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命短しって寿命的な意味じゃないことを祈る件15

「逃がしたのか?!」

「まさかこの高さから飛び降りるとは……」

「探せ!! あの呪力ならそう遠くへ行っていないはずだ!!」


 なんか下が騒がしい。

 ラフィおっさんの部下らしき人たちがワーワーと騒ぐのを、私は屋根の上で果汁を飲みつつ静かに聞いていた。開けっ放しの窓が逃走経路だとはバレたけれど、上にいるということには気付かれていないようだった。体を乗り出して下を探しているような話し声が聞こえてくる。


「見えん。灯りを点けろ」

「あまり目立つような動きはするなよ」

「手のものを下に集めておけ」


 屋根の端の方が少し明るくなる。窓の外に灯りを点けたのだと思ってから、私が部屋から逃げ出すとっかかりにした金属のアレがランプだったのだと気付いた。オイルで滑ったりしなくてよかった。

 火を点けたら、ますます上は見にくくなっただろう。しかし同時に、私が降りられそうなルート「来た道を戻って人気のなくなった部屋に戻る」は不可能になった。流石に火が点いてたら火傷するし、消してすぐも熱くて触れなさそう。

 まごうことなき詰み状態だなーと思いつつ、上を向いて果汁の残りを口に入れていると、話し声が聞こえてくる。


「いいか、見つけたら問答無用で縛れ。あの異世界人の名前はニッポニアニッポン・ユキだ」

「ッ……!!」


 あっぶないむせるとこだったわやばい。

 そういえば、ニッポニアニッポンって名乗ってたんだった。やばい。今思うと恥ずかしすぎる。ちょっとヒクヒクした腹筋を抑えつつ、私は耳を澄ませる。


「この際死体でもいい、ラフィツニフさまの元へ必ず戻せ」

「他の派閥は勿論、絶対に奴らの元には返すな」


 生死問わずモードになってしまった。やばい。しかし現時点でやばいのでもうあんまり危機感がない。やばいのインフレだ。

 おしりが痛いので、音を立てないようにそーっと座り直す。金属の棒を抱えている腕も疲れてきたので、体を反対に向けて腕を交代した。


 屋根のせいでこの塔については全然見えないけれど、下を見ると、地面で灯りがいくつか動いているのは見えた。早足であちこちに移動しているのは私を探しているからだろうか。

 遠くの空を見ると、ほんのりと明るくなっていることに気が付く。いつの間にか夜明けが迫っていたようだ。出発したのも夜更け近くだったし、移動やら恐怖やらしているうちに時間が経っていたらしい。どおりで体が冷えたはずだ。


 明るくなってバレたら困るな、と思いつつ明るい方角を眺めていると、遠くの方で煙が立ち上っているのが見えた。

 太めの煙と、細い煙がいくつか。火事かな、と思って心臓がギュッとなる。


 燃えてるの、お屋敷じゃないよね?


 棒に縋り付くように立ち上がって、目を細めてじっと見つめる。

 まだ太陽も顔を出していないし、手前に森があって隠れているので、何が燃えているのかは見えない。気のせいかもしれないと自分に言い聞かせるけれど、ロベルタさんが「襲撃される」と言っていたので、偶然ではないような気がしてしょうがない。

 無事なんだろうか。サラフさんやカイさんやガヨさん、他の人たちも。

 ロベルタさんは気付いているだろうか。誰か消火の手伝いをしてくれてるだろうか。この世界に消防車はないかもしれないけれど、火事なんだから知らせるための鐘の音とかしてもいいはずだ。


 目を擦りながらじっと眺めて、それからあちこちを見回す。

 すると、森の隙間をチラチラと明るいものが移動しているのに気付いた。






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