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盗賊少年と唐突の帰還

「い、一体何が起きたんだ……?」


 王様がイントゥリーグ王国との宣戦を終え、馬車の中へと入った。そこまではっきりと覚えている。


しかし、馬車へと足を踏み入れたら王宮だった。何を言ってるかわからないが、自分もよくわからない。


「その様子だと、一悶着あったようね」

困惑するなか、どこか聞き覚えのある麗しい声の方へと振り向く。


「よっ! ボロボロだなぁボウズ!」

「マ、マリア様!? それにリック相談役まで……!?」


会うのは王族会議以来だ。それでもここにいるということは王様の差し金か……


「……なるほど、お2人の仕業ですか」

「左様、余が悠々と姿を表せたのもこの2人のおかげじゃ」


転移魔法、魔法使いでも使える者はそう多くない。それも、馬車の入り口に合わせて見抜くことすらもできなかった……疲弊しているとはいえ、みすみす罠にかかったようなもので、ちょっと悔しい。


「流石は、歴代最凶の魔王を倒した方達ですね……これからの戦を考えると頼もしい」

「残念だけれど、そこまで期待しちゃダメよ。私達は裏方に徹するから」


「この2人も、サフィア同様に顔が利くし、それぞれ背負ってる民もおる。よって、秘密裏にお手伝いってわけ」

「ま、年寄りが出しゃばるのはよくねぇしな! 若者がどんどん頑張んねぇ!」


期待の主戦力として数えられないにしても、ありがたいことに違いない。転移魔法だけでも移動に運搬、時間と費用を大幅に削られる。いざって時は助けてくれるだろう。王様やサフィアが留守にして来れたのも頷ける。


 自分が潜入していたとはいえ、手配が良い……良すぎるくらいにだ。駆けつけてくれてタイミングも。ここまで至った経緯について様々な疑問はあるが、想定外のオニスに対して、まるで想定内のような対応をしている。事前に見当がついてなければ、ここまで手配はしない筈だ……


「……王様はオニスがカンダル王国側にいることをご存知で?」

「前にも言ったが、予測にすぎなかったよ。予測であって欲しかったけどね!」


「じゃあ"白バラ"が襲撃した時から疑ってたんですか……?」

「一応ね。ほら、プロとはいえ勇者と魔王を倒した者に勘付かれず、侵入と逃走できたのは構造や地理に熟知してないと厳しかろう?」


「うむ。我々が不覚を取ったといえ、気づいた時にはとても追いつけそうにはなかった。もしシフの生存確認が目的なら、被害がなかったのは説明がつく」

「クソッ! やはりあの時取り逃がしておかなければ……!!」」


「そう悔しがらんでもよい。過程はどうあれ、どうせ争い合う結果になったさ、オニスだもの。だからこそ、君達の実力をよう知っとる。深入りせんよう、諦めが早かったのはきっとそうじゃろ」


「……そこまで読めてたなら、言ってくれてもよかったのに」

「いや〜だって君、隠し事苦手じゃん?」


「「確かに」」

「ちょ、サフィアはともかく、ルビまで!」


「ま、それに動機がわからんかったしね。世の中つまんないからってここまでやるのは、あり得ないでしょ普通」

「「「確かに」」」


……ようやく納得がいった、王様がここまで用意周到に戦争を持ち掛けたのも。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。共に旅をし、相対した自分だからこそよくわかる。


何が何でも本気で戦わせようとしてくるなら、いつどこでかを指定したほうが、むしろ安全なんだ。


 全く、王様の知略には恐れいる。ルビを盗み出す計画の真の狙いは、水面下にいたオニスを引きずり出すこと。


つまりは、()()()()()()()()()()()()


「さて、こっからはお疲れのところ悪いが、明日にはシフにも任務へ出てもらう」

「……ま、こうなりゃとことん付き合いますよ」


サフィアが救援に来る前提だったとはいえ、ルビを死にかけさせた。もう2度させるわけにはいかない、少しでも勝率が上がるならなんだってやるさ。


「偵察や妨害は、あのまま潜入し続けてるアメトが担っているからいいとして、重要な課題は戦力補強じゃ。そこでシフには元仲間を連れ出してほしい」


「あ、そういえばアメトさん置いてきたままでしたね」

メイドととして同行したアメトさんを投げ飛ばしてから、一向に姿を見せないからすっかり忘れていた。まぁ彼女なら心配はない、期待以上の成果を出してくれるだろう。


「……おいおい、元仲間って裏切った戦士野郎のことじゃねぇだろうな? じゃなくてもおかしな話だぜ。まさか俺んとこで預かってるイヤドのことを言ってんのかい?」


表情を曇らせたリック相談役が食い気味に反応してくる。無理もない、なんせ人類の敵になろうとした人物だ。生まれ故郷の長で、現在も拘束しているからこそ、危険度はよく理解しているはず。


「安心せい、イヤドは選択肢に入れておらんわ。もう1人いるんじゃよ。何の罪も犯してない、ただっっただ実家に帰った者がな」


「えぇ、丁度僕も負傷しているし、彼女の力は戦争ともあれば必要不可欠ですから」


王様が言っている人物は見当がついてる。ていうかもう消去法でわかっていた。ルビの救出が上手くいけば、元々訪ねるつもりだった。


「必ずや、回復術師のエメルを連れて参ります」

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