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命短しって寿命的な意味じゃないことを祈る件11

 付いてこいと言われて、お掃除しやすいバイオレンス部屋を出られたのはちょっと進歩だと思う。

 私が出した切り札は、ちゃんと効果があったようだ。


 ラフィなんとかさんに付いていく形で、私はフードをかぶり部隊に四方を固められつつ水路を渡って反対側のドアをくぐった。来たときと同じように、あちこちに曲がるわかりにくい廊下を通り、それからまたドアを通り抜けると、今度は螺旋階段がある。

 真ん中が吹き抜けになっていて、天井は結構高いようだ。

 ところどころに設置されたランプの光が揺れている中で、私たちはぞろぞろとその螺旋階段を登ることになった。


 ガヨさんとの鬼ごっこもとい逃走訓練で少しは体力が付いたと思っていたけれど、螺旋階段、けっこうキツい。

 階段が長いというのもあったけれど、緩やかに左に曲がるのがずっと続いているせいで、なんか目が回りそうだった。

 この螺旋階段は大きな円柱形の建物の中心部にあるようで、吹き抜けがある中心とは反対側の壁には時々ドアがあった。螺旋階段の2周が1階分の高さになるらしく、同じ方向にドアが並んでいる。


 これって、部屋がドーナツ状になってるんだろうか。割と不便な気がする。それとも片側にしか部屋がないんだろうか。なんかバランス悪い気がする。

 そんなことを思いながら階段を登っていると、4個目のドアでラフィなんとかさんが立ち止まった。


「異世界人、お前は上に行きなさい。上手くやるように。ロベルタはよくやったね」

「これでうちの総長見逃してくれるわけェ? なんだかんだ必要なんだよねェ」

「手加減はしてやろう。もちろん向こうがこちらに襲ってきた場合には保証できないがね。王城に手を出すものは処分すべきだろう?」


 また嫌な笑い方をしたラフィおっさんが憎たらしかったので、私は鼻の穴両方に指を突っ込んで思いっきり持ち上げてやりたい衝動に駆られた。


 この顔、手加減だって本当にするのかわからん顔だよ。私来ただけ損じゃないのか。

 いやいや、私が来たことでサラフさんたちが踏み込む理由ができたんだから、でもここに来たらサラフさんが危ないかもしれないわけで、ていうかお屋敷も襲われてたら大変だけどいつ襲撃されるんだろうか。みんな寝てるときだったらどうしよう。ていうかいま何時。


 混乱していると、さっき私の呪力を使った人が、私の腕を掴んで上に登るようにと引っ張った。私だけ上に閉じ込めておくつもりなのか、他の人は付いてこない。

 手すりを掴んで転ばないように気を付けつつ、私は後ろのロベルタさんを見た。というか睨んだに近かったかもしれない。


 絶対絶対絶対、ラフィおっさんを逃すようなことはしないでよね。

 絶対絶対捕まえて、サラフさんの無事も確保してよね。

 じゃないとロベルタさんも鼻フックするぞ。妄想の中で。


 ロベルタさんはヘラヘラと笑いながら、呑気な声で「がんばれェ〜」と見送っていただけだったので、私の強い念が通じたのかはわからなかった。


「入れ」


 それからさらに3階分登った先のドアは、吹き抜けの屋根の近さからみて最上階だった。厚みのある木のドアを開けて促されたので大人しく入ると、フードの人が続いて入ってきて、ドアの上に作り付けられているランプに手を伸ばして火を灯した。


 中は予想していたよりも埃っぽくなかった。水路もないし、斧もない。机と椅子はあるけれど火の点いていないロウソクが立てられているだけで、ヤバそうなシミは付いてなかった。他にはドアの近くに作り付けられたランプと、お屋敷の私の部屋にあるものよりも随分と簡素な棚、そしてシンプルなベッドがあるだけだった。おそらく洗面所に続いているドアもある。この世界の一般的な様式の寝室だ。


 なんか、思ったよりも待遇は悪くなさそうだ。

 床も壁も石というかレンガみたいな材質なのでひんやりとはするけれど、机と椅子はしっかりしたものだったし、ベッドのリネンは高そうなものじゃないけれど、汚れてもいない。少し埃っぽいのは埃っぽいけれど、部屋の隅にもランプのところにも蜘蛛の巣はかかっていない。


 そりゃお屋敷の部屋がお家賃12万円レベル(家具付き)だとしたら、この部屋は2万円レベルだとは思うけれど、私が最初に入れられた地下牢のお家賃50円相当に比べたら全然清潔だし、人間の住む環境として適している場所だ。

 人権を感じていると、ドアが閉じて鍵が閉められた音がした。

 そっちを振り向くと、ローブの人が中にいる。


「………………」


 あのー。

 なんで、あなたも一緒に部屋の中にいるんでしょうかね?






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