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盗賊少年と決着

 身体が重だるい、思考がおぼつかない。このまま眠ってしまえば、生命が終わる。抗いたくない、いっそのこと楽になりたい。


 横たわり、薄れた意識で何故こうなったかを思い出す。そうだ、飢えすぎて盗みを働くも失敗し、タコ殴りにされたんだ……もう動くのがやっとなんだ。


 諦めようとしていたその時、手に虫が登ってきた。これを食べればまだ生きられるかもしれない。


でもどうしてそこまでして、生きなくちゃならない? 今更こんな不味い虫なんかじゃなくてパンケーキが食べたいなぁ……


……え? パンケーキ? スラムの時にそんなの食べれたっけ? だって食べれたのはサフィアと出会って…………あぁそうか、これは夢だ。それも過去の思い出だった。


結局虫を食べて生きようとしたのは、未来への期待。まだまともだったサフィアと会って、色々教えられ、結果的には真っ当に生きられたと、生きててよかったと思えた。


その後は色々あったけど……でも悪くはなかったか……だけどもう、終わりにしていいんじゃないか……


『其方の命も、かけがえのない命に変わりない。約束だ』


……あぁ、そうだった、約束がある。他にもダンスが……これはまだ逝くわけにはいかないな。


『誓えぬのなら、この場で交わる。この場で交わる』


うわくっそ、これは思い出したくなかったわ! はいはい起きるよ、起きるからこの後はいいからーー


 夢から目を覚まし、現実へ戻ると森の中にいた。『災撃』を喰らって、ここまで吹き飛ばされたんだろう。それでも五体満足なのは、技を出して少しでも威力を緩衝できたおかげだ。


ボロボロの身体と違って、感覚は研ぎ澄まされ、絶好調ともいえる。昂る闘志とは逆に、頭は冷静で冴えていた。


「やっぱ生きてるか、つくづく喜ばしてくれるぜ……! いいねぇ、良い面構えとオーラだ。似てるな、あん時と……最高かよ」


 変わらず楽しそうに近づいてくるオニス。ルビが殺される寸前に刺し違えようとした時だろう。確かに似てはいる。今ならば1人でも互角に渡り合う自信がある。


でもよしておこう、邪魔をしないように。


「儂のことを忘れておらんか?」

鬼そのものとも思える覇気を宿し、居合の構えでオニスの横に控えていた。


「忘れるかよ!」

待ってましたと言わんばかりにオニスも手速く突きを繰り出そうとする。しかし、気付かれようともあの技には反応しきれない。


「『八つ裂きの一振り』」

目にも止まらぬ八つの斬撃全て、クリーンヒットする。


「……信じ難し、この男耐えよった……!!」

まともに受けたのにもかかわらず、オニスは倒れない。驚きのタフネスさだ。


「『龍砲』」

爆薬でも使用したかと疑うくらいの突き。その衝撃でバンさんは木に激突するも止まらず、2本目の木でようやく止まったのだ。


「さて次はお前の番だぜ、シフよぉ」

「悪いが、こちらのセリフだ」

「……あ゛?」


オニスは不可解なように苛立つ。いつの間にか右腕が切断され、激しく血を吹いているからだ。


『絶盗』

何かの動作とともに盗み出す秘技。呪いの短剣で斬り、すかさず奪った。


バンさんが注意を引いていたのもあるが、あのオニス相手に易々と決まった。何をしたらどうなるのかがわかる、不思議な感覚だ。


「ここで終止符を打つ」

「……俺がな」


奪った右腕を捨て去り、木々を足場に立体的に移動して撹乱する。


『狩の巣』は1度オニスに破れてる技だ、このままではいけない。歩法を『雷歩』に変え、加速しながら攻撃していく。


雷嵐天駆(らいらんてんく)


速くなったことにより、すれ違いざまの攻撃も威力は上がり、オニスは受ける度に体勢を崩す。


ただ長くは持たない、『雷歩』の脚力だと足場が爆散してしまうからだ。


だが、このまま『雷歩』のスピードに『風薙車』を合わせる。


風雷旋刃(ふうらいせんじん)


蹴りの風圧は鋭い刃と化し、オニス身体にスパッと斬り込みが入る。


「やるじゃねぇかオラァ!!」

「ぐっ!?」

オニスはカウンターとして、拳で殴っていく。そのままコンビネーションを駆使し、ラッシュを決めていく。


斧で撃退できないと判断するや否や手放して、手数と速さの徒手格闘に切り替えたのだ。凄まじい順応速度だ、とてもじゃないが相手してられない。


 オニスのラッシュから離脱しようするが、服を掴まれる。逃す気はないようだ。けど今ならできる、1度体験した組技がある。


「『天地足頭』」


オニスの身体はひっくり返り、頭が地に追突する。だが首の筋力を硬直させ、逆さのまま蹴りを放ったのだ。


 蹴られて後ろによろめきながらも、なんとか掴むことができた。


『絶盗』


 オニスが手放した呪いの斧。所有者が手放したうえでしっかりと柄を持つことで、所有権を得る。壊れぬ呪いに、リーチと重さは十分。これから放つ技の条件と一致する。


 1度喰らったことがあり、ついさっき2回も見ることができた。武器は違えど、今ならきっと成功する。


あのオニスが受けざるえなかった、技の極地。


「『八つ裂きの一振り』!!」


再び味わう八つの斬撃により、遂にオニスは倒れた。


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