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盗賊少年と全裸問答

「ふぃ〜、極楽極楽〜」

 王宮の大浴場にて、大きく息を吐きながら王様が湯船に浸かる。

「あ〜、いいですね〜これ……しっかし、こんなに広いのに、僕達2人だけで使うとは贅沢ですねぇ」

思わず声に出してしまう程、気持ちがいい。流石は王宮のお風呂だけある。 公共の温泉施設と比べても遜色ないくらい広い。それを貸し切りのようなものだ。


「……それで、人払いをしてまでのお話とは?」

「あー、マサイって大臣いたじゃん? 余の娘殺そうと暗躍して、君が証拠を盗んだ奴」

「えぇ、直接会ってはないですが……まさか、また何か企てるとか……?」


「いやね、刑務所にぶち込んでたんだけど、殺されちった」

「っ!?……まさか、まだ裏で手引きしてる者がいると……何か情報を引き出せてたんですか?」

「いんや、実はマサイに魔刻印が付いてたんよ。首謀者や協力者について何も喋れんようにね。勿論、解呪を試みていたんじゃが……」


「……その前に口封じとして、殺されたと」

「そゆこと。余の見立てではもう王宮内にはいない、恐らく外部の者じゃ。大方、後継のルビを始末して、それを王族会議でボッコボコに責めるつもりだったんじゃろ。こんな(うち)でも、魔王を倒したという功績持ちの大国だからね。まぁ君のおかげなんだけど」


「……人類共通の敵を倒したことで、今度は人間同士の争いになるとは」

「今は可愛い小競り合いで収まってるけど、戦争までいっちゃったらアカン。そのためには、王族会議まで弱みを見せられない……本当は、君みたいな若者にあんまり負担かけたくないんだけどさ。充分過ぎるくらい、働いてくれたし」


「……戦士隊長のオニスさんはどっか行っちゃったし、外部から募った2人も色々ありましたからね……」

「そうなんよ〜、まぁというわけでさ……」


王様は湯船から勢いよく立ち上がり、床に正座で座り込む。


「また、君の力を貸してはくれまいか」

 王様はそう言いながら、深々と頭を下げた。


「なっ!? そんな、頭を上げてくださいよ王様!?」

「それより、返事ホシイナー」

「も、勿論引き受けますって、だから頭を上げてください!!」


「やったぜ」

ニカッと笑いながら、王様は頭を上げてくれた。


「ハァもう、一国の王が盗賊なんかに土下座なんて……」

「中年のフルチン土下座で、娘が守れるなら軽いもんよ」

「自分で価値を下げないでください! もうちょっとこう、威厳というか、プライドというか……」


「そんなもんで、娘や国が滅んだら後腐れもないじゃん。それに、相応しい行いをしたと自負してるよん」

いつもと変わらないおチャラけた笑顔だったが、とても重みのある言葉が心に響いた。


 この方は、1人の人として素晴らしい。だからこそ、王として成っていると。ならば、自分もそれ相応の受け答えしなければならない。いや、そうしたいと願った。


僕は片膝をつき、頭を下げ、心の底から言葉を言う。


「必ずや、王のご期待に添えるよう尽力いたします」


 光栄だった、嬉しくてたまらなかった。こんな自分に、頭を下げるのが相応しいとすら言ってくれたことに。報いたかった、せめて返事だけでも改めたいと。


「フルチンでやると、くっそシュールやね」

「あなたが最初にやり出したんでしょうが!?」


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