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命短しって寿命的な意味じゃないことを祈る件27

 無理矢理言わされるからじゃない、自ら言うから自白なんだ。

 私は言葉の意味について深く実感した。


「アノ……それでその……捨てた後にその人が、服も脱げって……さすがに私もエッてなったんで、なんでって訊いたらそのー……どうやらその、こ、子供…………的な……?」


 にらみ攻撃に秒で降参した私が説明をするたびに、にらみ度が上がっている。もうこれ以上の自白は無理です。白旗があったら振りたい。


「何かされたのか」

「されてないですっ!! もう無理が無理すぎてほんときも無理ってなったので、嘘吐いて閉じ込めて窓から逃げ出しました!」

「そうか」


 サラフさんの低い声が、妙に静かで感情のない感じになっていて、それがむしろ余計に怒ってるとわかる。

 あったか枕を抱き抱えつつ固まっていると、サラフさんが長く息を吐いた。それから視線を窓の方に向けて唇を動かす。

 えっとー。あのー、なんか、「全員殺すべきだったな」とかなんとか、呟いたような気がしたんですけども、あのー、気のせいでしょうか。

 私が口を引き結んだまままばたきをしていると、サラフさんがまたこっちを見る。


「悪かった」

「え、」

「怖かっただろ」


 不意を突かれて、私はサラフさんをまじまじと見上げてしまった。枕の横に付いていた手が、私の肩を包むように触れた。その手がとてもあたたかい。私を見つめている青い目も、あたたかいような、ちょっとつらそうな、そんなように見えた。


「……あの、私、そんなに怖くなかったですよ。どっちかというと気持ちわるってなって、逆に何がなんでも逃げてやろうって思って、」

「ああ」

「むしろあの、閉じ込めたあとに棚とかテーブルとかでドア塞いだし、ロウソクとか使って火事で足止めとか思いついたりして」


 私がペラペラ喋るのを静かに眺めていたサラフさんが、肩から背中に回して少しだけ私をベッドから持ち上げた。

 抱きしめられてる。

 お腹にのせていたあったか枕がズレたので、私はこっそり指でそれを脇に落とした。それからちょっと迷って、私もサラフさんの背中に手を伸ばす。自分の体が冷えているせいか、抱きしめたサラフさんの体が温かく、包み込まれているような気持ちになる。

 サラフさんあったかい。

 もう大丈夫だって思ったからか、同時に怖さも湧き上がってきた。今更すぎるけれど、状況にいっぱいいっぱいすぎて忘れていた恐怖心が追いついたらしい。


「……ちょっと怖かったかも」

「そうか」

「めちゃくちゃ怖かった……かも」

「よく頑張ったな」


 頑張ったな、という響きでなんだか胸がぎゅーっとなって、私は目一杯サラフさんにしがみついた。サラフさんが抱っこするように起こしてくれて、大きな手が背中を撫でる。

 気を抜くと、怖かったよう頑張ったようと子供みたいに泣いちゃいそうな気がして、私はなるべくぎゅっと目を瞑りつつサラフさんに抱きついた。筋肉がごつごつしてて、なんかいい匂いがして、そしてあったかいサラフさんにしがみついていると、緊張して固まっていた体の内側がほぐれていく。気持ちが緩んで力が抜けそうになりながらもしがみついたまま、私は思った。


 サラフさんがいてくれてよかった。

 サラフさんが無事でよかった。

 もう絶対やりたくないけど、やろうと思ったってもう2度とできないだろうけど、それでもサラフさんがこうして無事でいてくれて、そのために私が何かできたんだったら。怖かったけど、もう無理っていっぱい思ったけど、それでもやってよかったと思う。


 私が鼻をすすると、サラフさんがまた私をぐっと持ち上げた。サラフさんの膝に乗せられて、またしっかり抱きしめられる。重いかもとかおしりちょっと痛いかもとか思ったけれど、なんだか甘やかされて嬉しかったので、私は黙って背中を撫でられることにした。






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