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盗賊少年達の決戦

 元魔王のバンは、自分の出る幕ではないと悟り、王宮の瓦礫の腰掛ける。


「よぉおっさん、大丈夫か?」


近づいて声かけるのは、共に奮闘したパイ。彼女もまた、戦いの終わりを感じいた。


「まぁな……でももう儂らはお役御免だろうな」

「へっ、俺はまだまだ行けるぜ……と言いてぇとこだが、出るまでもねぇな。見ていて負ける気がしねぇ……」


「だな……こんなフルパーティで儂が攻め込まれていたと思うと、腰が引けてしまうわい」


「バン殿よ、再びの助太刀に感謝しますぞ」

2人に話しかけるはカンダル王国国王。


「いやいや、大したことはしとらんさ」

「君もありがとね。シフの新しいガールフレンドかい?」


「バッ、ちげぇよ!? ……って、ちょっと待て、あいつ誰かと付き合ってたんか……?」

「さぁてね〜」


観戦する3人に対して、戦闘は激化する。脳死で突っ込みまくるオニスをひたすらカバーしていく。


「ッシャアアア!!」

「『白爆槍』」

「タイムストップ」


アクマが魔法を放つも、サフィアが止める。その間にオニスは懐に潜り込み、飛び蹴りを放つ。


「厄介な……」

間一髪で防ぐアクマ。おかげさまで、またしても獲物を掠め取る隙が生まれた。


『絶盗』


「しもうた!?」

奪い取ったのはオニスの愛用武器、呪いの斧。


「オニス!」

そして、奪った呪いの斧をオニスの近くへ投げつける。


「でかした! キスして殴ってやりてぇ!」

「殴るのはなんで!?」

これで鬼に金棒、比喩と遜色ない状態だ。


「丁度新技を試す時が来たぜぇ!」

「……宝石となっていたのにどうやって編み出したんですか?」


「イメトレ」

「できたの!?」


そう言ってオニスは、居合いの構えをとる。これはまるで……


「バンさんの『八つ裂きの一振り』……」

「おうよ、これを『災撃』の力で放つ」


「へぇ………………え?」


「『八災(はっさい)破鏖(はおう)』」


衝撃はこちらに向けられたものではない、それでも尚全力堪えなければならないほどの風圧に襲われる。王宮は、いや王宮があった場所は、もはや建物が建てられていたとは思えない無惨な光景へと変貌する。


