白い花びら
「ルーイ。それで私は何処に行けば良いのかしら?」
「クリス様から言伝がありました。此度は非公式の挨拶になるため、雛菊宮にて会が行われることになると。十一時頃には始めたいそうです」
雛菊宮……、王城全体の構造を一度頭に浮かべる。
王都とは王城の城下町で、また王城とは王都によって囲われている堀と城壁の更に内側を指す広い言葉だ。その中には様々な儀式や外交、あるいは政務を行う宮殿や、国王・王妃両陛下の住まわれる御所などがちりばめられている。
ちなみにクリスの住居は第一王子である事から水仙宮と定められ、テオの住居は第二王子であることから鈴蘭宮と定められている。
一方でクリスの婚約者となった私は、次世代の王妃として王城に居るため、住居は百合宮と定められていた。これは『次世代の王妃』が住まう場所として定義されているためだとはルーイの言。庭に花壇を置いて貰ったり、ちょっとしたお茶会のできる屋根付きのスペースを準備して貰ったりしたのは、大体この百合宮である。
では、雛菊宮はどのような施設なのか?
「ルーイ、私は疎いのだけれど。雛菊宮はどういう施設だったかしら」
「小規模な接待を行うためのものですね。さらに補足するならば、かなり内側……」
「つまり非公式の会談を行うための場所とみて良いのかしらね」
「はい。公式の記録的には、両陛下は『お散歩』となるようで」
散歩の途中で偶然立ち寄った雛菊宮で誰と出会うかまでは記録されないと。ルーイを連れていっても問題は無さそうね……。
「ルーイにも挨拶をさせたいから、着替えをお願いしたいのだけれど……、非公式。非公式か」
「はい。あくまでもルシエ様お付きの一人として扱われるのが妥当かと」
「そうね……嘘ではないし、そういう形で動いて貰いましょう。けれどメッセージは与えたい。となると……」
「ヘアピン、で、宜しいですか?」
「そうね。そうしましょう」
はい、と頷いて、ルーイは取り出したヘアピンを使って己の前髪を留める。そのヘアピンには卵の形のアクセサリーがついている――見るものが見れば一目で、それが意味するルーイの立場を理解出来るだろう。
はたしてエリザベスとやらは、それに気付くだろうか。気付いた上でどのように反応するかも見ておきたいけれど、まずはそこからね。
焦らない、焦らない。
「……それにしても、ルーイも少し髪が伸びたかしら?」
「定期的に斬ってはいるのですが……。お気に召さないようでしたら、短くして参ります」
「いえ、そのくらいの方が私は好きよ」
少し色の濃い銀の短髪。緑を孕んだ黒い瞳。
顔つきも端正といって差し支えなく、将来的にはきっと色男になるだろう――今のところはおよそ十歳といった所だ、クリスの言うとおり『小僧』に過ぎないし、体付きもまだまだ子供ではあるのに、不思議とそう確信させるのだから面白い。
「むしろ私の髪を今度どうにかして欲しいわね。伸びてきて面倒になってきたし、バッサリいきたいわ」
肩甲骨をくすぐる程に伸びた私の髪は、戦闘術を嗜む私にとっては長すぎる。せめて肩のあたりまでに斬ってしまいたいところなのだけれど……、
「そういうわけにもいきません。その点については、グェンドリュンヌ様に釘を刺されていますので」
グェンドリュンヌ……王妃様。
ルーイの奴、私よりも先に王妃とホットラインを構築したのよね。確か入場してから二日目で。その手腕、手管は間違い無く一級品だけれど、それにほいほいと応じる王妃様にも多少の不安が残るわ……じゃなくて。
