ヤキュウミライオワリミライ
学校に着くとすでに午前の授業は終わっていた。そうたは先に学食にいるということなので、俺も学食に向かった。
そうたを見つけるとすでに学食人気No.1メニューのBランチを食べていた。
「 待たせて悪かったな 」
俺がそういうとそうたはスッと食券を差し出した。
「大変だったな これは奢りだ」
Bランチの食券だった。
「マジか! サンキューな」
遠慮なくご馳走になり、二人でもくもくと食べ進めていく。
「聞いていいか?」
俺が好きなものを最後に食べようしたタイミングでそうたが聞いてきた。このタイミングでかとも思ったが。
「んっ、なんだ?」
俺は大好きなエビフライを見ながら答えた。
「野球やめるんか?」
俺は思いっきりエビフライに噛み付いた。味わうことはせずにすぐに飲み込んだ。
「やめるよ」
俺がそう答えるとそうたは手もとにあった水をぐいっと飲んだ。
「 そうか 」
俺は最後の一口分になったエビフライを口に放り込んだ。
「もうひとつ聞いていいか?」
俺は黙って頷いた。
「エビフライは米と交互に食ったほうがいいんじゃ」
「うるせーよ」
このやりとりは俺らの小さい頃からのお約束だった。
俺から相談があるときは必ず俺が飯に誘って、最後はそうたの一言で締めて終わる。それでその話は終わりという暗黙のルールみたいなものだ。
午後の授業の時間が迫りそうたと別れた。俺は監督のもとに行き野球部を辞めることを話した。
監督は穏やかな表情でこれからの人生まだまだ長いから他の可能性を目指して頑張りなさいというような主旨の話をしてくれた。
そして部員を集めてくれて、みんなに俺の口から最後の挨拶をした。まぁまだほんの少ししか一緒に過ごしてないから特に感情的になることもなく、淡々と辞める経緯と短い間だったがお礼を簡単な言葉でまとめた。
みんなも淡々と聞いている。むしろライバルが減ってくれてありがたいみたいな空気を感じた。といってもこれは俺の被害妄想に過ぎないが。
そんな中に一人悔しそうに泣いてるやつがいた。全日本の時に一緒だった中学No.1スラッガーで四番を打っていた木根 拓磨だった。
あいつの泣き顔は甲子園の優勝で見る予定だったが、こんなに早く見れるとは。そんな風に冷静に頭では思っていたが心にはぐっとくるものがあった。
なにはともあれ、今日で俺の野球人生は終わりを告げた。
あー、もう一人泣いてるやつがいたのを忘れていた。マネージャーのはるこさんだ。
話が終わったあと同学年の部員が俺に一言掛けながら練習に戻っていった。
印象に残ったことを言ってくれたのは泣いていた二人だった。
「プロでまた会おう」
たくまが言った言葉だ。どういう神経で言ってるんだと思ったが、あいつなりの励ましだったのだろうととらえている。
「終わりの始まりだね」
はるこさん。あなたは中二病で間違いないですよね?
まぁこれで一区切りはついた。あとは、これからのことに集中力しよう。まずは、、、
俺の新しい住まいだ。
母親が送ってくれた住所を確認する。追加でメッセージが届いていた。
メッセージには家主の大好物が書いてあり、手土産として持っていきなさいということと。とても優しい人だからそれに甘えず、くれぐれも失礼の無いようにしなさいということだった。
さすがの俺も昨日の今日で受け入れてくれる人に、失礼なことをするわけがない。むしろ部活もないし、出来る手伝いは積極的にやろうと思っている。
母親とどういう関係性の人かを聞かされていないことが少し不安だが、最近の自分の身に起きたことに比べたらどんな人だろうが、何が起ころうが受け入れられる体勢にある。
むしろ早急に手配できる母親の人脈のほうに驚きを感じるぐらいだ。
再度、住所と手土産を確認する。
そういえば名前は、、、
柳さんか。
一軒家みたいだし、表札も出てるだろうから近くまでいけば迷うことはないだろう。
それにしても住所を見る限りちょうど学校に近いし良い感じの場所だな。手土産を買いに行くので逆に遠いていたぐらいだな。
手土産を買い終わり、住所を目指して行く。そこで俺はふと気付いた。あれ、この風景見たことあるぞ。学校の近くだからか?いや、こっちの方面からは通っていなかった。
思い出そうと少し目を閉じた時にはっきりとその家までの道のりが見えた。
やっばり俺は来たことがあるのか?
地図アプリを見ずにどんどん進んで行く。確信を持ちながら一軒の家の前に着いた。立派な外壁から大きな家が想像できる。表札には柳と書かれている。
地図アプリで確認すると、やっぱりここで間違いない。
なんで俺は知っているんだ?柳さん?
思い出そうとし、チャイムを押すのを躊躇していると、ガラガラと外門が開いた。
「なつおさん!おかえりなさいませ!」
「なつおさん!おかえりなさいませ!」
あっ!? この展開は、、、
「おかえりーなつおくん」
そう言いながら奥からはるこさんが出てきた。
「えっと、はるこさんに、、確かサブ&リュウさん」
頭を整理しようとして、思わず声が漏れてしまっていた。
「 どうしたの? 昨日も言ったでしょ
緊張しないで自分の家だと思ってリラックスして 」
あれはそういう気持ちでって訳じゃなくて、リアルにってことだったのか。俺は思わずこう言っていた。
「 終わりの始まりだな 」