盗賊少年と尋問
イントゥリーグ王国との戦争を終え、次の日の朝を迎える。だが、その朝日が届くことがない牢獄へとやって来ていた。
“白バラ"の構成員である黒い長髪の男。自前の白スーツは取り上げ、みすぼらしい布服へと替えている。手錠と首輪に鎖をかけ、魔刻印をも付与。逃げられず、助けも来ないと観念してるからか、取り調べに対しては素直だが……
「だーかーらー、居場所まではわからねぇって! 何遍同じことを言わせるかねぇ……」
名はマイト。“白バラ“としてイントゥリーグ王国に雇われはしたものの、オニスが目をつけ、そのままいいように使われていたとのこと。ただ、犯罪集団としては違いなく、野放しにするわけにはいかないので手がかりを聞いている。
「シラをきるなっ! “豚バラ“の一部ならば他の奴らも把握しているだろう!」
「“白バラ“だわっ!? せめて白は間違えんな! こういう時に備えて、アジトとか決めてなくて、魔法で一方的に指示が来るんだよ!」
まくし立てるサフィアを横目に、アメトさんと一緒に様子を伺っていた。
「埒が明きませんね」
「嘘をついてるようには見えませんが……所詮は末端の者だということですか」
「こらこら少年、聞き捨てならねぇな! “白バラ“は10人からなる実力者揃い! それに俺は選ばれ、後輩をも指導してる立場だったんだせ!」
「そしてまんまと置いてかれたと」
「ちくしょう!!」
「組織からは切り離されたも同然。どのみち解体するつもりですし、隠さず話せば罪は軽くしますよ?」
「ハハ、常套手段だな。ただ知らないものは話せないし、俺のでっち上げでいいなら満足するかい?」
「“鶏ガラ“風情がふざけるんじゃない!!」
「食肉系に発展しないでくんない?」
構成員の居場所については、どうも聞けそうにない。ただ気になるのは、サフィアとの闘いで使った代物……勇者の『時』の力さえ封じ込めた宝石についてだ。
「あの宝石……どこで手に入れたのですか?」
これでも盗賊、宝物のに摩訶不思議な能力も備わっていると知れば、とっくに手を出している。それが噂にも聞いたことがない。
「あぁ、あれか。制作者から呪いの武器と共に配給されたんだよ」
「へぇ……はぁ!?」
雷に打たれたような衝撃が走る。それを作った人がいる!?
「貴様ぁ! どうしてそんな重要なことをもっと早く言わん!」
「いや聞かれなかったから」
「……制作者が“白バラ"にいるんですか?」
「いや違う、他の依頼主だ。資金提供と実験で使ってくれと」
「そいつの特徴は!?」
「残念、俺はリーダーから頂いただけでそれ以上は何も知らん」
「くっ、使えんロン毛だ」
「勇者が1番口悪ぃなオイ」
……嘘をついてるようには思えない。本当だとして、もしそんな物が量産されたら脅威だ。
「早急に対処したほうがよさそうですね。“白バラ“を当たれば、制作者という謎も解けるでしょう。隠密部隊で捜索するよう、王に進言いたします」
「私も尽力しよう。命惜しくば、また何か思い出して報告するんだな」
「完全に悪役のセリフじゃねぇか…………あっ」
サフィアの忠告直後、マイトは思い出したかように一言漏らす。
「何だ!? 言いたいことがあるなら、一遍に言っておかないか! この痴れ者め!」
「さっきは報告しろ言ったじゃん!? 思い出したことがあんだよ!」
「すいませんね、勇者が……続けてください」
「……あれだ、こういう風に“白バラ"が欠員ができた時に備え、有用な魔法使いをリストアップしていて、スカウトするんだ」
「ほう、それで?」
「…………まさかっ!?」
嫌な予感しかしない……魔法使いというワードで最悪の想定をしてしまった。
「アンタらの仲間、いや元か。イヤドって言うんだったか? アレを立候補しといた」
「「なんてことをしたんだ!?」」
サフィアと口を揃えて罵倒する。世界を征服するとか言い出して、わざわざ2人で倒したというのに……
現在は出身であるウィッチという村で監禁しているが……もしまた解き放たれたら世界の危機だ。