「将来の王妃たるもの、髪型にも制約が掛かるので、今からそれに慣れておいて欲しいとのことでした」
「……やれやれ。自分の髪さえ自分の意志でどうとも出来ないとは、いよいよ婚約者という立場も面倒ね」
「それが権力というものでしょう」
「いいえ権威よ」
「同じ事です」
確かにね。
頷けばルーイが時計に視線を一瞬向ける。私も釣られて視線を向ければ、十時二十分。未だ少し早い、けれどそろそろ移動しておいた方が自然だろう。
すっと私は手を差し伸べる。
「ルーイ。少し『散歩』に出るわ。着いてきなさい」
「かしこまりました。お部屋の警備は既に手配済みです」
「偉いわね」
「予定調和ですので」
身も蓋もない事をルーイは言って手を取るって。
さて、それじゃあ行きましょう。
部屋を出て警備にきた騎士に後を任せ、そのまま百合宮を後にする。
あまり他人とすれ違わないのは百合宮には私かルーイが呼ばない限り、あまり人が来ないからだ――来るなと言った覚えはないのだけれど、遠慮されているし警戒もされているんだろうなあ。
変な政争に巻き込まれたくもないので、現状は私にとって都合も良かったんだけれど……、テオも婚約するとなれば話は変わる。私の勢力を作っておく必要は、やっぱりあるでしょうね……。
王城の敷地内をルーイと共にゆっくりと歩く。
時折すれ違う人たちとは軽い挨拶だけを交わして――ゆっくりと歩みを進めて、そして雛菊宮へと無事到着。
「ルーイ、時間は?」
「十時四十七分」
「そう」
もう入ってしまおう。
そう決めて、雛菊宮の門を眺める。門番をしていた騎士は、私とルーイに敬礼を向けていた。……この騎士は事情を知っているわね。そりゃそうか。
「ご苦労。今、誰がいるか分かるかしら?」
「小官には把握しかねます」
「そう。ありがとう」
把握しかねる……箝口令か。
ルーイと一緒に中に入ると、すぐにその声は聞こえてきた。
「……わあ、とても綺麗。やはり王城と言うだけのことはあります、飾られている花もそれを飾り付ける花瓶も、そしてそれらを取り巻く調度品の全てが高級品。なのに不思議と質素な感じがするのは、センスなのでしょうね。全く、お父様にも見習って欲しいことでした」
ええ本当に、あの馬鹿親父のせいで私たちがどれほどの苦労をしたのか、地獄だか天国だかは知りませんが、その請求書をあの世だろうがなんだろうが送りつけてしまいたいところです、とでも言いたげな声音だった。
また随分と濃い個性をもった女性の声ね……そういう言外な部分まで他人に感じ取らせてしまうのに、異様なまでに嫌味がない。あんまりにも透き通りすぎた、本音の言葉だからか。あるいは別の術中なのか。
声のした方に視線を向ける。あの部屋の中かしらね。
少し躊躇し、それでも歩みを進めてゆく。ルーイは私を止めなかった、つまり間違った行動ではないのだろう。
かつん、かつんと扉に近付き。
「ルーイ。扉を開けてくれるかしら」
「かしこまりました」
ルーイに頼んで扉を開けて貰うと、扉の向こうの広い部屋には、白いドレスを纏った黒髪の少女が一人と、そのお付きだろうか、使用人らしき女性も一人。お付きの方はそれなりに腕が立ちそうね……本人は子ウサギにも負けそうだけれど。
「ごきげんよう……ええと、お初にお目に掛かるのかしら。リュシエンヌ。リュシエンヌ・ニ・アンタンシフよ」
「ああ! これは大変失礼を。社交界にはあまり慣れておりませんので、どうにも勝手が分からなくて……」
「お嬢様。名乗って下さい」
「はっ。そう、そうよね。ありがとうソーン」
お付きの名前だろうか?
