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黄金色の果実

作者: ミヤビ

昔、あるところに雲を突き抜けるほど大きな樹があり、枝には黄金色をした果実がいくつも実っていました。

果実の樹の持ち主である男は人々にこの果実は今まで食べたこともないほど美味で、何日経っても瑞々しさを保っているということを大きな声で叫びました。

男の話を聞いた人々は樹に群がって登り、我先にと果実に手を伸ばしました。

果実を口にした一人の農夫が目を大きく開き、「美味い!」っと叫びます。続いて貴族の男も「こんなにも美味しい果実、今まで食べたことがない!」と、涙を流しながら食べていました。

人々はすっかり果実の虜になっており、身分の違うもの達が連日連夜、果実の樹に押し寄せています。

樹の持ち主である男は初めはタダで果実を人々に与えていましたが。いつしか果実を食べるには金貨を払わなければいけない決まりを作りました。

貴族たちは喜んで金貨を払いましたが。貧しい人たちは必死に働いた稼ぎを果実のために払い、あるいは借金をして果実を求めました。

数日が経ったある日のこと、いつものように金貨を払って果実を食べた貴族が首を傾げました。

「ん? いつもと味が違うぞ……どうしてだ?」

他の人も同じように果実を食べては首を傾げ、なかには果実が渋いと吐き出す人もいました。

「皆さん、果実というのは色々な顔を持っています。ひとつひとつ味が違うのも仕方のないことなのです」

果実の樹の持ち主である男は人々に笑いながら言いました。皆がいなくなったあと、男は慌てて果実や樹に変わったところがないかを調べました。すると、樹の根が枯れはじめていたのです。

男は慌てて奴隷たちを集め、樹に水を与えました。しかし、そんなことでどうにかなるはずもなく、枝についていた果実も見る見るうちに腐りはじめたのです。

男は奴隷たちに今度は果実に色を塗って新鮮なように見せるのだと命じましたが。すでに果実のほとんどは腐り、枝から落ちていく始末です。

やがて全ての果実が腐り、樹も枯れ果てたあと、大きな音を立てて折れてしまいました。

樹の持ち主である男は折れた樹が自分のほうに倒れてくるのを見て慌てて逃げましたが。あっという間に樹は地面に落ちて男を押し潰してしまいました。




どんなに素晴らしいものでも時間が経てば腐敗していくもの。いくら誤魔化したところで腐敗を防ぐことは出来ません


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