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【更新休止中】戦略魔法師、学校に行く  作者: 小宮 現世 (こみや ありせ)
第1章 戦略魔法師、受験に行く
5/20

第4話

本日5話目となります。

こうして投稿している間にもブックマークをしてくれている方がいらっしゃるようで、とてもうれしいです。

よろしければブックマークだけでなく、☆☆☆☆☆の評価もよろしくお願いします。

 

 「あの、陛下、これは一体…」

 

 アキラは戸惑っていた。皇帝から直接渡された書類なのだから、辞令かと思えば自分の受験票だったのだ。これで戸惑わない人はいないだろう。

 困惑するアキラを見る皇帝は満面の笑みだ。皇帝の顔には、ドッキリ大成功などと書いてあるのではと錯覚するほどだ。

 

 「見ての通り、貴官の受験票だ。私の権限で定員にねじ込んでやっても良かったが、それでは外聞が悪いだろう?本末転倒だからな。貴官ならば問題ないと思うが、くれぐれも不合格になどならないように。それこそ外聞が悪いというものだ」

 

 そう言ってはっはっはと笑う皇帝はとても楽しそうだが、アキラからすれば全く笑えないし楽しくもなかった。なぜならば受験するのが帝立魔法学校だからだ。

 帝国建国当時から存在する由緒正しき、国内最高峰の魔法学校で、毎年の受験生10万人超に対して定員は3600名しか存在しない。30倍近い倍率を勝ち抜いた天才たちのみが通うことが許された学校。だがアキラの不安はそこにはなかった。

 

 (帝立魔法学校とかプライドの塊みたいなやつらの集まりじゃん…)

 

 そう、そこらの大学生などとは比べ物にならない教養を備えるアキラからすれば、入学の難易度が問題なのではなく、入学後の生活が問題であった。

 今まで軍で生活してきた彼は同年代の友人がほぼいない。どう接していいかもわからないし、プライドの塊のような学生を相手に上手くやっていける自信がなかった。

 そして渡されたのは受験票。既に受けることが決まっている。不合格など貰おうものなら皇帝陛下の顔に泥を塗ることになってしまう。そんなことは許されない。つまり、アキラはこの学校に通う以外の選択肢は残っていなかった。

 だがアキラは諦めきれず、一縷の望みに賭けて皇帝の前にそっと受験票を差し出すと

 

 「陛下、できればこれをお返ししたいのですが…」

 「ん?何を言っているんだ?貴官の受験はもうメディアにも流した。この後記者会見をしてもらうのでそのつもりでな。まさか、私の顔に泥を塗るつもりではあるまいな?」

 

 ニヤニヤとしながらアキラにそう問いかける皇帝は実に楽しそうである。そして次席秘書官と国防大臣はまたかとでもいうように天を仰ぎ、顔に手を当てている。

 受験票を返上できなかっただけでなく、記者会見までも組まれていたアキラは、もはや引きつった笑みを浮かべることしかできない。

 

 「りょ、了解いたしました。アキラ・トウジョウ少佐、これより全力で学生となりましょう」

 「うむ。貴官は優秀だが、人間としてはまだ若い。三流もいいところだ。学校でよく学んでくると良い。では、マルク、お前も少佐と共に記者会見に行け。上司として、よろしく頼むぞ。あぁ、それからセルマ君から会見用の原稿を受け取っておいてくれ」

 

 言いたいことを言うだけ言って皇帝はそそくさと会議室へ戻ってしまった。

 

 「あの、大臣。セルマというのは、セルマイザー主席秘書官でしょうか?」

 「あぁ、そうだ。陛下が何か良からぬことをするときは、大抵あの二人はグルだよトウジョウ少佐…」

 

 「「「はぁ…」」」

 

 この場に残された三人の気持ちが一致した瞬間であった。

 

 

 

 同日19時、皇城のメイン会見場では国防長官とアキラの記者会見が行われていた。

 国の英雄が会見をするということで、テレビ局によってはゴールデンタイムにも拘らず、生中継の緊急特番を組んでいるところもあった。

 会見は、国防大臣による事の経緯と、陛下の意向が強くあることを、夕方のちゃばn…お戯れを上手くぼかしながら説明された。

 アキラも会見は初めてではないので、作られた原稿の通りに恙なく進めていく。

 陛下のお心に感謝しますなど、夕方の茶番を経験したものからは到底出てこないであろう言葉の数々で陛下を持ち上げたところで演説は終わり、記者からの質問の時間となった。

 

 「少佐にお聞きいたします。少佐はなぜ、皇帝陛下の推薦枠ではなく一般枠での入試なのでしょうか?また、合格した場合、少佐は人生初の学生生活を送ることになりますが、何か意気込みをお聞かせください」

 「はい。まず一般枠での入試についてですが、これには先ほどもお話しした陛下のご意向が強くあります。皇帝陛下の推薦枠は今までで皇族にしか使用されておらず、試験の公平性を保つため、私は一般枠での入試となりました。次に学生生活の意気込みとのことですが、私には初めての経験となります。今までは帝国の為、知識と技術を学んでまいりました。しかしそのせいか、私には同年代の友人があまりおりません。学校では同年代の方々が多く集まります。学友の皆さんと、良い友人関係を構築することが一番の目標ですね」

 

 「国防大臣にお聞きいたします。少佐が学生となられた場合、非常時には少佐が原隊復帰されるそうですが、平時の国防に関してはどうされるおつもりでしょうか?」

 「それに関しましては南方より戦術魔法師2名を少佐の抜けた穴埋めとして――」

 

 その後も記者会見は恙なく進み、20時を少し過ぎたあたりで終了となった。

 国民からの受けは良く、皇帝と政府のイメージアップに繋がった。

 またそれ以上に、国の英雄と同じ学校へ通えるかもしれないということで、帝立魔法学校の受験生徒が例年の倍以上に膨れ上がったのは良いのか悪いのか、微妙なところである。


読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ、ブックマークや下にある☆☆☆☆☆で評価いただけると励みになります。


感想もお待ちしております。




では。

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