードで切りつける。

 敵機はヒラリと弾丸を避けると、ブレードでソードを受け止める。


「貴様が何者であろうと、この俺もエースと言われた男! 必ず貴様を討ち取ってみせる!」


 近接通信でそう敵機のパイロットに言い切る隊長。

 返事は期待していない。

 自分の気迫を知らしめたかっただけである。


「……へぇ。アンタもエースなんだ。つくづく縁があるな」


 だが敵機からそう返事が返って来た時、隊長は大いに驚いた。

 何故ならその声は、まだ変声期も来てないであろう少年の声だったからである。


「こ、子ども……なのか?」

「そうだけど? 何か問題でもあるか?」

「っ!」


 まるで当たり前の事を聞かれたように答える子どもの声に動揺しながら、隊長は剣を振るう。

 それに対応し機体を操り続け様の攻撃を捌いていくその姿に、隊長は思わず叫ぶ。


「君は自分がやっている事を理解しているのか! これは戦争なんだぞ!」

「当たり前だろ。誰が好き好んで人殺しなんてやるかよ」


 だがそんな叫びとは逆に、少年は何を当たり前の事をと言わんばかりの口調で反論する。


「けど今の俺たちにはこの生き方しかない。憐れむぐらいならさっさと戦争を解決してくれよ、エースさん?」

「そ、それは……ぐっ!」


 一瞬の気の緩みが出たのか、今度は攻守が入れ替わり少年が攻め立てる。

 鋭くも重い一撃一撃が、隊長の機体の装甲を削っていく。


「こ、こんな所で……!」

「悪いけど、アンタに時間をあまりかけれないんでね。そろそろ決めさせてもらうよ」


 そう少年が言い切ると、隊長の機体が持っていたソードを大きく弾く。

 遠く離れた位置に突き刺さった唯一の近接武器を目で追いながら、隊長は覚悟を決める。


「……一つだけいいか?」

「何だ?」

「言いたくはないが少年兵というのは消耗品扱いだ。これから生き残れる可能性なんてごく僅かだろう」

「で?」

「そんな中でお前は一体何を目標に生きている。この先一体何をしたいんだ」

「……決まっているだろ」


 少年はブレードを高々と振り上げる。

 隊長はこの先の運命を受け入れたのか、機体を動かそうともしない。

 その様子を見下ろしながら、少年は質問の答えを言い切る。


「生き抜く事だ」


 一気に振り降ろしたブレードが隊長の機体を切り裂く。

 爆散した機体跡を一瞥する事もなく、少年はアーストン方向に戻っていくのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 —―いま我々が生きている世界とこの世界は近しい歴史を辿ってきた。

 だが二つの世界の大きな違いは、数十年前に起こった大震災であろう。

 突如世界中を襲ったこの大震災は多くの自然を破壊し、人の営みを壊していった。

 結果世界人口の三分の一が亡くなり、荒れた大地の復旧には多くの時間がかかるとされ人々は嘆き悲しんだ。


 しかし、そこに神から差し出された救いのように新たに発見された物質があった。

 この未知の物質を人々は神代の鉱物の名を取り『オリハルコン』と名付けた。

 さらにこのオリハルコンに力を加える事により、半永久的なエネルギーを得る事ができた。

 その名は『エーテル』。

 様々な応用が利くこのエーテルの発見によって、人々は凄まじいスピードで復興を成し遂げていった。


 だが、人々が安らぎを得られたのもごく僅かであった。

 エーテルによって豊かになっていくのにつれ、エーテルを巡る争いが勃発するようになったのである。

 個々人から集団、企業間から新たに建国した国々へと規模は大きくなる一方であった。


 そこにさらに追い打ちをかけるように、ある兵器企業がエーテルを使った人型機動兵器の開発に成功したのである。

 この『メタル・トルーパー』と名付けられたその兵器の登場によって、争いは激化していくのであった。


 そこから長い年月が経ち、二つの大国が覇権を握っていると言っても過言ではなかった。

 一つはアーストン王国。

 首都エリンを中心とした国家であり、豊かな自然と豊富なエーテル資源を強みとする国。

 もう一つはガスア帝国。

 帝都ペンドラを中心とし、エーテル産業が発達しているのが強みである。

 この二国は小規模なものから大規模なものまで、争いを繰り返しておりその度に双方に被害をもたらしたのである。


 しかし五年前、突如として締結された休戦条約によって争いはピタリと止まった。

 だが決して平和なった訳ではない。

 互いに未だに仮想敵対国と見なしており、周辺の小国を併合しながら力を付けていったのである。

 そんな綱渡りのような危うい関係を続けながら、建前上の平和は続いている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 —―新西暦56年 10月


