表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/91

命短しって寿命的な意味じゃないことを祈る件24

「サラフさん、あの……ごめんなさい」

「何に対して謝ってんだ」


 子供の頃、お母さんに言われた言葉をサラフさんが言った。サラフさんの心がお母さんに近いのか、それとも私が幼児に近いのか。後者な気がする。


「あの、勝手に……王城に行ってしまいまして……ごめんなさい……」

「他には」

「ほ、他には……えーと、すぐ迫る死から逃れようとラフィツニフに私の体質のことを言ってしまいまして……すみません……」

「……他には」


 今ちょっと間が空いたとき、サラフさんの目が「てめえ何してくれてんだこの野郎」って言ってた。絶対言ってた。


「ほか……あ、あの、王城に放火しましたごめんなさい」

「それは別にいい。他」

「…………ブーツと靴下とエプロン、置いてきましたごめんなさい……あと、屋根の上の棒も折っちゃったし……あ、放火は2回ですすみません」

「他には」

「エッ他?!」


 あと何したっけ。

 表情を変えずに反省を促され、私は顎を掴まれたまま必死に考えた。

 私がやったことといえば、それくらいな気がするけれども。他に何か悪いことしちゃってただろうか。


「あっ! ロベルタさんを見捨ててきた! ごめんなさい!」

「それはどうでもいい」

「どうでも……じゃ、じゃああの、ラフィツニフさんを持ち上げて落としました……怪我してましたよね、すみません」

「それこそどうでもいいことだろうが。ふざけてんのか」

「フザケテマセンッ! ケドワカリマセンッ!」


 もう手札は全部見せ切った。私が降参すると、サラフさんが溜息を吐いた。

 すみません。わからないけどすみません。何もかもすみません。


「てめえが勝手に命捨てるような真似したことについてだ」

「す……捨ててはないです」

「碌に呪力も使えねえ癖に無断で外出しといて、さらに王城で最上級のクソ野郎に自ら会いに行ったのにか? その上屋根の上に登るような真似をした上でてめえの呪力使い切っといてもそう言えんのか? ああ?」

「す……捨てるような真似してたかもしれません」

「かもじゃねえだろうが」


 凄まれて、私は頷いた。

 確かに今考えたら、よく私生き残ったなってくらいに色々あった。危なかった。

 っていうか呪力、使い切ってたのか。もしかしてめちゃくちゃ寒くて息しにくかったのって、呪力切れってやつだったのか。なら、正真正銘の死にそうな状態だったのだ。

 改めて自覚したからか、なんだかゾワッとして私は二の腕を擦った。サラフさんに言われたように、指先が冷たい。ベッドの中でモゾモゾした私をジロっと見たサラフさんは、おもむろに3枚重ねの掛け布団をめくった。


「?!」


 寒い。ていうかなぜ。そして私シャツ1枚なんですけどなぜ?!

 気付かなかったけど、私、いつの間にか下半身の装備はパンツだけになっていた。着ているシャツが結構大きいのでそこそこ隠されているけれど、それでも太ももが半分くらい見えている。

 私のかぼちゃドロワーズはどこへ。そして足に包帯巻いてあるのは何故。青あざもいっぱいあるのは何故。


 混乱している私をよそに、サラフさんは身を乗り出して私越しに腕を伸ばす。掛け布団の下から何かを掴むと、引き寄せて私に押し付けてきた。硬くて小ぶりの枕をタオルで包んでいるような謎の物体である。


「抱えてろ」

「……あったかい」


 抱えていると、じんわりと温かかった。湯たんぽにしては軽いけれど、同じような効果がある物のようだ。ベッドの中が温かかったのは、これのおかげのようだ。


「持ったまま寝ると火傷するぞ。温まったら横に置いとけ」

「あ、ハイ」


 低温やけど注意はこの世界にも通じるようだ。私は少し動かしやすくなった指先でタオルを撫でつつ、さらに掛け布団を捲って同じようなあったか枕を2つ私の近くに寄せた。全部で3つ入っていたようだ。大きなベッドとはいえ万全の保温態勢だったのに寒かったのは、やっぱり呪力を使い切った関係のようだ。あったかいのを近くに置いて掛け布団を掛け直されるとかなり温かい。それでも手足が冷えてるけども。


「あの……私、足、どうかしたんでしょうか……」

「こっちが聞きてえが」

「スミマセン」

「打ち身擦り傷は屋根によじ登ったときにぶつけたんだろ。この切り傷は深くはねえが痕が残る可能性はある」


 右の太ももに巻かれていた包帯の下は、切り傷があったようだ。ドロワーズあるのになんでそんなとこに、と考えて、もしかして矢がスカートに刺さったアレだろうか、と思い当たる。あのときは特に痛みもなかったし、とにかく空中移動を頑張ってたので気が付かなかったけれど、もしかしたら足をかすってたのかもしれない。


「しばらく不自由するぞ。なんでわざわざこんな傷作りに行った」

「だってあの……さ、サラフさんが危ないって、暗殺されるかもって聞いて」

「んなくだらねえ理由で」

「く、くだらなくない! ですし!」


 私が反論すると、サラフさんが「あ?」と睨んできた。怖い。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