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盗賊少年と戦士の攻防

「ヒャッハー!!」

「このっ……!」


世紀末の暴徒のような奇声を上げながら、襲いかかってくるオニス。振り下ろしされた斧は轟音を上げながら、大地を叩き割る。


辛うじて後ろへ退避したが、当たった思ったらゾッとする。喰らえばひとたまりもない。明らかに殺しにかかってきている。


「……ルビ、まずは少しでも距離を取る。本気で飛ばすからしっかり掴まっててね」

「は、話し合いでどうにかならないの!? 仲間だったんでしょ!」


「仲間だったからこそ、立ち止まらないってわかるんだ。旅の時も、人質を平気で見殺しにしようとしたり、命乞いも意に介さずトドメを刺す……彼の惨虐性は天下一品なんだ。自分が楽しければどこまでも」


「……じゃあ無理だね……」

「その通り。まずは人目の多いところに行こう」

「普通逆じゃない!?」


「いーや、君だけは騒ぎに乗じて逃げるんだ。人を隠すなら人の中って言うしね」

「え……シフ君は……?」

「僕がオニスを引きつける。君を狙う理由が僕を本気にさせることなら、その前に存分に付き合ってやるさ」


 ルビを狙われながら戦うよりはずっといい……それでも危険な賭けになる。


「ルビはこっそり戻ってアメトさんと合流するんだ」

「わ、わかった!」

「賊がいたぞ!! 隊列を組め!! 生死は問わなくていい!」


「くっ……! ここからって時に……」

前方に現れてきたのは大勢の兵士達。ただでさえオニスから逃げようというのに。今の衝撃で駆けつけられたか……


「狙撃部隊は狙い撃て! その間に近接部隊は一気に距離を詰めーー」


「邪魔すんじゃねぇ! 引っ込んでろカス共!!」

「ま、まさか!」


「「「「「うぎゃあああ!?」」」」

 危機を察知して上へと飛ぶ。激昂したオニスは、何の躊躇いもなく兵士達を一撃で薙ぎ払っていく。


「「うわぁ……」」

 敵である兵士達には不憫だが、ちょっとでも気を取られてるうちに離れるとしよう。


「おぉっと、逃すかよぉ!」

「簡単に逃げられるとは思ってませんよ!」


 オニスに向けて煙玉を複数投げる。勿論、煙幕を張っても先程と同様に払われてしまうだろう。ただの煙玉だけなら……!


「目くらましが通用するとでも……お?」


ドーーンッ!!


 爆音と爆炎がオニスを包み込む。ダメージはないだろうが、一瞬でも視界から消えることはできた。建物に入りながら少しでも距離を稼ぐ。


「……やるじゃねぇか、1つだけ爆弾を紛れさせるとは。オツムの方は成長してやがる」


斧を盾代わりにして、爆発を凌ぐオニス。ニヤリと笑って、後を追いかけていった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「おい、ここから近い外壁の方で何者かが暴れてるらしい!」

「マジかよ!? ついさっき噴水広場でトラブルがあったっていうのに! 他国の姫さんが来てるのに、今日は一体何が起きてんだよ!」

「市民はこの場から離れろ!!」


 慌てふためく一般人に、警告をしながらも僕達を探す兵士達が入り乱れている。


「うん、ここで別れるのがベストだね……」

ルビを降ろし、変装用のウィッグと一般的な服を渡す。混乱してる中に混じってもらおう。


「兵士達はたくさんいる。くれぐれも気をつけて……最後まで一緒にいれなくてごめん」

「ううん、このままいたらシフ君の足を引っ張っちゃうから……絶対にまた会おうね!」


「勿論。また帰ったらルビの手料理がご馳走してほしいな」

「う、嬉しいんだけど、戻ってこない人のセリフみたいで不安……」


……まるで死亡フラグを建てたように言ってしまったが、あながち間違っていない。足止めはできても、勝って生還できるとは思ってないからだ。


 オニスとは組手で一度も勝てたことがない。最初のほうは負け続けていたが、旅の終わりでやっと引き分ける程度だ。それでも、パワーと戦闘センスはあちらの方が上だ。


 おまけに武器の相性も悪い。彼の持つ武器は呪いの大斧。絶対に壊れない効果と、使用者以外は扱うことのできない重量になる呪い。自分が持ってる呪いの短剣同様、デメリットがメリットになりうる呪いの武器。


すなわち、オニスの武器は破壊することも、奪うこともできない。ただでさえリーチで劣るのに、オニスの剛腕で振るえば、直接当たらずとも被害は尋常じゃない。威力、攻撃範囲ともに厄介だ。


 逃げ惑う人々のか、大通りの真ん中をゆっくり歩いていく。死地へと向かう足取りだが、不思議と恐怖はない。魔王との決戦前と同じだ、怒りが懸念を上回っている。


「よう、あの女は捨てたか」

「嫌な言い方をしますね……ただ、あなたと全力でやりあう以上必要な措置でしたから」

「ほ〜、いい心がけだ。それに……いーい殺気と眼をしてやがる♪」


何故そんなに楽しそうなのか理解に苦しむ。こちとら、ルビの命と国の未来が懸かっている。それをどうしてオモチャで遊ぶかのように……!


「……馬鹿は死んでも治らないなら、死ぬしかないですよ」

「なら早速死合おうぜ!」


罵倒を物ともせずに無邪気に笑う狂戦士。ダメだコイツ、早くなんとかしないと……


 お互い武器を手に持ち、悠々と距離を詰める。そして、目と鼻の先まで近づいた。


「待ちわびたぜーー」


オニスが片手で斧を振り上げる。豪風とともに、土砂が激しく舞い上がる。


「ーーホント相変わらず、躊躇ないですね」


 オニスの真後ろに位置取り、愚痴垂れる。それに気づいたオニスが振り向こうとするのに合わせ、顔に向けて短剣を突き刺す。


擦りながらも反撃しようとするオニス。たまらず、建物の上へと避難する。


まともに打ち合えば、こちらが力負けする。だからこそ、まともには戦わない。


唯一勝るスピードで、徹底的なヒットアンドウェイを繰り返す。


 見下ろすオニスは、頰から血を流す。傷は浅いがダメージを与えただけ及第点だ。


「クク……ハーハッハッハッ!! いいねぇ! やっと歯ごたえのある奴にありつけた! 修羅場をくぐったかぁオイ!」


「えぇ、魔王とね。後イヤドに……あ、サフィアも。そして貴方も……これから加わりますよ」

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