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盗賊少年と求婚の経緯

 事の発端は、サフィアがダンスを誘う10分前に起こっていた。


カンダル王がホールにて、他国の王達と団欒しているなか、イントゥリーグ王との会話から始まった。

「これはこれは、カンダル王よ! 今よろしいですかな?」

「いいですとも。さしずめ、会議での弁明といったところじゃろ」

「あいた! お見通しでしたか! ですが、謝らなければなりませぬ! 誰がどう見ても出過ぎた発言をしていたのは事実!」


「……わかってて言っておった…いや言わねばならなかったと?」

「フハハ! 本当にカンダル王は話がスムーズに進みますなぁ! ここだけの話、十数ヶ国から不満の声が上がっておりましたので!」

「あちゃー、そんなにおったか」


「内容は会議で言った通りですが、代表として述べさせていただいた所存です。個人的な場で進言しても、宣伝にすらならない。最も影響力のある王族会議だからこそ、効果があったのです!」


「ほう。そして、おぬしの株が上がり、他国から支持を得るシナリオの完成か」

「フハハ! ご冗談を! 1番敵に回したくない国にヘイトを集めてまでのメリットはありませんぞ! 1番大事なのはカンダル王及び、勇者の意思を世界的に認知してもらうことですから!」


「どーだか……おかげさんで、下手なことはできんよなぁ。いやね、する気はないんだけど、どうにも好戦的なのが潜んであるからのう」

「競いたがるのは人間の性でしょうからな! 数値化による比較、ランク付け、例を挙げればキリがない! ……若いカンダル王女もさぞ、競争率が高いのでは?」


「自慢の娘でのぅ、おかげさまでハートを奪いに来る輩は後を絶たんわい」

「それは興味深い! 少しお話ししても?」

「ダメって言ってもどうせやるんじゃろ?」


「つくづく、カンダル王には読まれてしまいますなぁ! それではお言葉に甘えて!」

「……くれぐれもちょっかいはかけんように」


 イントゥリーグ王は、カンダル王の元から離れ、カンダル王女ことルビ姫に近づいていく。


「こんばんは、カンダル王女。お隣よろしいかな?」

「あ……えぇ、私でよろしければ」

「感謝を。しかし、お美しいですなぁ! 会議のときから思っておりましたが、間近で拝見すると想像以上! 将来有望な美貌を持つでしょう!」


「お、お褒めにあずかり光栄です。イントゥリーグ王は大胆不適ですね」

「おや、この私が??」

「はい、躊躇せず肯定も否定もできる。王族会議の間から思っておりましたが、間近で拝見すると想像以上の存在感でいらっしゃいます」


「フハハ! 褒め言葉を同じように返してくるとは! ですが、やはりそう言われるとあなたも私の発言に疑問をお持ちかな?」

「疑問……確かにそうですね……()()()()()()()()()()()()()()()のでしょうか?」


「……おや? 私の発言ではなく、会議の締めくくりについて言及したいと?」

「えぇ……あ、すいません! てっきりイントゥリーグは意図あっての発言かと……」


「いや、続けてくれたまえ」

「えっと、サフィ……勇者様の力を脅威と認識している国々があるなか、勇者様が他国に侵略しないと宣言して納得されたのは、実質イントゥリーグ王だけだったので……勿論、あの場で宣言した影響力は大きいですが……」


「ふむ……その通りである! あの後もう一押しして何故条約を結ばなかったのか、と影で責められましたよ! 全く、会議では威張らないくせに、文句だけは王の器に値する情け無い王達もいるものだ!」

「あ、あはは……」


「おや失敬、つい愚痴ってしまいましたな……ではカンダル王女、あなたはどうしていけば、この問題を解決できるとお考えで?」

「わ、私のですか?」

「是非お聞かせ願いたい。それとも特に案はなく、妄言だけでしたかな?」


「い、いえ! 私が思うに、次期魔王の対抗のためにも、各国で戦力の確保は必要不可欠です。そこで勇者様を筆頭にした、育成機関を設けるのです。各国からその候補を募り、実力をつけたら自国へとお帰りいただく……これが私の発案です! 各国での武力の均衡を図りつつ、人類を勇者という一枚岩にいたしません。勇者様も会議で、仲間と支援があったから魔王を倒せたとおっしゃっていましたので……」


