第8話
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本当にありがとうございます。欲を言えば日刊乗るくらいまで行きたいですね!
食後の休憩がてら、手の平の上に魔法陣を大量に積み重ねるという凡そ人ではない遊びをしていたところで部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します。少佐、準備はよろしい…ですか?」
モーリスがやってきたということはそろそろ午後の実技試験の時間だ。
部屋に入ったモーリスは、不運にもアキラが魔法陣を重ねているところを目撃してしまい、顔が引き攣っていた。だがアキラはまだ調子が悪いのかな?くらいにしか思わない。自分の手の上に積み重なる魔法陣が原因などとは露ほども思わないのである。
「で、では、試験会場にご案内します」
「はい、よろしくお願いします」
二人は連れ立って敷地内を歩いているが、片や食後にやばいものを見たせいで顔が引き攣っており、片や実技試験を見られるとあって嬉しそうに笑っている。
全く違う表情の二人が歩いていると周囲の目を引くらしい。だが二人を一瞥してその異常さを認識した受験生たちは、サッと目を背ける。大事な受験の最中にヤバそうな雰囲気を醸し出す二人組になんて関わっていられないのである。
(本当に少佐を試験に連れて行っていいんだろうか…だが少佐に試験を見てもらえるのならば悪いことばかりではないが…胃が痛い…)
そんなモーリスの心中などいざ知らず。アキラはスキップでもしそうなほどにウキウキである。大方、帝立魔法学校の試験だし相当期待できるなどと思っているのであろうが、高校の受験であって軍の訓練などではない。受験生は中等学校を卒業する学生たちであるため、アキラが求めるようなレベルの試験など行われるわけがない。
アキラには同年代の魔法が使える友人はいないため、比較対象が自分しかいない。そのせいで周囲の学生への期待度が高すぎるきらいがあるようだ。
そんなこんなで、モーリスの胃に穴が開く前に試験会場だという演習棟と呼ばれる建物に着いた。
「この演習棟は地上5階建て、地下8階建ての建物で、地上階は全て吹き抜けになっています。実技試験は全て地下で行われているので地下に移動しましょう」
モーリスの案内で地下へと移動するアキラでだが、視線は周囲を忙しなく動き回っている。それもそのはずで、この演習棟には最新の訓練設備がそろっており、一部軍の訓練施設にも置いていないような代物まであった。
「素晴らしい設備ですね。軍の訓練施設と比べても遜色ありません」
「ありがとうございます。外観は古いですが、中身は常に最新の設備で揃えてあります。一部の設備は企業からの実地試験として貸与されているものもあるんですよ」
「なるほど、それで軍にも納入されていない設備があるわけですか」
アキラは今日一番の笑顔を見せている。軍にも納入されていない設備を先行して使える。これだけでこの学校に通う価値があるとアキラは考えていた。それほどまでにここの設備はアキラにとって魅力的らしかった。
階段を下り、地下1階の演習場への扉の前でモーリスは立ち止まってアキラに注意事項を伝えていく。
「ここが第1演習場の入り口になります。地下7階までは同じ試験をしていますが、地下8階だけは別で、事前のアンケートで無詠唱などの高等技術が使えると回答した受験生の試験が行われています。各演習場は入り口の横にギャラリーへとつながる階段があるので、少佐はギャラリーでの観覧をお願いします。演習場に入ると受験生を緊張させてしまうのでご協力ください」
「わかりました」
モーリスがアキラのことを少佐と呼んだことで、アキラは瞬時に軍人モードになった。ここからは受験生ではなく、軍の人間として扱うということだろう。
「では、私はここで失礼します。何かあれば、各階に詰めている監督官にお願いします。全教員に伝わっているはずなので、対応してくれるかと思いますので」
「ありがとうございました、モーリス教諭。ご協力に感謝いたします」
お礼を言って敬礼するアキラに、モーリスは爽やかな笑みでではと言って帰って行った。
その笑みを見たアキラは、良い人だったと思っているのだろうが、モーリスからすれば悩みの種が一つ減ったというのが本音だろう。三十六計逃げるに如かずということだ。
「さて、一階から順に見ていくか」
軽い足取りでギャラリーへと向かうアキラは、まだ試験に対してズレた期待をしているようだ。
ギャラリーに入ると、演習場を見下ろせるようになっていた。演習場では1000人ほどの学生が待機しており、10人ずつ呼び出されて試験を行っているようだった。
受験生たちは目の前の試験に集中しており、誰もギャラリーに入ってきたアキラに気付くことはなかった。
(なるほど、これだけ集中して試験に臨んでいるのなら、演習場に入って集中を乱すのは気が引けるな)
アキラはギャラリーの椅子に座って試験を黙って見ているが、何も話さず、表情も変えず、腕を組んで試験を見ているアキラは、監督官からすれば何を考えているのかわからない恐怖の対象である。向こうから何も言ってこないため声をかけるわけにもいかず、かと言ってアキラの存在を無視して試験を監督できるほど肝が据わっているわけでもなかった。
これから監督官たちの、地獄の試練が始まるのである。
((((早く次の会場に行ってくれ…!!))))
物理的に離れていようと、試験官たちの気持ちは通じていたのだった。
受験生に試験される監督官(違う
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では。