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盗賊少年と姫の成長

「ひっどい有様だ……」

 駆け抜けながら目にするのは、崩れた落ちた建て物の残骸の山と、所々での火災。オニスの『災撃』は、正に災害級の一振りだ。仲間だった時に何度か見たことあるが、威力も範囲も上がっている。連発こそはできないが、驚異的な被害を生み出している。


そんな地形すら変えてしまう大技を、仮にも仕えている国でやるなんて配慮も忠誠心も、欠片もない。もしカンダル王国にそのままいたら、国が滅んでいたかも……


 少しすると、人だかりが見えてくる。その中にルビもいる。どうやら怪我人を介抱しているようだ。


「良かったルビ! 無事だったんだね!」

「うん……ってその腕は!? すごい腫れ……全身ボロボロだし!」

「むしろこれくらいで済んでラッキーさ。でもまさかこんなことになるなんて……」


「やっぱり、あの人がやったんだね……」

「ホント、ハタ迷惑な人だよ……っと」

「わっ!?」


ルビが無事で、緊張の糸が切れたようによろめき、ルビが駆け寄って支えてくれる。


「大丈夫!?」

「まだ平気さ……ごめん、服を汚しちゃったね、綺麗なままだったの……に??」


喋っている途中で疑問に気づく。ルビだって被害の真っ只中にいたはずだ。それが怪我はおろか、汚れ1つないのは腑に落ちる。


「そんなことより、まだいっぱい助けなくちゃいけない人が! この辺りは救出したけど、きっとまだ……!」


「……いや、そんな余裕はなさそうだ」

イントゥリーグ王と騎馬兵が続々とやって来る。この事態だ、おおごとって騒ぎじゃないだろう。一般人に紛れて、一旦身を隠す。


「これはこれは、ご無事で何よりですカンダル王女! ここは危険です、直ちに我々と避難を!」

「結構です。それよりも早く民を救出しないと……!」


「しかし、いつまた賊がこのような大規模破壊をされるかもしれませんぞ! この後始末は我らが補います、ただカンダル王女に万一のことがあると思うと」


ーーよくもまぁ、命を狙ってしっちゃかめっちゃかかき回しておきながら、いけしゃあしゃあと……


「こんなことをしたのは……貴方が引き抜いた我が国の元戦士長であり、私の命を狙っているのでしょう……?」


ルビの一言に眉をひそめるイントゥリーグ王。自分の存在をオニスに知られた以上、こちらの狙いは台無しだ。もう馴れ合いは不要と考えたのだろう。


「はて……おっしゃってる意味がよくわかりませぬな。いや、攫われてこんな目に遭ったのだから、気がおかしくなるのも必然か」


「黙りなさい!!」

ルビの張り詰めた一声で、この場にいる全員が息を呑む。


「何度も襲撃をけしかけ、そのうえ求婚や招待などに振り回され……こんな事態になってまで私の命を狙い、自国の民にすら気をかけないのですか!?」


「被害妄想も甚だしいものです。ご乱心になられたお子様を鎮めるのも、大人の役目ですかな?」

「私は至って正常に、憤りを感じているのです。今までの企みだけでなく、目前にある多くの命を差し置くなど、貴方には失望しました」


ルビの発言から、イントゥリーグ王と敵対する気満々だ。陰で小細工をされるよりは、踏ん切りがついていいかもしれない。話してる間に先手を打っておこう。


「此度の求婚を含め、今後のお付き合いもお断りさせていただきます」


「やれやれ……感情任せになるとは。私は前の方が好きでしたよ、大人しく人の気を伺ってーー」


イントゥリーグ王は間を取り、気味悪く笑いながら語る。


「ーー扱いやすくて丁度良かったのに」


「……ついに本性を現しましたね」

「えぇ利用できなければ、友好的にするのも無意味かと。それに、この状況で粋がるのは無粋でしたな。貴女を守る者はいない、正に王手だ」


「それは貴方にも言えることだ」


次々と馬から落ちていく兵士達。イントゥリーグ王の周囲にいた兵士以外、音もなく片付けておいた。


「……何者だ」

「盗賊さ、貴方が引き抜いた戦士の元連れでね」


「何、奴の……! つまり何者なんだ……?」

「知らないんかいっ!?」


てっきりオニスと情報を共有していると思っていたが、まさか教えてすらないのか……?


「えっとですね、魔王を討伐の時に勇者サフィア達と一緒にいた盗賊で…….」


「あぁ、確かそういえばそんなのもいましたね……いやはや、勇者、戦士、回復術師、魔法使い、それに加え盗賊とかいう小汚い犯罪者がなんでいるのか、甚だ疑問に思っておりましたぞ。そもそも職業のカテゴリではなくないか?」


「なっ!? よくもまぁそんな正論を……卑怯なっ」

「気にしてたんだね……」


名乗りを上げるもピンとこずに、更にディスられるとは……もう何もかもイントゥリーグ王が悪い。


「まぁ広場での手際と今の早技を見たら納得がいく。さしずめ、カンダル王の隠し切り札といったところですな! しかし、その手負い……あの大馬鹿者と一戦交えたか。ならばここで戦力を削る良いチャンスだ」


「どうかな、この状態でもたかだか数人なら容易い」

「ならば、更に増やすまで……総員、()()()()()()()()()()()()


イントゥリーグ王が命ずるとともに、気絶した兵士達が無理矢理立ち上がっていく。


「……魔刻印か!」

魔刻印による強制使役。立ち上がる兵士達は殺気立ち、にじり寄ってくる。もう既に意思はない、命ずるままの人形のようだ。


「むごい……やられた兵士にすらこんな仕打ちを……貴方に人の心はないのですかイントゥリーグ王!!」

「無論兼ね備えておりますが、良心での発想だけでは王は務まらぬ。悔しければ、この状況覆してみては?」


「……わかりました、手荒になりますがご覚悟を」


 ルビが手をかざすと、瓦礫が宙に浮かんでいく。


「これはまさか、魔法!?」

物体を自由に操作できる魔法……潜入してる間に習得していたとは……


「言ったはずだよ、『守られる王』じゃなくて『守る王』になるんだって!」


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