「これは驚いた……面白い試みですなぁ。ふむ……なかなか良い反論が思いつきませんぞ……いや強いて言うなら……」


イントゥリーグ王は意地の悪い笑みを浮かべ、次のように問いをかける。

「はたして、そう上手くいきますかな? 例え各国で育成者の定員を決めても、買収や引き抜きなどされたら、各国のパワーバランスは総崩れ……カンダル王女にはまだ早いかもしれませんが、大人とは狡猾ですぞ。それが(まつりごと)なら尚のことに!!」


ルビ姫は一瞬たじろぐも、必死に食らいつく。

「それは……自国を裏切れず、政に長けた者が参加すればいいのです」


「はて、そんな者が必ずしも各国にいるとは到底思えませんなぁ?」

「いえ、必ずいます!」


ルビ姫はまっすぐイントゥリーグ王の目を見て、力強く言った。


「我ら王族です」


イントゥリーグ王は面食らったかのように惚けるも、徐々に口角が上がり、笑いだす。

「……クク、ブッハァハッハッ! これは愉快! 痛快! 故に爽快!! なんという大胆な発想!! だが、理に適ってはいる! 根拠のない理想論を語る、脳内お花畑のなんちゃってお姫様かと思ったら曲者もいいとこだ!!」


「え、えっと……あ、ありがとうございます……?」

「気に入った!」

「はい?」


「カンダル王女よ、私の妻として迎えたい!」

「はい!?」

「カンダル王女よ、私の妻ーー」

「に、二度言わなくても聞こえてはいます! ですが、こんな所で高らかにご冗談を申されますと、その……」


「冗談なんかではなく、この場だからこそ、あえてプロポーズをしたのです!」

「え、えぇ!?」


「……ルビ……?」

 求婚という噂をかきつけ、人だかりに来てみれば、中心にいるのはまさかのルビだった。


 何故そうなったのか、今後どうなるのかと驚きと不安が混ざるなか、いの1番に王様が割って入っていく。


「オイオイオイ、何言っとんじゃイントゥリーグ王よ。そもそもルビは子供、結婚なんぞ早すぎるぞ!」

「ご安心くだされ、流石の私も年齢はわきまえております! 何も今すぐにというわけではない、言わばこれは結婚相手として先約を入れたという形です」


「いや、だとしても、おまっ、ロリコン?」

「フハハ! 直球ですなぁ。だが、魅力を感じたのは間違いない! このお方は、類い稀なる王としての素質が既にあるのです!」


 あまりの衝撃か、王様はちぐはぐになりながらも何反対していく。あんなに取り乱した王様は見たことがない。


 気持ちは痛いほどわかる……だが、ここは王族の場。完全に拒否れば、イントゥリーグ王国との不和だけでなく、何十ヶ国にどう思われるか、わかったもんじゃない。


「ちょっとアイツの首をはねてくる」

「ちょっとサフィア!?」

 隣で殺意を剥き出しにし、瞳孔ガン開きのサフィアが剣の柄に手をかけ、歩み出していくのをすぐさま止めに入る。サフィアはサフィアで、相当お冠だ……


「あなたは勇者なんですよ! 会議で脅威とまで言われ、自分自身でそのイメージを払拭したのに、今度は自ら失態を招く気ですか!」


「問題ない、私は既に変態だ」

「安心できなっ!? あなたが国際関係に無関与だから、存在を認められてるんです! なのに、プライベートなことにまで関わったら非難の嵐ですよ!」


「いやいや、そんなことより未成年者に性的願望を向ける人間なんぞ、この世から滅んだほうがいい」

「……自殺する気ですか?」

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