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盗賊少年の平和は続かない

「ハァ……」

溜め息をつきながら、夕暮れに酒場の前に立つ。成年になるまで後8年あるというのに、酒場まで来たのは、カンダル王国軍に呼ばれたからだ。


なんでも、どうしても頼みたい仕事があると手紙が来て、詳細をここで話すと。こういった依頼は緊急事態以外やめてほしいと、きつく言っておいたのだが、それでも声がかかったということは、緊急なのだろう。


つまり、相当厄介なのだ。全然乗り気にはなれない。だが、世界の危機だったら自分の身も危ない。それに、高級宿屋のパスポートを取り上げられる手段に出られたら最悪だ。


なので、話だけでも聞かなければならない。渋々酒場のドアを開ける。


「いらっしゃいませ〜!……あ、ごめんね僕ぅ、ここは子供が来るような所じゃ……」

店員のお姉さんに声をかけて止められる。身の丈が自身の半々以下な客が来店したのだ、当然こうなるだろう。


「ごめんなさい、でも人と待ち合わせをするだけで、何も頼みませんから」

「うーん……じゃあ特別だよ、お好きな席へどうぞ!」


笑顔で対応し、なんとか許され、1番奥のテーブルへと向かう。


「なんだぁ、ガキが大人のフリかぁ!」

「お酒はダメだけど、ママのおっぱいはいいでちゅよぉ〜、ギャハハ!」


向かう途中、2人組の男達に笑い者にされる。ただ、騒ぎを起こすと面倒なのでスルーする。それに、悪口を浴びるぐらいなら、可愛いもんだ。


奥のテーブルへとたどり着き、座って来るのを待つ。すると、誰かが声をかけてきた。


「おいおい、ガキが来るとこじゃあねぇぞ……大人を舐めてんのか?」

声をかけてきたのは、チンピラの男。どう見ても王国軍の人ではない。かといって、酔っ払って絡んでるわけでもない。


声のトーン、歩き方、表情、どれを見ても正常だ。おそらく、カツアゲをしたいのだろう。子供となると、下手に見られる。今までの冒険で何度も経験してきたことだ。


「不快に思わせたなら、申し訳ありません。人を待ってるだけで、用事が終わったら消えますので」


騒ぎは起こしたくないので、穏便に済むよう謝っておく。これで気が鎮まり、引いてくれれば幸いだ。


「あぁ? 今すぐ消えろよ。さもなければ痛い目逢いたいか、あぁん?」


まぁダメだろうとは思っていた。仕方ないので強行手段だ。


絡んできたチンピラはポケットに手を入れる。が、

「あ、あれ? どこしまったっけ……?」

チンピラは体中をまさぐり、何かを探している。


「ひょっとしてこれですか?」

ナイフをくるくると回して見せつける。隙だらけで、盗むのは容易だった。


「なっ!? きーー」

喋り始めたチンピラの首にナイフを突きつけける。


「声を上げるな、静かに回れ右して立ち去れ。それ以外の行動をとれば殺す」

声にドスを利かせて囁き、鋭く睨みつける。周りに悟られないよう、チンピラを盾にして見られないようにし、最低限の殺気を放つ。


チンピラは全身に冷や汗を流し、硬直する。動きそうになかったので、ナイフをしまい、席に座る。そうすると、男はゆっくりと振り向いて、去っていった。


「あ、ナイフ返し忘れた……まぁいっか」

わざわざ返しに行っても、驚かれるだけだ。それに、もう来たみたいだ。


「お見事ですね、シフ君。流石は最年少の魔王討伐者」

「アメトさん、やめてくださいよそれ。バレたら大変なんですから」


現れたのは、黒紫の髪に、黒いマスクで鼻から下は隠れた女性、カンダル王国隠密部隊隊長のアメトさんだ。


「私としては公表してくれれば、ものすごく仕事が減るんですが。というかシフ君、隠密部隊に入りませんか? 隊長の座、譲りますよ」


「お断りです! アメトさんが楽したいだけでしょう。そもそも、何で酒場なんですか!?」

店員にとめられ、悪口を浴び、チンピラに絡まれる。これでストレスがないと言ったら嘘になる。理由は知っておきたい。


「私がこの店の常連で、スタンプカード持ってるからです。すんませーん! エール大ジョッキと、唐揚げ下さーい!」

「理由くだらなっ!? 依頼もくだらないなら帰りますよ!」


「まぁまぁ、唐揚げあげるので落ち着いて。それに依頼内容はしっかりしたものですから」


「本当ですか……あ、美味しい」

少しイライラしてきたので、遠慮せずに食べる。想像よりも美味しかった。またいずれここに食べにこよう。


「本当ですとも。それにシフ君にも少し関係しています」

「……そうなんですか?」

参ったな、関係があると言われると、恐らく魔王軍関連だろう。残党狩り辺りかな……


「実を言うと、シフ君が魔王を倒したことで」

やはり、そのようだ。


「王国内で魔王軍討伐、対応に追われてたお偉いさん達が暇になり」

「へ?」


「次の王候補になるために、暗躍しまくってるのです」

「僕関係ないじゃないですか!?」


「いや、でもシフ君が倒しちゃったので」

「倒せって言ったのはそっちでしょう!?」


「まぁ、最後まで聞いてください。代々のカンダル王族の血を引いてるのは、現国王とその娘、ルビ姫様だけなのです。それで、次の王候補であるルビ姫様を消そうとして、執拗に狙われてるのです」


「……それで僕に何をしろと?」


「狙う輩を特定して裁くまで、ルビ姫様を匿っていただきたい」



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