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第3話 目覚め、出会い、発見

 意識の途切れたボクは、その場に倒れこみ、深い眠りへといざなわれた…なんてことはなく、気づけば真っ白な空間に倒れていた。

「うぅ…」

「お疲れ様~、どうだい盾の魔力(コード・アイギス)は?」

 聞き覚えのある声だ。使い方も教えずに魔力をくれた張本人である。少しくらい使い方を教えてくれてもよかったじゃないかと文句言ってやらなきゃ。目の前の声の主であろう白い影をにらみつける。

「あ~、ごめんネ~魔力の出力が高いこと言ってなくて…だけど、それで助かったデショ?ふふっ、君はまだ、()()の使い方が下手っぴなのサ。その代わりと言っちゃなんだけど、君の体の傷、治してあげただろう?」

 立ち上がりながら、白い影に一つ質問を投げつける。

「あの…いろいろ言いたいこととか、文句とか、いろいろあるんだけどさ…まず、あなたは誰なの?」

「お~!よくぞ聞いてくれタ!それ聞いてくれる人って少ないんだよネ~。ふっふっふっ、ボクはネ~魔法の神様なのデ~ス。驚いタ?驚くよネ~。だって神様と話してるんだかラ。」

 なんだそれ、胡散臭いにもほどがある。でも、魔力を貰ったことと傷を治してもらったことは事実だし…

「じゃあ、仮に神様だったとしてどうしてボクに魔力をくれたの?」

「ふふんっ、それはネ~面白くなりそうだったからかナ~神様になると暇でサ~やることがないからボクの魔力を分けてあげるワケ、そうすると人って二つに分かれるんだよネ~、一つはその魔力を「正義」のために使う者、もう一つは「悪」に落ちて力に溺れる者。ふふっ、ほんと最高だよね人間って…」

「そんな、貴方が弄ぶためにいたずらに魔力を配っているっていうの?」

「それはちょっと…語弊がある言い方だなぁ…おっと、そろそろ時間だ。最後に一つだけ君に教えてあげよう。コードをもつ人の魔力は、共有、強奪、継承の3つのどれかの手段で()()()使()()()()()()()()()()()。よ~く覚えておくように、あとこれ、誰にも言わないほうが得だと思うナ~、君の命が狙われる原因にもなるからネ。それじゃあ、がんばっテ~」

「ちょ、まだ話が…」

 一方的に話されていたと思ったら、白い影はその場から消えていた。そして、次の瞬間には、白い空間は閉じられ、周りは暗闇に覆われた。更に、頭にひどい頭痛が走る。痛みに耐えきれずに膝をつくが、痛みが弱まることはない。そのままボクは、意識を失った。


「はっ…」


 悪夢から覚めた時のように、ボクは目を覚ました。地面の上ではなく、ベッドの上で…って、なんで?記憶が繋がらないが、周りの状況を見るに治療を受けていたようだ。

「あ、目が覚めたんですね、英雄さん?」

「え、英雄?」

「そうですよ~、いろんな学生さんが貴方の活躍、しっかり見届けてたみたいですよ。学園が襲撃されたときに、黒い騎士を撤退まで追い込んだ学生がいるって話でこの医学院も大変で、ほら、少し外を見てみて?」

「うわっ…なんですかあれ…」

「あなたに取材したいってしつこい人たちよ。今はあれでも大人しいほうなんだけど完全に囲われちゃってるわね」

 看護師?さんは苦笑いしながらそう言った。そういえば、さっき医学院って言ってたような…?

「あの、ここって…」

「ああ、倒れてるときに搬送されてきたんでしたね。なら、説明しておかないと混乱しますよね?ここは、国立アレグリア医学院です。普段は回復魔法に特化した授業を行うところなんですが、緊急時には病院としても使えるようになっているところですよ。」

 アレグリア医学院…記憶の限りではかなりお嬢様学校だった気が…って、それより聞かなきゃいけないことがあるだろボク!ちゃんと聞かなきゃ!

「えっと…少し聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「いいけど、そんなに敬語だとちょっと困るかなぁ、一応私も学生だし…」

「あ、ごめんなさい。あの、ここには、学園のほかの生徒っているの?」

「ええ、いるけどあなたの期待には沿えないかもしれないわ。守護魔法学科の生徒さん以外は、全員いるのだけど…」

「そう…ですか…」

 やっぱりそうなのか、先に避難したわけでも、怪我をしてここに来たわけでもないのなら、黒槍のあいつとその仲間に連れ去られたんだ。きっと。ボクにできることは何だろう…?英雄だなんて聞こえはいいが、結局は攻撃を一度だけ防げただけじゃないか。そんな考え事をする中で、聞き覚えのある鳴き声がした。

