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盗賊少年と反撃開始

「死なねぇから殺してみろと言われたッスけど、瓦礫で潰れてたのにピンピンしてるとは……聞きしに勝る回復速度ッスね! よく見たら中々の美少女! 美味しそうじゃないッスか!」

「ハァ、年頃の女性というのは変態しかいないのかな」

「失礼なっ! ウチは子供には興味ねぇッス!」

「良かった、まともな変態だ」

「……まともな変態とは」


「さて、ここまでしたんだ。覚悟はできてますよね?」

「え〜、全っ然! むしろヌルゲーで満足できるほど、ウチは向上心低くないんで!」


大地が揺れ始め、エメルがよろけそうになるのを支える。常人ならまともに立っていられるのは難しいだろう。


「そりゃっ!!」

そして、身動きを取れなくなったところを狙う、と。


相手の突きを紙一重で避け、勢いがなくったところで棍を掴む。理にはかなっているが、たかだかこの程度で動けなくなるほど柔じゃない。


「やはり、衝撃を倍にしようが打ち終わりを抑えてしまえば問題ない」

「こ、このぉ……!」


相手は引き抜こうとするが、万力を込めて1mmも動かさない。強引に奪ってしまってもいいが、呪いの武器特有のデメリットを知るまでは気軽に扱いたくはない。


すると、やや地面が隆起するのがわかる。先程みたいに岩の柱を生やしてくるのだろう。


 魔法使いのイヤドからちょっとだけ教えてもらったことがある。土の魔法は、魔力による土の生成と操作をこなす。しかし何らかの理由で瓦解してしまえば、大抵の魔法使いならば再び操るには時間がかかると。


要はぶっ壊してしまえばいい。


思いっきり地を踏み砕き、岩の柱はおろか、揺れまで抑えられる。なるほど、最初からこうすれば良かったか。


「ちょ、マジ……?」

「覚悟、してくださいね」

「あわ、えっとですね、ウチはもうそろそろ帰ろうかと……十分遊んでいただいたんで、今回復術師さんもちゃんと連れてってくれるかなぁ〜……」


「じゃあ見逃せば、もうちょっかいは出さないと?」

「も、勿論! 実力差がわかっててそんなことするほどウチは知力低くないッス!」


……前の"白バラ"も追い詰めたらこんな感じだったなぁ。


「だが断る」

「ひぃ!?」

敵側の戦力を削る好機だ。みすみす逃すわけない。


呪いの短剣で、呪いの棍を3等分に切り分け、諸共蹴り飛ばす。


「ぶっはぁ!」

「……あれ?」

加減したつもりだが、“白バラ"は綺麗に吹き飛んでいく……もしかしたら、呪いの武器としてのデメリットは『棍が受ける衝撃が倍になる』……か?


「攻撃としては有用だけど、防御としては使えないってことか。諸刃の剣ならぬ、棍棒だね」


「ハァハァ、上等ッスよ……! だったら味合わせてやる、ウチの奥の手を! 『ゴーレム・ハーレム』!!」


地響きともに地中から、大きな土の人形が這い出てくる。数は10……いや20近くはいるか。一体一体が民家よりもでかい。人形というよりはモンスター級だ。


「まさか奥の手を足止めとして使うことになるとは……それじゃバイバイッス!」

そう言って"白バラ"は逃走を始める。


「逃げ足は速いなぁ……けどここ最近やられてばかりだし、1人くらいは消しとかないとね」


エメルがいるとはいえ、村人には被害が出ないようにゴーレム達は蹴散らしとかないと。尚且つ元凶にも追いつかないといけない。


 冒険時代、サフィアから疾く逃げるためにために編み出した歩法がある。一歩一歩を全力で踏み抜く。その足跡は雷が落ちたかのように弾けていく。


『雷歩』

一瞬にしてゴーレム達を踏み砕き、“白バラ“の前方へと着地する。


「っと、飛びすぎだ」

「う、嘘でしょ!?」

後はこのまま、とどめを刺すだけーー


「少年、ここまでにしておくれ」

遮るように現れたのは、同じく“白バラ"で王宮をした時の長髪男。


増援と理解する前に、反射的に手は動いていた。短剣ですかさず首を掻っ切る。


「おー怖っ、そこまで恨みを買った覚えはないんだがな」

手応えがなく、悠長に喋り出す長髪男……幻影か。


「悪かったな、可愛い後輩がちょっかいかけて。まだリタイアできないんだわ、大仕事が控えてる。そん時にまたな」

「チッ……」


連中は煙へと変わり、音声だけが頭に響くようになる。前回同様、視覚と聴覚が機能しない。これで逃げに徹したら追えないな……


 エメルの元へと戻ると、人だかりができていた。この騒ぎだ、無理もない。


「ごめん、逃げられた」

「そう……シフでも失敗するんだ」

「うっ、耳が痛い……」


「……じゃあもう行こうよ、私が出てくって知られたら、多分いろいろ頼まれる」

「結構薄情だね……」

「人的被害はないし……また戻ってこれるから」


……エメルなりに、心配はしてたのか。


「いざ……働かないために働きますか」

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