聞き覚えは……無いけれど。ルーイにチラリと視線を向けると、ルーイはすっと腕を翻した。『知っている』、のサイン……、少なくともルーイは彼女を知っていると。
「私はエリザベス・フォンデシオンと申します。お初にお目にかかります」
少し緊張した面持ちで少女、エリザベスは言った。
長い髪の毛はさらさらと流れ、艶やかにその黒を深めている。
少し子供っぽいところは残っているが、既に美人と言って差し支えはなく……なるほど、テオの好みでしょうね。
自然と握手を交わす。握手を交わせたと言う事実が、彼女の在り方を多少なりとも伝えてくるようだった。
「あまり緊張なさいますな。ここに誰が来たところで、今日は偶然なのです」
「そ、そうですね。そうでした」
名目上は、そうなる。
「相も変わらず狩りでもしているかのような物言いだな。ルシエ。だめじゃあないか、リザが怯えてしまうよ」
「……あら。それは失礼。けれど怯えさせたのは私ではなく、どちらかというとテオ様、あなたのように感じますわ」
「はいはいやめやめ。お前達の剣呑な空気に飲まれただけだよ。ようするに『どっちも悪い』がこの場合は正解だと、俺にだって分かるのだ。お前達に分からぬわけもあるまい」
だからこのように、テオドール王子とクリストフ王子が揃って私の背後からやってくるのも偶然なのだ。
クリスの言い振りに、テオは私を見てすっと表情を緩める。私も同じくそれに合わせて、仲直り……というより、ここまで全てが仕込みなのだが。
尚、クリスとテオはやはり見た目が似ている。
ただ、比較的顔つきが勇ましさに寄っているのがクリスで、髪を少し長く、そして穏やかな印象に寄っているのがテオというだけ……それでも、この二人を見間違えることはないだろう。それほどまでに似ているのに、不思議と印象が違いすぎる。
「やあリザ。今日は一段と美しいね」
「ありがとうございます、テオドール殿下。今日は以前殿下に戴いた、白い花びらのドレスで参りました」
「よく似合うね。やはり君の黒い髪には、白がとてもよく似合う」
…………。
白い花びらのドレスを、王子が婚約相手に送る?
確かそれって、純潔を守っている女性のそれの使用権を主張するとかいう……。いえ、口に出してはいけないわね……。
「なんだ。テオのことだ、疾うに手を付けていると思ったが、未通女か」
「おぼこ?」
しかし私の考えは空気を読まないクリスによってぶちのめされた。
そして意味を知らないらしいエリザベスはきょとんと言葉を繰り返している……ソーンと呼ばれた使用人らしき人物は多少頬を赤らめていて、こちらは理解しているようだった。
「クリス様。奥ゆかしい言葉をお選びになったことは評価しますが、多少は場を弁えて下さいましね」
「なあに。この場は所詮非公式、ここで起きたことは記録されぬ事さ。多少言葉が荒くとも、誰も咎めることはない。そうだろう、テオ」
「……ええ。さようで。すまない、リザ。後で兄上には私から強く言っておこう」
「は、はあ。ありがとうございます……、で、よろしいのでしょうか?」
わからない、といった様子でエリザベスは首肯する。
彼女の態度から、だから私は読み取ってしまう。
この女、天運を味方に付けた天然だわ。
「なあ、ルシエ。俺は何か間違えたか?」
「そうですわね。場と人を弁えていなかった点を除けば、それほど大きな間違いはしておりません」
「……すまない」
「謝る相手とタイミングが違いますわ」
さすがにまずいと思ったようだけれど、その謝罪は私にされても困るものだ。あとでテオにしっかりと絞られるがいい。……まるで悪役のような事を考えてるわね、私。
「ああ、揃って居るようだね。いや、ただの偶然ではあるが」
そして。
透き通るような男の声がする。
エリザベスとそのお付きを除いた面々は一斉にその声の方へと向き直り、深く礼の体勢をとる。無論、私やルーイも例外ではない。
そのような突然の行動に驚いたようで、それでもエリザベスは見よう見まねで似たような礼をしたようだ。
