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盗賊少年と敵の情報

 ウィッチの村を取り囲む、遺跡を順当に突き進んでいく。モンスターの根城となっていて、食物連鎖の中へと参入しているようなものだが、不気味なほどに静か、生物の気配すら感じない。


そして、漂う血腥さから自然界にしても異常事態が起きているとわかる。“白バラ“によってモンスターは掃討されているだろう。


 ウィッチの村では、この遺跡を1人で往来できれば初めて一人前の魔法使いと認められる。これをイヤドは齢4歳、最年少で行えたからとよく自慢していた。


魔法は天賦の才を持ったせいか、並の大人では教育されることも注意を受けることも不快に感じ、人格は破綻。自身絶対主義となった。


それでも実力を買われ、魔王討伐に加わる。本人曰く、世界の脅威として魔族が気に入らなかったと。この言葉は嘘ではなかったが、足らなかった。


彼女にとって王族も勇者も、悪人だろうが善人だろうが、上に立つ者は正しく目の上のたんこぶ。名実ともにNo.1は自分でなければ気がすまなかったらしい。


そして魔王を討つ前日、オニスとエメルが抜けたのをきっかけに、サフィアへ攻撃し始めた。ほぼ魔王のみとなった魔族よりも、『時』の力を持つサフィアが1番の難敵だと判断されのだ。


なんとか倒せたものの、また再び戦う羽目になるとは……更には“白バラ“集団も加わってくる。下手したらイントゥリーグ王国との戦争よりも熾烈になるかもしれない。


「あ〜あ、まだ俺がいたらわざわざ戦闘しないで易々と忍びこめたのに……いやてか、俺がいなくてなったからこうなったとはいえ、もうちょっとこう、取り戻す努力を与えてもね〜……」


「まぁそう言わずに。これから潰していくんですから」

「おたく、血も涙もないな」


ブツブツと独り言が絶えないマイトさんに、アメトさんが諦めるように相手をする。元仲間との争いという、なかなか残酷な仕打ちでもあるが、ルビの命を狙ったのもまた事実。最低限利用させてもらおう。


「そうだ、今の内に他の構成員の特徴や情報を教えてくれれば」

「か〜、あんまし言いたかないね。これでもポリシーがあるんだ。ほら、白いバラの花言葉は純潔、少なからずこの忠誠心だけは大事にしてるんだ」


「最初会ったとき、金さえ積めば善でも悪でも染まると言ったでしょう。僕の集めた宝物、いくつか差し上げるので雇われてください」


「俺が知ってるのは4人、そん中でも一緒に依頼をこなしたのは3人だが、よろしいでっせ?」


「うわぁ、切り替え早い……」

「王族のお姫ちゃんには金のありがたみがわからんだろうねぇ。なんせ、伝説の盗賊が集めた宝を譲ってくれるつってるんだぜ? 悪い話じゃないね」


「……いいのシフ君?」

「構わないよ、それよりも敵の情報だ」


あげるのは扱いに困っていた宝。盗品のため、王宮でも無闇に流せない。子供が現金化しようにも怪しまれる。なかなか都合の良い買取手が見つからなかったため、用途ができたのは喜ばしい。


「1人はご存知、俺の後輩でお前さん達とも戦ったガネットだ。新参者だが、土の魔法に加えて組織の中でも武闘派だ。呪いの棍もそれなりに使えてたしな。ただ、言ってしまえばそれだけ。おつむも弱い」


「戦った時の印象と一緒ですね。近・遠距離に対応できると言っても、抜きん出た強さではなかった。他にも自律型のゴーレムを複数出せますが、パワーはあっても動きは鈍い。個人だけではそこまで脅威は感じませんでした」


「ま、なんせ研修中みたいなもんだったからな。だからよく俺が組んで、手に掛けてたんよ」


「そんで見捨てられたと」

「掘り返さんでくれ」


新参者に研修中……納得ではあるが、決して弱いわけじゃない。問題は数だ。


「んで、次はトパっていう男だな。ハゲ頭でガタイがいいおっさん。火の魔法を主力とするバリバリの攻撃特化だ。強力な魔法だが、反面に近寄れば自爆しないように制御する。本人もこの弱点を熟知して立ち回ってるけどな」


「容易には近づかせてくれないってことですか。正面切って戦うのは避けた方が良さそうですね」


「んでラストが青年のクーツだ。小銃を持ってるから1発でわかる。魔法による銃弾操作、精度は俺よりも高い。元軍人らしく、近接戦闘もできる。地味だが強いぞ」


「なるほど……残りの能力を知らない人とは?」

「あぁ、リーダーのパルだ。会っただけだが、相当な実力を持ってるのは間違いない……後は顔も見たことないね。本来はこうペラペラ喋らないために情報は限られてるからさ」


「全くの0よりはかなり有益です」

「そんなら、少年の仲間だった魔法使いのことを教えておくれよ」


「あぁ……ただ、戦闘に関しては魔法のスペックが高すぎてなんとも言えません。威力も範囲も応用力もあって、基本的には逃げてください」


「漠然としてんな……なんかないの? よく使う魔法とか」


「イヤドは敵に合わせて最適な魔法をぶつけますから……種類も多すぎて説明できるレベルじゃない、とでも言うしか……気をつけることは、挑発でもして怒らせると手がつけられないので言動には注意を」


「うへぇ」

「強いて言うなら、不意打ちとかを好まないですね。真っ向勝負で捻じ伏せるのが彼女のポリシー

なんで……唯一仕掛けたのはサフィアぐらいですし。もしまだ村に留まっているなら、とっくに僕達は把握されてるでしょうけど、相対するまで攻撃はしてこないはずです」


「……ってことは、待ち伏せされてる可能性大いにありか」

「ですから、コソコソ行っても仕方ないので、正面突破で」


「私が隠密部隊の隊長ってのを忘れてませんかね?」

「どうにかなりますよ。最悪死んでも、エメルがいれば生き返るし」


「その保険はどうかと思うよ……」

「くれぐれも安全第一に。目的は住民の救出ですから。ルビ姫さまに臨死体験なんてさせるわけにはいかないので」


「いや、皆んなもダメだよ……!」


 話をしながら進んでいると、ウィッチの村の門が見えてくる。付近に白バラは見当たらないものの、村から煙が上がっている。いよいよ、突入だ。


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