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衣食住環境の落差がすごいことになってる件1

 豪華なお屋敷は、近付くと扉がデカかった。

 上がアーチになっている両開きタイプの扉は、それぞれ一枚岩で作られているようだ。白っぽい石には細かい幾何学模様が彫刻されている。取っ手を握った総長は普通に開けたけれど、厚さが半端なかったので重量もかなりありそうだった。やっぱりマフィアのボスたるもの、石でできた扉くらい余裕で開けられるほどの力がないと務まらないのかもしれない。


 入れと言われて足を踏み出しながら気が付いた。

 もしかしてこの玄関扉がめっちゃ分厚いのは商品の逃走防止のためなのでは。ドアの片側だけでも、私が両手で押して動くかどうかみたいな大きさと分厚さである。

 な、なるほどー、そもそも逃げ出せなければ手枷はいらないっていう……アレなのかな……


 あんまりよろしくない納得をしながら顔を上げてギョッとした。

 豪華なお屋敷にそぐわない、棍棒を持った人たちが沢山いる。

 その中から、すらっとして上品な服装をした青緑っぽい髪の男性が進み出てきて総長に頭を下げた。


「ご無事で。首尾は」

「潰した。捕まえた奴らはうまくやれ」

「了解しました」


 丁寧な言葉遣いだけど、間違いなくマフィアの人だった。

 うまくやるって何。うまいことコンクリで固めるのか。うまいこと粉砕してから地中深くに埋めるのか。うまいこと内臓を売り捌くのか。

 慄いていたら、頭を上げた丁寧な人と目が合った。やばい。うまくやられる。


「そちらは?」

「拾った。3階に入れとけ」

「はい。ガヨに見ておかせましょう」


 拾われていたらしい。逃げにくい3階に入れられるらしい。そして見張り付きになるようだ。

 やっぱり商品として連れてこられたので間違いなかった。どう考えても相当な規模のマフィアっぽいので、前の場所のように他のマフィアがカチコミに来て解放されることはなさそうなのが絶望的だけれど、内装を見ていると前の場所みたいにボロくて汚くて薄暗い場所ではなさそうなのが救いだ。3階だけボロいかもしれないけど、棍棒を持っている人たちもそれなりに服装が整っているし、前よりは衛生管理がされていると信じたい。


 丁寧な人が「来なさい」と声を掛けてきたので、頷いて後をついていく。丁寧な人は階段を登りながら、降りてきた相手に「ガヨを3階へ」と声を掛けていた。

 階段は黒い石だったけれど、手すりも大理石っぽい白い石でできていた。階段は真っ赤な絨毯が敷かれていて、金色の棒の重しが一段一段置かれている。眺めながら登っていることに気付いたのか、丁寧な人が声を掛けてきた。


「美しい建物でしょう?」

「あっハイ」


 血が飛んでも目立たなそうなカーペットですね。

 って言ったら「試してみましょうか、あなたの血で」とか言われそうなので、無難に「芸術的ですね」と答えておいた。


「存分に眺めて結構ですよ。こういう価値のわからない者ばかりですからね、ここは」


 そりゃマフィアだもの。芸術じゃないものを爆発させているんじゃないかな。みんな棍棒持ってるし。

 丁寧な人はマフィアの一員でありながらも芸術に関心もあるタイプの人らしく、階段の踊り場に飾ってある絵画の解説などをしてくれた。どれも「罪人を拷問にかける聖なる使い」とか「悔い改めぬ者の行く末」とかいうヘビー過ぎるテーマの絵だったので、非常にコメントに困ったけど。


 グロ注意な階段を通り過ぎて3階へ登ると、丁寧な人は左の廊下を進み、一番奥まできて「ここなら良いでしょうか」と言った。

 何が良いんだ。「ここなら(逃げる余地がなくて)良いでしょうか」ってことだろうか。

 丁寧な人が懐から鍵を取り出してドアを開ける。外から施錠できるタイプか〜。


「お入りなさい」

「ハイ」


 促されて入ると、そこは意外にも屋敷に見合った豪華さがある部屋だった。大きなベッドは天蓋付きで、これまた大きなタンスっぽいものがあり、テーブルも椅子もあって、他の部屋に続くドアもあった。カーテンのかかった窓は鉄格子もない。


「ひとまずここで様子を見ます。いいですね」

「ハイッ」


 逃げたり物を壊したりしたら牢屋レベルに格下げされたりするということだろうか。怖い。高級すぎて居心地が悪いので、できたら普通の部屋くらいのレベルになら下げてくれてもいいくらいである。怖くて言い出せないけど。


「ではガヨ、面倒を見なさい。あとで見に来ますから」


 下手な真似すんじゃねーぞ、的な言葉を残した丁寧な人が、そのまま去っていく。代わりに開いたドアからは女の子が入ってきた。いつの間にか後ろに来ていたらしい。

 ロングの黒髪ストレートな髪に白いヘッドドレスを着て、色白の肌を黒いゴスロリっぽいドレスで隠している。無表情な顔の印象的な目は黒だった。

 同じ黒髪黒目だ。金髪やら赤髪やら黒っぽい青やら馴染みのない色素をお持ちの方が多かった中、親近感を抱かせる見た目の女の子が来てくれてちょっとホッとした。


「あの、よろしくお願いします」


 頭を下げる。言葉が返ってこなかったのでそっと顔を上げると、女の子は無表情のままじっと私を見つめていた。

 何これ超気まずい。






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