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盗賊少年と躍動する戦況

 オニスは歪んだ笑顔で斬りかかり、バンさんは大剣で受け止める。激しい轟音と衝撃が生じるも、2人は一歩も引かず鍔迫り合う。


「そうか、お主が同族の現世代を殲滅させたのは本当のようだ」

「あぁ、楽しかったぜぇ……けどよぉ、やられたら案外ピーピー泣くもんだな。だから残らず黙らせておいたぜ、永遠とな」


「フンッ、そう煽らんでいい。血気盛んな奴らばかりだったしな、報いを受けるのも理だ。儂はただ武人として、負ける気など毛頭ないっ!」

「ヘヘ、たまんねぇな!!」


バンさんが一歩踏み出すと同時に押し勝ち、のしかかるように迫る。


「ぬっ!?」

バンさんは急にバランスを崩す。無理もない、オニスはバンさんが力んだと同時に斧を手放し、横へと抜けたのだ。既に右手で拳を握り締め、振りかぶっていた。


バキャッ!!


鈍い音を立てながら、バンさんの顔面が殴られる。


『風薙車』


バンさんに被害が出ないよう縦方向に蹴り、背中に直撃させる。オニスは転がりながらも、斧を手にしてブレーキをかけた。


「無粋な真似とは言わせませんよ。ここで貴方は確実に倒す」

「……なら殴られる前に蹴り飛ばしてくれても良かったんだよ?」


鼻血を出しながら見つめてくるバンさん。平気そうで何よりだ。


「それだとバレちゃいそうだったんで」

「人間は意外と残忍よな……不覚を取った儂が悪いか」


「ふぅ〜、今のは結構効いたぜ……こうでなくっちゃなぁ!」

ゆっくりと立ち上がり、嬉しそうに喋るオニス。モロに受けても相変わらずピンピンしてるが、ダメージないわけない。立てなくなるまで、何十回、何百回だろうが喰らわせてやる。


「行きますよバンさん!」

「おうともっ!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 戦場の後衛にて、ポツンと豪華なやぐらが立つ。赤と金色の装飾であえて目立つように作られ、窓には硝子まで付き、密室になっている。


中にいるのはルビとサフィア。周囲には兵士と見せかけた人形達と簡易的な柵のみ配置されていた。


明らかに敵を誘い込む仕組みだが、実害的な罠はない。ルビを狙いにくる者をサフィアが迎撃する、たったそれだけである。


「でも本当に来るのかな? こうもあからさまにだと……」

「可能性は大いにあるさ。理由何にしろ、姫は執拗に狙われてたうえに、討たれたら士気が奈落に落ちるしな」


「ちょっぴり怖いな……サフィアがいてくれて良かった!」

「フフ、傷1つつけないとも。ただ……密室に2人、歳の差、何も起きないはずがなく……」


「おほん、サフィアよ、"白バラ"らしき痕跡の情報がきている」

魔法陣が描かれた紙からカンダル王の声が発生する。高等な魔法使いのみが施せる通話魔法。リック相談役があらかじめ用意していた物である。


「チッ、どのような情報で?」

「舌打ちしなかった? まぁいい、そこから北西の中衛地点に土でできたゴーレムが侵攻してると。シフとエメルを襲った“白バラ“の可能性が高い。確認ヨロシコ」


「仕方あるまい。確認ついでで、どさくさに紛れてゴーレムを破壊してこよう」

「気をつけてサフィア!」


サフィアは飛び出し、窓硝子を閉めてから一目散に情報があった地へ向かう。


 しばらくすると、ルビは外の異様な光景に気付き、窓硝子に顔を近づける。大量の武器が空を飛んで、やぐら目掛けて向かっていた。


ガガガガガッ!!!!


「わっ!? 遂に……!」

無数の剣、槍、矢などがやぐらに弾かれていく。ルビは多少驚くも動じない。サフィアが事前に仕掛けた『時』の力。時間停止による完全干渉不可である。


「ねぇアニキ、傷1つつけられてねぇッス。ウチも援護したほうがいいッスか?」

「やめとけ、魔力の無駄だ。まぁそう簡単に上手くはいかんよなぁ」

様子を伺い、全身白スーツの2人組が現れる。1人は黒髪の長髪男、もう1人は橙色の短髪女。


「しゃあねぇ、離しといてなんだが勇者様が来るまでーー」

「そこまでだ“白バラ"」

「っと、噂をすれば」


戻ったサフィアは冷めた声で睨みつけ、剣を抜く。


「ひゃあ〜、噂には聞いてたけどめっちゃ美人じゃないッスか! 敵じゃなかったら是非一夜を過ごしたいッス!」

「フンッ、私を口説くなど10年遅い。幼体化して出直して来るんだな」


「これを過去形で言われたの初めてッス」

「気を付けろ、美化していると痛い目みるぞ」


「大人しく投降すれば痛い目はみない。既に勝敗はみえている」

「そいつまぁお優しいこった、なぁ!!」


やぐらに飛んでいた大量の武器が、今度はサフィアに標準がいく。


「タイムストップ」

サフィアの目の前で、武器はピタリと空中で静止する。


「勇者さんよ、その『時』の力は対象の個数、規模、生物か否かで負荷が変わるんだって? やぐらに数多の武器……これ以上増えたらしんどいんじゃない?」


「……オニスから得たか」

「畳み掛けるッスよ! 『ハーレム・ゴーレム』!!」

20以上のゴーレムが地中から湧き出ていく。


「おまけだ、『幻煙虚像』」

長髪の男が唱えると、一瞬でゴーレムの数が倍以上になり、辺り一面を埋め尽くす。


「さぁ! けちょんけちょんにしてやるッス!」

「……オニスから、()()()も対象にできると教わらなかったか?」


「っ!」

長髪男は身構える。しかし、既に発動した魔法がなくなる感覚がきていた。


「タイムスキップ、『因果先行斬(いんがせんこうざん)


実物・虚像のゴーレム共々、止まっていた武器達すらも細切れになる。サフィアが1つ1つをちゃんと斬った、という結果だけを残したのだ。


「ハハッ、ここまでとは……笑けてくるね」

「もう1度問おう。投降すれば痛い目はみない」

サフィアは女の背後を取り、剣先を背中につける。


「やっぱ正攻法は厳しいか……反則的な力には、同じく反則的な力で対抗しないとな」


 顔が青ざめ、声も出ない女とは裏腹に、男はポケットからごく小さな何かを取り出すと、それは輝き始める。


「なんだ? 宝石……か?」

続け様に男は黒い(おおゆみ)を出現させ、一本の矢をサフィアに放つ。


「無駄だ、タイムストップ……何っ!?」


その矢は止まることなく、サフィアは寸前で斬り払った。



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