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盗賊と海賊と山賊と

 バンさんを回収し、魔族領域から人間界に戻る。世間はあるニュースで騒いでる。カンダル王国、リオストロ城下町、ウィッチの陥落。そして勇者は何処へと。


「しかし、たった1日で全てが崩壊したとは信じられん……あの戦士すらも敗れたとはな」

「数々の英雄、その力を我が物にできてますからね」


人々の様子見て、ぼやくバンさん。救いなのは、あのアクマは侵略が目的ではないこと。不必要に大惨事は起こしてない。国のトップがいなくなっただけで、国民の生活自体は平穏ではあった。


「そんな奴に俺達でも勝算はあんのかよ?」

「……奴の宝石を盗むこと。そうすれば、僕らでも能力が使える」


必ずしもアクマだけが使える代物じゃない。イントゥリーグ王国との戦争時、マイトさんもサフィアに対して使っていたことから、宝石は持っていれば使える。


そして、持っていなければ使えなくなるのだろう。盗んでしまえば相手の力を削ぐこともできる。


「宝を奪い取るってか。俺らにはおあつらえ向きだな。なんせ、盗賊に海賊に山賊の集まりだ」

「儂は名ばかりなんだけど……」


「少なくとも力づくにはなる。魔法で探知されてしまうから、こっそりはできないし」

「いいねぇ! 益々俺のやり方よ!」


「ではまず……チーム名を決めんとな」

「呑気だなおっさん……」


「3つの戝が集まったということで……『三戝志』なんかいいんじゃないですか?」

「よいな……!」

「えー! 発音的に山賊の要素が強くてずるいじゃんか!」


「ずるいと言われてもなぁ……」

「パイレーツオブ海賊達がいい!」

「主張強すぎるうえに重複しとるからな!?」


「三戝志に決定……!」

「ちぇー」

「ふむ、ならば出発前に祈願も兼ねて誓いを立てるとしよう」


「お、いいじゃん。出航式にもなるしなあ」


船へとあがり、パイとバンさんの部下達が自分達3人を取り囲むように集まる。各々が武器を手に取り、掲げて合わせていく。


「友であり恩人の義に報いるために!」

「儂も大体そんな感じで!」

「おい!! 言い出しっぺなんだから適当に被せんなや!」


「ぷっ……」


2人のやりとりに思わずニヤリと笑ってしまう。絶望的だった状況のなか、心強くて心許せる仲間がいる。焦りや不安は完全に消え去っていた。


「……2人とともに、必ず仲間を救い出す」


「「「「うおおぉぉぉぉ!!!!」」」」


周囲の海賊達が湧き上がる。声に出した言葉を実現へと向けて、確固たる意志が形成されたように……


 遂に、宿敵であるアクマへと向けて出航した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 アクマがいる場所は、苦しくもイントゥリーグ王国の王宮へと根を下ろしていた。国の陥落と勇者の失踪について、自分が主犯だと声明すら出している。


真偽を確かめに、イントゥリーグ王国へと足を踏み込んだ他国の精兵達は戻ってこない。大方、気に入られた者は宝石と化しただろう。


民は逃げ惑い、もはやイントゥリーグ王国は隔離地域となっていた。


 生活の跡が残ったまま、廃墟となったイントゥリーグ王国を歩む。


「ついに……挑むんすね……」


バンさんの部下が息を呑むように呟く。全員が緊張した面持ちでついて来る。既に探知されていてもおかしくない。


「見られてるような、いやーな空気だな……っと、来るぞ……!」


バンさんの掛け声に皆が武器を構える。大地が盛り上がり、ゴーレムが形成されていく。それも数十体以上。さらにはゾンビも大量に湧き出てくる。


「本人は高みの見物ってわけか……! いくぞ野郎共ぉ!!」

「「「「っしゃああああ!!」」」」


漢気満載で挑んでいくパイ達。勢いよくなぎ倒していくが、奥から敵はどんどんやってくる。


「……際限がないな、これでは時間の無駄だ」

「そうですね……極力相手をせず進みたいですが……」


後方から戦況を見守るも、これではキリがない。しかし、無視して通ろうには無理がある数。相手の思うツボだが、倒しながら進むしか……


「ぐわぁ!?」


1人の海賊がやられた方へと目を向けると、ゴーレムやゾンビが赤黒く変化している。魔法による強化か、動きも荒々しく俊敏になっている。


「何体かやられたのを感知して強化したか」

「1人ずつ突っ込むな! 連携してぶっ潰せ!!」


海賊達が陣形を組むことでなんとか迎え撃つことができている。それでも物量で押されかねない。自分も討って出るとしよう。


「パイ、バンさん、僕も前に出る。引き続き指揮を頼む。このまま前進しよう」


「気をつけてな」

「へばんなよ!」


2人に任せ、前へと出る。呪いの短剣の柄に、ターバンとして使っていた布を巻き付ける。振り回して遠心力をつけ、敵の群れへと投げつける。


リーチを伸ばしたことで、この斬れ味がより発揮する。一切留まるこなく振り回すことができ、一掃し続ける。


「テメェらは巻き込まれんなよ! 俺達は囲まれないようサイドを抑えるぞ!!」

「「「「イエッサァ!!」」」」


前方だけに集中できるだけ、だいぶ楽だ。順調に前へ進んでいく。そして遂に、王宮の前へと来た。


「やあやあ、今度は別のお仲間かいな?」


直接頭に響くは、事の元凶であるアクマの声。姿は見せずとも、余裕ある態度が伺える。


「せっかく助けてくれた可愛い子ちゃんの意志、無駄にしちゃうんかい?」

「違う、彼女は託してくれたんだ」


「絵空事を……ま、刺激になるからうちはええけど」


話してるうちに次々とゾンビやゴーレムが包囲をしてくる。


「お前らはこいつらを抑えろ。俺らが本元をぶっ潰す」

パイの指令に無言で頷く海賊達。このゴーレム達にもリソースがないわけじゃない。少しでも削ってくれれば御の字だ。


 目で合図して、3人で王宮に突入する。中に魔物はいなく、奥へ進んでいくと広間にアクマの姿を捉える。


「ここは良い場所やね。綺麗だけでなく、不思議と身が引き締まる」


「……貴方が、ここを継いできた人達をないがしろにした……それをまぁよくも、感想なんて言えたもんだ」


「ええやないかい、どのみちもう君らとは喋れんようなるんやから」

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