……天運を味方に付けるだけのことはあって、適応が早い。
「楽にしてくれ。ただの散歩なのだから」
「はっ」
そう。これはただの散歩……偶然主要の人物が同じ時間に休憩時間を持っていて、その時間でたまたま鉢合わせただけだ。
金髪を纏めた優男。
これで五十を超えるという年齢だと言われても、誰も信じないであろう若々しさを保つこの男性こそが、国王、ニコラ。
そしてその男の横で静かに、たおやかな仕草で佇むのが王妃、グェンドリュンヌ……。
ニコラにはこの国を治めるだけの素質が、カリスマが確かにある。
個人としての総合力ならば負けないだろうが、戦えば私は確実に負けるだろう。そう思わせるだけの何かが確かにある。だから自然と礼をするのだ――その圧倒的な統治の前に、私も、王子達も、自然とそう動いてしまう。
エリザベスもいずれはそうなるだろう。そうなれないような者は、そう長くこの王城にはとどまれない――お付きの使用人は、そう考えると微妙な所ね。
「リュシエンヌ。庭の花は咲いたかね」
「はい、陛下。色とりどりに咲きましたわ。今朝もクリス様とお茶をしましたのよ」
「ふむ。近く私もそこでお茶を飲みたいな。グェン、どうかね?」
話題を振られた王妃はただ、笑みを浮かべて。
「良きお考えですわ」
とだけ、答える。
「エリザベス。君はリュシエンヌと会って、どう見たかね。正直な事を聞いておきたい」
「とてもお強い方だと。……失礼な事かも知れませんが、私はきっと、彼女と仲良くなれると。そう確信しています」
「うん、それは良い事だ。どうか仲良く、二人で手を取り合って貰いたいと思う……それが王国の民を潤すだろう。二者二様の麗しい花にね。もちろん君は特別だけれど」
君は、と話題を振られたグェン王妃は照れるように頷いた。
惚気ることが許される空気、というか……。ニコラ国王のやることは、その全てが不思議と正当性を持つような気がしてしまうのだから恐ろしい。
恐ろしいのに、先もみたいと思ってしまう己の性こそが恐ろしいのだけれども。
「親愛の証といっては妙ですけれど。ルシエ、リザ。あなたたちもこのように、愛称で呼び合ってはどうかしら」
「良きお考えですわ、グェン様。私はそれで良いけれど、あなたもそれで構わないかしら?」
丁度いい、とグェン王妃が提案する。渡りに船だ、どう出るのかも見ておきたい。
多少強引でも話題をエリザベスに振れば、エリザベスは「はい」、と優しく微笑み頷いた。
「リザ、とお呼び下さい」
「ならば私はルシエと呼んでね。リザ」
「はい、ルシエ」
これが私とリザの顔合わせ。
リザが困惑していることはよく分かるけれど……たぶんこの子は、私と大差ない速度で染まるんだろうなあ。
王城の式に――王城の色に。
「それにしてもテオ。花びらのドレスを与えるとは、また粋なことをするね」
「お母上から知恵を戴いたのです」
「そうか。そうだろうな。……グェン、まさかお前はルーイにリボンを付けることができなかったのがそれほどまでに残念だったのか?」
「ふふふ」
そしてニコラの問いかけで花びらのドレスを送った経緯が判明。
なるほど、グェン様もルーイがお気に入りだったわね……。
尚、リボンと呼ばれているものは白い花びらのドレスの男女逆版と思っておけば良い。
ふんわりとした会話で、ふふふという微笑みの回答で誤魔化しては居るけれど、なかなかに王城の色に染まった会話だった。ルーイに至っては冷や汗をかいている。
幸い、グェン様とニコラ陛下はそのままこの場を通り過ぎていった。
あくまでも顔見せ、顔合わせ。
公式の場での挨拶は、七日後……か。
「やれやれ、母上の『やんちゃ』も大概だな。すまないね、ルシエ」
「いえ、お気になさらず。テオ様、私たちでお手伝いできることがあれば言って下さいな。もちろん、クリス様のご用件を優先することも多いでしょうが……」
「恩に着る。君たちくらいにしか頼めないこともあるからね」
