小説を書き始めるのなら、できるだけ何でもない普通の日の方が良い
年末年始、少し長めの休みになる人も多いのではなかろうか。
休みの日になると、普段はあまり確保できない『時間』というものが手に入る。
どうしようか。
旅行に行こうにも、おそらくこの時期はどこも混んでいる。
それにまだ、某ウイルスの流行も気になるところ。そもそも外に出ることを躊躇してしまう。
よし、そうだ。
今年の年末年始こそ、小説を書き始めよう……そう思い、しかし大半の人は思うだけで終わってしまう。
時間は、無限にあるように思えて、そもそもまったく無限ではないのだ。
小説を、例えば単行本一冊の分だけ書こうと思ったとする。
するとだいたい十万文字が必要になる。
年末年始は一週間ほど、休めることになったとする。
運良く、二日で書きたいことの構想がまとまった。
さて、残りは五日しかない。
休みとはいっても、丸一日小説を書き続けることはできない。
少なくとも6〜8時間は寝たいところだし、食事に風呂に、気晴らしに。
論理的に考えて、確実に確保できるのは普段仕事をしている八時間とか、それぐらい。
ちなみに私の場合、書くことの構想がまとまっていれば、(そして、私自身の調子が良ければ)一時間で五千文字ぐらいは書くことができる。
でも、小説とかを書こうとしたら、それぐらいが限界という気もしている。
人によって書くペースは様々だろうけど、私のペースで考えたとき……
8時間×5000文字=4万文字
執筆期間が五日だとすれば
4万文字×5日=20万文字! 単行本二冊分!
などと、そんなに上手くいくわけがなく。
これも私の場合なのだけど、慣れない執筆を八時間ぶっ続けでというのは無理がある。
せいぜい、一時間集中して、三時間気晴らしをして……という、めちゃくちゃなペースになることが多い。
気晴らしというか、アイデアを再補填しないと、ネタ切れになってしまうのだ。
他の人の作品に目を通したり、ちょっと気晴らしにゲームをしたり。
そうなると、実は一日で執筆できる時間は、せいぜい2時間と言うことになり、さっきの「20万文字」計算は「5万文字」ということになってしまう。
普通の小説のペースだったら、クライマックスにすら到達していない。
で、休みが明けて仕事が始まって、執筆活動はそれで終わりになってしまう。
せっかく書いた作品も、中途半端だからということで公開されず。
というか、そもそも!
普段小説を書いていない人が、一時間も集中して執筆できるのか!
という問題もある。それは、知らん。できる人はできると思うし、私だったら無理だと思う。
と、いうことで。
長期休暇で何かを変えようとしている人は、その考えを改めた方が良い。
むしろ、長期休暇に集中して執筆するためにこそ、まだ何でもないようなこの時期に、書き始めるべきなのだ。
毎日三十分、仕事の前に机に向かうとか。
疲れて帰ってきた身体に鞭打って、炊飯器が米を炊き上げるまでの時間で良いから、なんとか想いを言葉に変換していくとか。
それで、長期休暇にそれを投稿する。
基本的になろうでは、休日前の方がPVが伸びやすい。
だから、忘れてはいけない。
長期休暇は、執筆するための期間ではなく、投稿するのに良いタイミングなのだと。
十二月に入ったばかりの時期から、クリスマスのイルミネーションが始まるように。
ジャストそのタイミングで準備をするのでは、あまりにも遅すぎる。
来年こそは、何かを変えたいと思っている。そんな人がいたのなら。
ちょうど今、この時期こそがそれに相応しい。
準備など必要ない
計画など必要ない
PCのテキストエディタを開き、とにかく最初の一文を書き始めよう。
そうあれは、スマホに触れる指先の感覚が消えるほどに、寒い寒い夜のことだった……