「にゃん」

「え、!?なんで、いるの?」

「あら、誰かの使い魔かしら、貴方のってわけでもなさそうだし…」

「にゃ~ん」

 猫は、ボクの顔を見たかと思うとついて来いと言わんばかりの目線を向けてから、廊下に消えていった。

「ちょっと、追いかけてきます!」

「え?でも、貴方怪我して…」

「大丈夫です!もう痛みはありませんから。」

 ボクは急いで猫、もとい猫もどきを追いかける。素早い動きで猫もどきは移動していくが、一つの部屋に入り、その足を止めた。ボクもその部屋に入るが、そこに居たのは…

「はぁ、はぁ…やっと追いついた…って、ブレイ!」

そこには、腕や頭に怪我をしたであろうブレイがベッドに横たわっていた。

「お、おい、ブレイ!ボクだ、ラーナだよ…なんで目閉じたまんまなんだ?起きろよ…なあ…」

「あ、貴方こんなところまでって…もしかしてお友達なの…?……残念だけど、その男の子は、仮死状態にあるわ。原因として、クレア先生が言うには黒魔術の一種がかけられているらしいわ。詳しいことは、クレア先生にしかわからないだろうけど…」

「その先生ってどこにいるの…?ボクは、ブレイを、大切な友達を助けたいんだ…」

 少しの沈黙の後、看護師さんは口を開く。

「分かりました。クレア先生の居場所は教えます。でも、まずは、あなたのその体、しっかり治したほうがいいんじゃないの?」

「でも…そんな悠長なことをして、ブレイが死ぬなんてことになったら…」

「そのあたりは、おそらく大丈夫でしょう。クレア先生が言ってました、その黒魔術は眠りを与えるためのものだと、少しでも早く開放するに越したことはありませんけど、怪我もろくに直さずに助けられなかったでは、元も子もないでしょう?」

「それも…そうか。分かった!ブレイ、待っててな、必ず助けるから。」

「にゃん!」

「ん?なんだ?君も助けになってくれるのか?」

「にゃんにゃん(頷いた様子で)」

「ありがとね(頭を撫でる)」

 そこからボクは、医学院での治療を受けながら、魔導陣についてもう少し知識をつける…もとい実験をしてみることにした。まず魔導陣を起動し続けることは、あながち嘘でもなさそうだった。魔導陣をもう一度作り出したとき、それは意外にも、すんなりと起動することができた。これは仮説だけど、魔導陣を起動する際に大量の魔力、自分の限界以上を引き出したせいで倒れたのだと思う。多分。あとは、もう一つ、魔導錬成をやってみることにした。魔力を物質に変換し、装備を作り出す。本に書かれていたのはこれだけだけど、今なら何となくできるようなそんな気がしていた。でも、失敗した。魔導陣を作り上げようと両手をかざすものの魔力を込めたはずなのに何も反応が起きない。おかしい。もう一度、魔導陣を作ろうとしたが、ついさっき起動した守護の聖盾(プロテクト・アイギス)の魔導陣すら作れなくなってしまった…どうして?この一瞬で何があったというの…?そんな時に一人、懐かしい人がお見舞いに来てくれた。

「やっほ~、ラーナちゃん元気にしてた?」

「あ、ライアさん!お久しぶりです!お仕事終わったんですか?」

「いや~それがちょっと面倒なことになってね~…」

 彼女はライアさん、魔導士でありながら、第4地区を統括している〈帝王〉の一人だ。なんでそんなすごい人と親しくなっているかというと、孤児院での出会いがきっかけだった。なんでも、〈帝王〉になればその地区の統地とともに資金の割り振りも任されるようだ。その資金の一割を全地区の孤児院の援助に使ってくれていた。本人曰く、子供が好きだから♪だそうだ。

「でさ~、ホントに国のお偉いさん方は、帝王である私を何だと思ってるんだー!って感じなんだよね~、っと、忘れるところだった。ラーナちゃんに大事なお話があって来たんだけど…」

「大事な話……?」

「そう!といっても、少し先の話かもね…魔力は回復してるみたいだけど、貴方の手大分ボロボロになってるし…」

「え?手は普通ですよ?」

 治療している期間とはいえ、もう傷は塞がっているのだけど…

「いや、貴方の両手、魔力線がもう消えかかってるから、魔法を使うのもままならないと思うんだけど?」

「ってことは、魔導陣が使えなくなったのって、それが原因ですかね?」

「え!?ラーナちゃん魔導使えるの!?いつから!?」

「つい先日の学園が襲撃されたときに一応…魔導陣を一回だけ使いました…」

「ふふっ、それなら話が早い!ちょっとその魔導陣を使った場所まで行こう!今すぐ!」

「え、っとどうしてですか?」

「説明は後でするからっ、さ、いくよ!」

 ボクはライアさんの勢いに負け、学園のほうに連れていかれる。ちなみにライアさんは〈嵐の帝王〉という称号を持っている。とどのつまり風を操る魔法のトップクラスというわけだ。移動の際には暴風を操り、空を飛べるとか。まあ、今ボクが、実際に体験している魔法だ。学園までは一瞬で着いたが、本当に一瞬でよかったと思った。数分続いていたら、気絶していただろうから。

「よ~し、着~いたっとラーナちゃん大丈夫?少し座って休んでてちょっと探してくるからー!」

 そう言うとライアさんは、瓦礫の山となった学園だったもののほうに走って行ってしまった…

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