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命短しって寿命的な意味じゃないことを祈る件13

 ベッドにかかっているシーツを勢いよく剥がす。端の方を両手で握って思いっきり引っ張る。


「……フン……!!」


 映画とかでよくある、シーツを引き裂いてロープを作り逃げるシーンはただの演出だと気付いた。

 全然引き裂けないんですけど。こんなのゴリラくらいしかできないでしょ。映画の登場人物って全員握力70キロくらいなの。


 どうしようどうしようと考えていたら、バリケードを張ったドアの向こうで物音が聞こえた。思わず固まってそっちを見る。

 ……どうやら、戻ってくる音じゃなかったようだ。

 ホッとしたけれど、ホッとできる状況じゃない。私はもう一度ドアを開けて暗闇の中を見回した。


 窓枠は木製だけれど、下の階の窓とは離れているのでそれだけを頼りに降りるのはやっぱり難しい。見下ろしながら悩んでいると、窓の両側に突起があることに気が付いた。顔を上げて横を見ると、ここの窓にも、やや上の場所に何かがある。こわごわと窓枠に膝を乗せ、壁に抱きつくようにして身を乗り出しつつ手を伸ばすと、触れたそれは金属でできていて頑丈そうだった。視線が上に向いて、屋根が意外と近いことに気がつく。円錐形の屋根なので、外側の部分は吹き抜けで見たよりも低い位置にあるようだ。


 下に降りるより、上に登った方が早いんじゃないか。

 暗闇に目を凝らすと、屋根の出っ張った部分の裏側に、木の梁が渡されていて掴みやすそうだ。

 部屋を見渡し、窓の下を見下ろし、それからまた上を見上げて、私は覚悟を決めた。

 ここにいたらまた捕まる。降りられないなら、登るしかない。


「……」


 窓枠に登ろうとして、一旦降りる。さっき剥がしたシーツを抱えて、私はそれをテーブルの下、倒した棚に掛けるように敷いた。それから、椅子の間にあったロウソク立てをずらして、テーブルの端に置く。土台の部分が少し天板からはみ出るように置いた。それからまたシーツを引っ張って、少し窓側に伸びるように寄せる。



 この状態で、ロウソクに火をつけておけば、窓に近寄りにくいかもしれない。

 向こう側から大きな力でドアを開けられたときに落ちて、シーツに燃え移るんじゃないだろうか。

 そうしたら、あのローブの人も出られないんじゃないだろうか。騒ぎになって気付かないかも。


 屋根に登るところを見られたら、逃げた意味がない。

 確実に時間を稼がないといけないのだ。

 ドキドキというかドクドク騒がしい心臓を抱えたままで、私は火のついていないロウソクに手をかざした。

 火が点かない。


「……エッ」


 フンフンと力を入れてみるけれど、ムズッとした感覚が来なかった。

 なんでだ。もしかして、抑制とかいうやつが効いちゃってるのか。

 そりゃ、これから火事を起こすかもしれないわけだし、燃えやすいようにしちゃってるわけだし、大変なことになるかもしれないけど、でもこれは必要なわけで、逃げられないよりは火事が起こって逃げられた方がいいわけで。


「……」


 全然点かないんですけど。

 私のチキンハートは、こんなときでもものを燃やすことに抵抗感を抱いているようだ。善良なのはいいことだけど空気読め! 私の道徳心!!

 両手を至近距離でかざして念じまくっていると、また物音が聞こえる。

 どうやら、ローブの人がお風呂から上がったようだ。


 時間がない。

 私はロウソク台をふん掴み、ドアの方に近付いて背伸びをした。備え付けのランプの火に近付けると、ロウソクはあっさり火が点いた。

 最初からこうしとけばよかったと思いながら戻り、テーブルの端に置く。すぐ倒れても困るし、倒れなくても困るので位置調整を細かくしたかったけれど、時間がないのでとにかく置いて窓の方に向かった。


 両手で踏ん張って窓枠に座り、それから立ち上がる。

 出っ張っている金属に手を伸ばして握るのと同時に、ドアノブがガチャっと回される音がした。






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