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悩ましいってレベルじゃないことが多すぎな件4

 しっかり眠ると、やっぱり目覚めが気持ちいい。


「ほっ」


 ベッドに座ったままの私が手をまっすぐ向けた先に、ポッと明かりが灯った。練習のたまものだ。

 ガヨさんが起しにくる前に起きて、ベッドの上から点けるロウソクの眩しさは格別だなあ。明るいうちはロウソクがもったいないのでひとつしか点けないけど。


 身支度をして服を着替え、寝巻きを畳んでまとめておく。髪の毛はサイドで編み込んで後ろでまとめ、ヘッドドレスを付ければ完成だ。

 朝ごはんにはまだ早いけど、私は弾んだ足取りで部屋から出た。

 向かうのは廊下の一番反対側の部屋だ。コンコンとノックすると、ドアが開いた。


「おはようございますサラフさん」

「ああ。入れ」


 普段通りの姿をしたサラフさんが、部屋に入れてくれた。寝癖もないしベッドも乱れていないところを見るに、早起きタイプのようだ。

 サラフさんは総長なので多忙だ。毎日どこかしら出掛けているし、お屋敷に帰ってきてもまた出かけることもある。なので、私に呪力の使い方をレクチャーする時間は自然と朝ごはん前に決まった。


 よろしくお願いしますと頭を下げると、リボンが視界の端に垂れた。ヘッドドレスのフリフリ部分に通されているリボンの結び目が解けてしまったようだ。すみませんと謝ってから結び直す。


「いつも思うが、その頭に付けてるのは何か意味があんのか」

「さあ……私もよくわからないです」


 向かい合って立ったサラフさんが眉を寄せながら、ヘッドドレスを直している私を眺めつつ言った。

 カイさんが用意してくれた服は今のところ5着ほどだけれど、靴下やヘッドドレスはもっと多い。特にヘッドドレスは並々ならぬこだわりがあるようで、いつもお仕事をもらいにカイさんのところへ行くと厳しいチェックをされるのである。


「前に付けないで行ったらカイさんにお説教されたので、何かしら意味があるっぽいですよ」

「……嫌なら断っていいんだぞ」

「最近はもう慣れましたね……」


 サラフさんの目に同情が宿る。

 フリフリの服は最初は抵抗感があったものの、毎日着ていたらもはや気にならなくなってきた。ガヨさんとおそろコーデだと思えばそこそこ楽しい。


「貸せ」

「あ、ありがとうございます」


 鏡なしで綺麗に結ぶことに苦戦していると、サラフさんが手伝いを申し出てくれた。一歩近付いて、結んでもらいやすいようにちょっと頭を傾ける。


「私はちょっとあれですけど、ガヨさんはフリフリいっぱいの服装が似合っててすごく可愛いですよね。髪も黒くて綺麗だから、白も赤みたいな濃い色も似合うし」

「ユキも似合ってるが」

「エッ」

「出来たぞ」


 見上げると、思ったよりも近い場所にサラフさんがいた。

 なんか今、なんか言われたような気がした。

 見上げていると、サラフさんが手を伸ばしてくる。そのまま固まっていると、ゴツゴツした指が私の顎に触れる。私より少し高い体温が伝わってきた。


 なになになんですか。

 ビックリしすぎて固まっていると、く、と顎を持ち上げられた。

 そのまま軽く左右に動かされる。


「左右対称になってりゃいいだろ」

「……えっ?! あ、ハイ、いいですありがとうございます」


 サラフさんが頷いて手を離す。

 ヘッドドレスを確認していただけだった。びっくりした。

 なんか変に自意識過剰になっていたことを恥ずかしく思いつつ、一歩下がって距離をとった。サラフさんの視線が気まずい。黙っていると、サラフさんが口を開いた。


「緊急時に武器になるかもしれねえな」

「……ヘッドドレスは護身用ではないと思います……」


 いざと言うときにリボンを手に取り、相手の首を絞める的なことを思い描いた。色々となんか違う気がした。






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