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傷心令嬢の鬼ごっこ  作者: 夕鈴
第一章
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第8話 反乱

ジオラルドはレオナルドの命令で仲間と一緒に民衆達を煽り立ててシュナイダー王国に反乱をおこした。

シュナイダー王民には悪は王。

姿がなくなった貴族達は、民を助けるために進言して、怒りを買って出兵させられたと伝えた。

流行り病で疲弊した民の怒りは新国王に向いた。

シュナイダー国王はレオナルドの望み通り、民達に殺された。

国王の首を斬り、他の貴族の処遇は後日裁判で決めることになり、反乱軍の勝利に民達は歓声をあげて盛り上がっている。

成功を祝い、国庫を解放し祝杯をあげている民達をジオラルドは眺めていた。

突然レオナルドが現れた。

転移魔法の使い手であるレオナルドが突然現れるのは珍しいことではないが、場所が悪かった。



「ジオ、御苦労だった」


王宮をスタスタと歩いていくレオナルドをジオラルドは慌てて追いかけた。

興奮した民がレオナルドに危害を加える可能性があり、レオナルドが一人で出歩くのは危険すぎる状況だった。



「殿下、護衛をお連れください」と言う言葉はレオナルドに何度も聞き流されたため、ジオラルドは言わない。

自由な王太子には強引に付添い護衛するしかないとジオラルドは思っていた。


「王宮の地下。王家の人間が亡くなったことで守護魔法が解かれたか」


階段を降りて、レオナルドが入った部屋には氷の棺があった。


「話を聞いて、もしかしてと思っていたんだ。すぐ戻るからここにいて」


ジオラルドは転移魔法で消えて行くレオナルドを見送った。

氷の棺には男が眠っていた。

眠る男をジオラルドが眺めているとレオナルドとイリアナが現れた。

イリアナはジオラルドには気付かずに棺に駆けていく。


「殿下、殿下」


イリアナは氷の棺に茫然として、崩れ落ちた。


「リン、溶かして」


レオナルドの魔法で氷が解けていく。

イリアナがフラフラと立ち上がり、眠る男の頬に触れた。


「殿下、目を開けてください。リアは貴方がいないと駄目です。お願いだから」


イリアナの悲痛な声が響き、瞳から涙がこぼれた。


「利用してくれてよかったのに。貴方に、つかえないなら、こんな力いらなかった。貴方がいれば、どんなことも耐えられたのに。なんで、どうして。リアは」


イリアナが第二王子の手を握って泣き崩れてた。


「起きてください。殿下。お願い」


イリアナは治癒魔法をかけようとした。


「イリアナ嬢、駄目だよ。魔法は効かないよ」


「殿下。どうして」


「イリアナ嬢、静かに眠らせてあげよう」


「でんか、おねがい、リアを置いて行かないで」


レオナルドがイリアナの肩に手を置いて呟くとイリアナが気を失った。

倒れるイリアナに慌てジオラルドは駆け寄り支えて抱き上げた。


「彼女は魔力の使い過ぎ。このままだと限界まで注ぎ続けるから眠らせただけ。時期に目覚めるよ」

「そうですか。殿下、彼は」

「この国の第二王子。イリアナ嬢の婚約者。君が欲した彼女の心は彼の物みたいだよ。どうする?」

「構いませんよ。傍にいますよ。殿下、褒章に彼女を利用しないと約束をいただきたい」

「彼女が欲しいと願うと思ったけど、もう心は離れたの?」

「俺が愛しいと思うのは彼女だけです。でも彼女に戦場は似合わない」

「不器用だな。まぁ君たちの頑張り次第だよ。私は彼女が自軍に加わるだけでもいいからね。それに彼女がいればセインもついてくるしね」

「貴方は……」

「国を治めるには綺麗事だけじゃいけないから。第二王子殿下が存命で、領土拡大を願ったら脅威だったよ。あの二人の力なら国なんて簡単に滅ぼせるから。イリアナはセインに預けてくるよ」


レオナルドはイリアナを抱き上げて転移魔法で消えた。

ジオラルドにとってイリアナは特別だった。イリアナにとっての特別が第二王子であるのは明らかだった。

ジオラルドはイリアナを失うことを想像したら気が狂いそうだった。

泣き崩れ、倒れたイリアナを想うと胸が苦しくてたまらなかった。







「ジオ、ここにいたのか」


反乱軍の仲間に見つかったジオラルドは部屋のドアを閉めて近づいていく。

ジオラルドには、第二王子の遺体を人目にさらすのは気が引けた。


「広いから迷っていた。なに?」

「リーダーが探してたぜ」

「今、行く」

「皆、祝ってるけどお前は混ざらないの?」


反乱軍の仲間と一緒にジオラルドは移動した。

反乱軍はずっと祝杯をあげていた。



「国王のいない国を作る!!」


酒に酔った反乱軍のリーダーの声に仲間達は賛同し、盛り上がる。


「貴族も平民も関係ない国を!!」


「ジオ、無事だったか。途中で姿が消えたから心配した。ほら」

「悪い。広くて迷った。酒は飲めない」


ジオラルドは酒を渡されたが、断る。


「残念だ。確かに広いよな。これからどうしようか」

「まともな貴族を頼れば?悪だけじゃないだろ?」

「前王の時代は良かったよな。第二王子殿下とラーナ様はいつもお優しかった」

「うちの孤児院に差し入れに来てくれたものね。ラーナ様の歌を聞くといつも元気が出た」

「セイン様はどうされたんだろう。セイン様ならなんとかしてくれるかな」

「貴族に知り合いがいるのか?」

「第二王子殿下とラーナ様はお忍びで城下を歩くのがお好きだったから。文字を教えてくれたのはラーナ様、剣を教えてくれたのはセイン様」

「二人は貴族だから帰ってきたら裁判だろ。宰相の息子と第二王子の婚約者なんて死刑だろ?」

「え!?」


ジオラルドは反乱軍の会話を聞きながら、頭を抱えたくなった。

立ち上がった反乱軍は勝利を手にしたが、国造りへの具体的な展望を持つ者は誰一人いなかった。


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