 アーストンの首都であるエリンから遠く離れた田舎町であるトスマス。

 未だ周辺国家と争いが続いている中で、このトスマスは平和そのものであった。

 その平和そのものとも言えるようなトスマスに、野太い怒鳴り声が鳴り響く。


「おらぁ! さっさと仕事をしろ! 給料をちゃんと貰いたいならな!」


 声の主は小さな町工場の工場長であった。

 短気な性格だとトスマスでは有名で、今日も安い給料で従業員を働かせていた。

 そんな彼の元に、ある声がかけられる。


「すまない。少しいいかな」

「今忙しいだ! 後にしろ! ……って軍人さんでしたか」


 工場長に声をかけたのは、見るからに位の高そうな初老の男性であった。

 その両隣には屈強な軍人が立っており、威圧感を発揮していた。


「ぐ、軍人さまがこんな汚いところに何でしょうか?」


 相手が軍人だと分かると明らかに態度を豹変させ、下手に出る工場長に対し初老の男は軽く笑う。


「人を探している。すまないが従業員を集めてくれないか?」

「へ、ヘイ分かりました! おいお前ら! 全員ここに並べ! 今すぐだ!」


 工場長が叫ぶと同時に働いていた全員が集まり一列に並ぶ。

 集められた全員の顔を見ていく初老の男であったが、ある一名の青年だけまともに顔を合わせようとしない。


「おい何してやがる! 軍人様にちゃんと顔を見せねぇか!」

「……工場長」

「ヘイ、何でしょう!」

「少し黙っててくれ」


 殺気にも似た威圧感に工場長が押し黙る中、初老の男は目を合わせようとしない青年に声をかける。


「……大きくなったな」

「……」


 声にも答えず反応を示さない青年に対し、初老の男は笑いながら肩を叩く。


「ふふ、性格は相変わらずだな。随分と探すのに苦労したぞ」

「……いっその事諦めてくれればこちらとすれば、助かったんですけどね。スコット・オーウェン准将」

「惜しいな。今は准将ではなく少将だ」


 初老の男、いやスコットは青年に嫌味を言われても笑顔で受け止める。

 周りの人物は准将と青年の関係性が分からず、混乱しているようであった。


「で? 少将自ら小汚い自分に何の用なんですか?」

「……力を貸して欲しい」

「お断りします」


 准将自らのお願いをノータイムで断った事に周りが騒めくが、当の本人たちは気にせず会話を続ける。


「既に何年もメタル・トルーパーには乗っていません。それに俺は」

「好きで乗っていた訳ではない、だろう。知っている。だが私にはお前のその力が必要なのだ。悪魔とまで呼ばれたその力が」

「……」


 黙り込む青年に対して、スコットは懐から一枚の書類を手渡す。


「これは?」

「承諾の書類だ。もし提案に乗ったらお前を少尉にする、というな」


 周りが驚愕に包まれる中、青年も驚愕したように目を見開くとスコットの目を見つめる。


「本気か? 俺一人のためにこんな真似をするなんて」

「本気だとも。それを伝えるためにここに来たんだ」

「……」

「……」


 沈黙が包む中、青年はため息を吐いて工場長の方を向く。


「すいません工場長。今日でここを辞めさせてもらいます」

「お、おお」


 未だ状況が飲みこめない工場長をそのままに、青年は再びスコットと向き合う。


「後悔しても遅いですからね」

「お前の実力ならそんな事態は起こらんさ。これから頼むぞ」


「ユーリ・アカバ」


 少将スコットと青年ユーリ。

 この再会がこの時代を動かすうねりになる事を、今は誰も知らない。

今回はここまでとなります。

続きは今後次第となります。

少しでも皆さんに面白いと思ってもらえるような作品作りを心掛けたいです。


では、また次回!

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