「ひぇ……」

「やりすぎじゃないかオニス!?」


「ゲフッ、ゲファ……」

地形同様に大ダメージを受け、血反吐を吐くアクマ。それでも徐々に身体の修復を始めている。


「フン、あの馬鹿に先越されたとはいえ、いい気味ね」


今度はイヤドが前に出る。その背中は、手を出すな、と言わんばかりの圧を感じる……


「き、君か……」

「所詮アンタは、漁夫の利でしか勝てない愚か者ね」

「……フフ、君だけは今の力でも勝てそうやけど」


「死ねぇぇ!!」

まんまとイヤドは挑発にのり、『プロミネンスレーザー』を放つ。


「『フェニックス』」

アクマが発動したのは、ルビの魔法。過去にイヤドは全く同じ魔法で破れている。誘導されたか……


いつでもカバーできるよう身構えるが、突如としてアクマの魔法が消えたのだ。


「ぬっ!?」

「馬鹿ね、このアタシに同じ手が通用すると思ってんの?」


アクマの魔法は遥か上空に移っていた。転移魔法で位置をズラしたのだろう。罠に嵌めていたのは、イヤドの方だったか。灼熱の光線がアクマを包み込む。


「ふぅ、スッキリしたわ。さぁ、アンタ達! とっととぶっ飛ばすわよ!」


2人の大技を受け、立つことすらおぼつかないアクマ。


「ハァハァ……」

「観念するんだな」

「…………まだや」


アクマの目はまだ死んでいない。ドス黒いオーラを纏い始め、次第に鎧が形成されていく。


「『黒王』」


夜叉のうよな兜に、強靭な爪を宿す。もう人と言うよりは怪物だ。


「ハッハァー! そうこなくっちゃなぁ!!」

敵の奥の手に一層喜んでしまうオニスを差し置き、サフィアは攻勢へと転じる。


「タイムスキップ、『因果先行斬』」

一瞬の内にアクマの後方へと立つサフィアに、よろめくアクマ。しかし、その身体には傷はついていなかった。


「む、硬いな」

「『白爆槍』」

「サフィア、それは爆発します!」


「承知した、愛してる!」

「やかましい!!」

気にかけた言葉を仇で返され、後悔する間もなく火炎が飛んでくる。


迎撃しようとすると、目の前に障壁が現れて防いでくれた。


「サポートに徹するわ、アタシの魔法じゃ巻き添えしちゃうし……前衛組で突っ込みなさい」

「あのイヤドに……協調性が芽生えてる……!?」


「しなかっただけであるわ!? 馬鹿言ってないで速く行きなさい! 一緒に蹴散らすわよ!!」


「脳死ブッパのお前が、そんなこと言えるとはなぁ! 成長したなイヤドォ!」

「1番アンタには言われたかないわよ!?」


イヤドのサポートに甘えて、オニスと共に前進する。挟み込む形でサフィアも応戦。息もつかぬほど攻防に、エメルが持続的に回復してくれてる。時間とともに優勢へとなる。


「くそたれ……!!」

ボロボロになりながらも、アクマの眼前に黒い小さな球体が出現する。さっき行った全方位自爆攻撃の前兆であった。しかし……


「おや、私がいるのに易々と爆ぜるとでも?」


黒い球体は位置も大きさも変わらぬままだった。サフィアの時間停止は、魔法にも効く。ここ1番というところで使ってくれた。


「ぬうぅぅぅぅ!!」


アクマはこれ以上ないくらい苦しそうであった。負傷に策も潰され、動きも段々と悪くなる。もう勝てない、誰もがそう思う状況下でアクマが取る行動は1つ。


上空へと跳躍し、翼を生やして逃亡を図ろうとしたのだ。


「へっ! 逃すかよ!」

「……いや、大丈夫みたいですよ」


アクマの影から伸びる黒い鎖が、自身の足にがっちりと絡まっている。


「やーね、逃げられると思ってんの? この面子で」

「こんなもの!!」


爪で破壊を試みるも、鎖は微動だにしない。


「タイムストップ……私が手を加えれば、絶対に逃れられない呪縛の完成ってわけだな」


機転を利かせたサフィアの時間停止。殺し合いまで発展した仲なのに、良い連携だ。


「やめなさいよ、変態が移る」

「これで移ったら其方に問題があるぞ!?」


「まぁ仲は相変わらずで……さてそれじゃあ……」


体力も心も削がれ、逃れられない絶対的な敵。やることは決まっている、とどめの一撃だ。


各々がウォーミングアップし始める。


「待ち待ち待ち!! 降参や降参! もう勝てへんて!?」


「それでも油断できないですし」

「ちなみに俺はさっきの新技出すわ。せいぜい俺のに負けんなよ!」


「アカンアカン!? 死ぬ死ぬ死ぬぅ!」

「大丈夫、死後間もなければエメルが蘇生できますから」

「……のーぷろぐれむ」


「じゃあわざわざ殺す必要ないやん!? なぁ、ご慈悲を! 勇者様ぁ!」


「うーん、個人的にはいいかなって」

「勇者辞めちまえ!!」


「フフン、とりあえずぶちのめされなさい」

「イヤァァァァァ!!??」


『風雷閃刃』

因果先行(いんがせんこう)千斬(せんざん)

『八災破鏖』

『メテオストーム』


全ての技がアクマ目掛けて駆け昇り、周囲の雲すら消しとばす。快晴が勝利を讃えてくれるように。

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