盗賊少年と人質救出作戦
「ねぇお母さん、お昼なのにお星様が見えるよ?」
「そんなわけないでしょう」
商店街で買い物に来ていた子供が疑問を聞くも、親は手に取っている食品に目を向けたまま相手をする。
「でも、い〜っぱいあるよ!」
「嘘おっしゃい」
「どんどん大きくなってるし!!」
「はいはい、ちょっとに静かにしなさい」
「いいから見ろよ!」
「ちょっ、親に向かってなんて口……え?」
降り注ごうとする隕石を見上げ、想像すらできない未曾有の危機に群衆の誰もが立ち尽くす。
「タイムストップ」
だがしかし、その危機は起こり得なかった。上空で隕石は完全に停止し、纏う炎も静止画のように動かない。
「随分な挨拶じゃないか、イヤド」
「アンタならこの程度簡単に止められるでしょ」
空から見下すイヤドに、地に足をつけて見上げるサフィア。
「でも民衆は巻き込むな、私が一歩遅かったら大惨事だぞ?」
「仕方ないじゃない、アンタを倒すためにはこれぐらいしないとね」
「……なら場所を変えよう。狙いは私だけだろう?」
「あら、誰に指図してるの? それに、仮にも勇者なら守り抜いてみたら!」
攻撃の意思と魔力の始動を感知し、サフィアはすぐさま思考を切り替る。
「タイムスキップ、『因果先行斬』」
対象を斬るまでの過程を省略し、斬ったという結果だけ残す。しかし、サフィアに手応えがない。
「馬鹿ね、アンタ相手にわざわざ姿を晒すとおもう?」
「……幻影か」
「その余裕ヅラはどこまで持つかしら! 『プロミネンスレーザー』!」
イヤドの幻影から放たれる灼熱の光線。サフィアが避けれは、多くの人々が巻き込まれるように。
「タイムストップ!」
否が応にもサフィアは止めるしない。魔法を時間で戻しても、魔力としてイヤドに還元されるだけでデメリットがない。負荷がかかるにしろ、止めたままにするしかない。
これこそがイヤドの作戦である。無理矢理『時』の力を使わせ、消耗させて仕留めること。
対してサフィアはその条件のなか、逃げ惑う民といくらでも隠れられる建物から五感を使ってイヤドを見つけ出さねばならない。
「本気で潰す気か……参ったな」
民を見捨て引くことはできない。覚悟を決め、サフィアは剣を握った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イヤドが離脱したウィッチの村では、シフ達は動けない状況にあっていた。“黒バラ“がウィッチの村人達を人質に取り、これみよがしに見せつけていたのだ。
「ほらほら〜! 少しでも動いたらドカッといっちゃうッスよー!」
「うぅ……」
ガネットが呪いの三節棍を振り回し、人質達の目の前を幾度も横切る。
「ガネットの野郎……イキリやがって……!」
「地味に困りましたねぇ、本来の目的である村人の救助を逆手にとられたようで。イヤド様とドンパチしなくて済みましたが」
「それが問題なんですよ、彼女の狙いはサフィアしか考えられない……わざわざこうやって僕達を足止めしてまで行ったんだ、何か勝つ秘策があるのかもしれない」
「ま、警戒してるのはシフ君くらいでしょうが……応援に行くのも、まずはこの状況を打破しないといけませんね」
「じゃあプランCね!」
「「了解」」
「へいへーい」
村人の救出にあたって、人質として利用されることも視野には入れていた。イヤドがいなくなった今なら、多少強引な手でもいけると。
「こらこらぁ! さっきからコソコソと何を喋ってるんッスかぁ! 立場ってもんをーー」
「愚か者っ!!」
「うひゃ!?」
ルビが敵の言葉を遮って一喝する。
「罪なき人々を傷つけ、挙句に危険を晒し続けるなど恥を知りなさい!!」
「はぁ?? 敵にお説教とか頭沸いてんッスか? これだから王女様ってのは……」
「貴女の素養の悪さでは理解しにくいかもしれませんが、自身の悪行を悔い改める時です!」
「んだとゴラァ!?」
「手を出すというなら、こちらも容赦はしない。二度も獲物を逃すのは性に合わなくて」
「ひっ……ま、まぁ大目に見てやるッスよ」
ルビを庇うように殺気を向けると、怖気づくガネット。前回の対峙と、イヤドからの忠告でも自分は最大限警戒されてるだろう。安易にこちらを拘束してこないのがその証拠だ。
だがこれで注意は引けた。気づいている者はいない。オニスですら見破ることが出来なかった隠密部隊長の存在を。
悲鳴を上げることも倒れることもなく、“黒バラ“の内、情報が割れていない2人を痺れ針で仕留める。
事を終えてから気付いたのはリーダー格のパルという人物。アメトさんの方に振り向くやいなや、光輝く槍が放出される。
「既に仕掛けられている!! 総員ーー」
指示が入り切る前に槍を切断し、パルの元へと飛びかかる。
「くっ!」
「問答無用でいかせてもらう」
バトルロワイアルの開戦だ。