私とテオの間でそんな靄々とした様子になれば、逆に困惑したのがリザだった。
「え、っと、テオ様?」
「なんだい?」
「いえ、……その、失礼ながら、ルシエ様とのご関係は?」
「ああ。我が兄の婚約者であると同時に、『良い友人』さ。さっきはあらかじめお願いしておいて、一芝居打って貰っただけ……私と彼女の仲が険悪だと見た時、君がどのような反応をするのか。それを試すためにね」
「試す、ですか?」
「ああ。いいかいリザ、この程度の腹芸は腹芸にあらず。日常の会話どころか、呼吸のようなものだ。王城での生活というものは、如何に王城という魔に染まることができるかというものだ」
「なるほど。……私は、合格でしょうか?」
「そう問いかけられるならば問題はあるまい。兄上、ルシエ、どう思う?」
会話を振られれば、答えなければ失礼か。
私は笑って頷く。
「大丈夫でしょう。とはいえ、最初に染めるのはテオ様ですわ。最初の数日で壊さないで下さいましね」
「ああ、全くだ。俺の時はルシエが相手だったからな、むしろこちらが討ち死にしかけたが」
苦笑交じりの告白に、テオも苦笑を浮かべる。
そして一人、リザはその真意を理解出来ていないようだ。全く、純真無垢というかなんというか。リザほどの歳でここまで真っ新な状態というもは貴重でしかない。
「ルシエ様」
「何かしら、ルーイ」
「いえ。そろそろエリザベス様のお付きの方を、見ない振りをするのは可哀想なのではないかと思うのですが」
そういえば結構前から沈黙……沈黙というか、動作を停止していたわね。
うん、この子はダメだわ。王城の色について来られない。
「リザ。一年ばかりではあるけれど、この王城に早く入った私からの助言をさせてもらってもいいかしら」
「は、はい。ありがとうございます」
「次からは連れてくるお付き、ある程度耐性を持った子を選びなさい」
「……それは、ソーンではダメということですか?」
「だめとは言わないわ。けれどその子、長くは保たないわよ」
「お言葉ですが……」
リザは私の断言におずおずと、それでも私の横に控えるルーイを見据えて言葉を続ける。
「ソーンは私の信頼する使用人で、幼馴染なのです。そちらの男の子でも務まるような事ならば、こなしてくれると信じています」
「そう。ならば止めないわ。それと……」
警告はした。
テオとクリスが私の警告を是としていたことに、リザは気付いていただろうか?
婚約が七日後ならば、九日後には答えが見えるわね。
その時に逆恨みされなきゃいいけれど……されるようならテオに抑えて貰いましょう。
「この子はルーイよ。私のお付き。挨拶しなさいな、ルーイ」
「はい。申し遅れました、ルーイと申します。リュシエンヌ様のお付き、使用人をさせていただいております」
「小僧の淹れたお茶は美味いぞ。それと」
自己紹介に割り込んできたクリスは、『悪戯小僧』のように言った。
「その小僧はなかなか上手いぞ」
何がとは言わないが、と。
私はそれに頭を抱える。見ればテオも頭を抱えていた。
こういうときは何も知らないリザがとても羨ましいわ……。
そして、今のはせめてものヒントなのだ。それをソーンという彼女が、拾い取れるだろうか?
拾い取れるならばまだ先はある。拾えないようならば……きっと。
「さてと、ルーイ、今日はそろそろお暇を戴きましょう。クリス様、テオ様、夕食の場にてお会いしましょう。リザ、あなたとは七日後にまた会えるけれど。それまでの間もそれからも、何かあったら百合宮までおいでなさい。私ができる限りを手伝うわ」
「…………? はい。感謝します、ルシエ」
理解は出来なくても、これで頭には入ったはず。
多少は『帰ってくる』のも、これで早まるだろう。
その場を離れるその刹那、テオとクリスに視線を飛ばせば、二人は『ありがとう』と視線でかえしてきた。
安くはないわよ。
登場人物:
ソーン……エリザベス付き世話人の少女。リザと同年代。