盗賊少年の本性
「飛び降りる……? か、階段じゃダメなの!?」
「待ち伏せか罠があると思うので。それに外に出たとわかりやすくして、もう爆撃をやめてもらいましょう」
血が着いて戻ってきた短剣を受けとり、血を払ってからしまい込む。
少々乱暴だけど、これが手っ取り早いと思う。
「そ、それが1番安全なんだね……うん、わかった!」
「ご理解ありがとうございます。では」
ルビ姫様を背負い、窓から飛び降りる。
「ギィヤァァァ!?」
「落ち着いてくださいルビ姫様! 暴れるとより怪我をしやすいです!」
その一言でルビ姫様はジタバタさせる身体を、震えながらも硬直させる。
「ありがとうございます。それでは少し走り飛ぶので、そのまましがみついててください!」
地面に着地したと同時に、一気に駆け抜け、大砲を撃った連中の元へ辿り着く。
敵の人数は、短剣で仕留めた奴を除いて3人。瞬時に全員蹴り飛ばし、1人だけ意識を残しておく。
「うぐっ……貴様何者だ……? 王宮にこれほどの実力者がいるなんて」
意識が残った男は立ち上がろうとするも、怪我の影響で上体を起こすのが限界のようだ。
「質問するのはこっちです。命惜しくば、命じた主人を吐いてください」
「だ、ダメだ、それは言えねぇ……バレたら殺されちまう」
「今死ぬか、後で殺される可能性はあるが逃げられる、どちらかです。それか……」
地面をバンッ! と思いっきり踏み潰し、大きなヒビ割れができる。
「これを股間に喰らいたいですか?」
「……首謀者は大臣のマサイ様です」
「そう、では」
軽く頭を蹴って気絶させ、その場を後にする。
「シフ君て結構怖いんだね……」
「……これでも盗賊でしたから」
背負っているため、表情は見えないが、きっと恐れられているだろう。盗賊として、生きるためとして、殺めたことだってたくさんある。お姫様にはとっては幻滅する話だ。
「え!? 盗賊だったんだ! 通りでちょっと格好よかったよ!」
「えっ、か、格好いい? 本の物語のような盗賊ではないですよ……?」
「本じゃなくて実話だよ! もう亡くなったらしいけど、国のために魔王と戦った、素晴らしい盗賊がいたんだって!」
「ぷっ、あはは!!」
「え、どうして笑うの?」
「そういえば、そうだったなぁと」
「シフ君もその盗賊さんと一緒だよ! 私を守ってくれてるから!」
「ふふ、そうですか。ありがとう」
実際には言葉の通りだ。今までろくでもない人生だと思っていたけど、こうやって語り継がれ、自分の逸話を聞く……とても奇妙な話だ。