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閑話:噂と裏話2

「あら……?」

「どうした?」

「もしかして、エリの『共有』が発動してる?」

「然り」

「そうね、第3世代の『働き蜂』クンたちもちょっと興奮気味に花を生成してるみたいね」

「ほぅ……めずらしいのぅ。かのお妃様がそこまで心揺さぶられるものと出会ったとはのぅ」

「良い便りではありますよ? これで今季のハチミツの生産は安泰ですね」

「……うむ? どうした? ルビーナよ」

「んーんーんんんー。喜ばしい話ではあるけど、ちょっとまずいことになるかも……」

「何故?」

「もうちょっと待って。今、ちょっとソースを確認中なの」

「ソース? ちょっと、どういうことよ、ルビーナ」

「確信が持てるまでは内緒。『三賢人』権限を発動させてもらうわ」

「えーっ!? ちょっとそれはどうなのよ? 何を隠してるのよ?」

「横暴」

「仕方ないじゃない。(エヌ)のお馬鹿がずっとだんまりなんだもの。あのお馬鹿が納得できるような対価を用意して、ルートを繋げて――――えーっと……こっちのルートは塞がれてるし……あぁ、こっちもダメかあ……もぅ! カミュは私が近づくと逃げちゃうし……」

「おい……もしかしなくても、『(サイファート)』がらみか?」

「胃が痛い」

「あんた、胃がないでしょ」

「冗談を言ってる場合か。おい、ルビーナ、これだけは聞かせろ。それは『教会』の浮沈に影響することか?」

「微妙ね。どういう意味で影響するかによるわ」

「……どういうこと?」

「周辺への影響が甚大になる可能性が少しあるの。問題はどちらの方向に話が進むかが定められないことね。『エリの離反』とか『リディアの暴走』とか。これ以上はソースの確認が取れるまでは『三賢人』権限で黙秘するわ」

「おいおい……」

「……ある意味、国同士の戦争と同等、いえ、それ以上に(たち)が悪いですわよ?」

「――――で? どうするの? 『三賢人』サマ」

「今、ルドも別件で動いてるから、当てにされても困る、かしら? 前例がないのと、何でか知らないけど、リディアが本腰入れてるから、正直読み切れないのよね」

「不確定要素極まれり」

「戦力をぶつけたりするのは愚策という判断で問題ないな?」

「当然。貴方たちの役目は、そういうことをしでかすお馬鹿の手綱をきっちりと握っておくことよ。まあ、いっそのこと、リディアにお馬鹿を一掃してもらうのも悪い手じゃないとは思うけど」

「やめとけ。俺たちも黒幕扱いで一緒に一掃されるぞ」

「とにかく、ハチミツ関連の施設全部に通達を出して。あと、巡礼騎士にも。それと、私にもう少し時間を頂戴」

「わかった」



◆◆◆◆◆◆



「エリって、死なないんだっけ?」

「死ぬ死ぬ、すっげえ死ぬ」

「正確には『転生型』だな。たとえ死んだとしても時間経過と共に、記憶を引き継いで新しく生まれ変わるタイプの種族のはずだ」

「アーガスの馬鹿どもはそれで報復を受けたろうが」

ひとつ前(・・・・)のエリの恨みを買ったんだっけ?」

「時代的にふたつ前だと思うが……まあ、そんなとこだ。おかげでハチミツに関してはお察しの通りだな」

「『教会』として流通禁止」

「もっとも、行商人レベルでのやり取りは裏で行なわれてるみたいだがな」

「嗜好品化」

「元々のハチミツの原価も高いがな」

「一応、確認ね? この件で、アーガスの貴族残党が馬鹿やりそうな雰囲気はあるの?」

「ない」

「さすがに、レジーナの極東地まで戦力を進ませる余裕はねえだろ」

「そう考えると、ザンの建国は有意義ではあったわね。ある意味、状況に風穴を開けるきっかけになったわけだし」

「まったく、迷い人様々だ」

「皮肉にしか聞こえないわよ? 貴方のとこ、迷い人が有害であった場合、きっちり間引きしてるじゃないの」

「当然だな。悪意のある迷い人など、魔王予備軍と変わらないからな。処理するのが正しい判断だ」

「今の『魔王』だと、比べたら可哀そうな気もするけど?」

「本質が善でないという点では同じことだ。悪か、混沌か。その程度の差でしかない。当然、今の魔王も監視対象だ」

「『魔王』はいないことになってるけど?」

「無駄に人心を惑わす必要もなかろう? 状況が許す限り、必要なのは安寧ぞ」

「『敵』を想定するのも、まとまるという意味では有用だとは思うけど?」

「仮想敵が必須の状況は不毛」

「まあいい。エリの周囲で動いているのは、例の新しい迷い人だな?」

「ええ。ひと月前に『(サイファート)』で冒険者登録が為された子ね。それ以上の情報はあまりあがってこないようになってるみたい」

「……全く。やりづらい『町』だな」

「それが普通。我ら、楽な手法に慣れ過ぎ」

「そうそう。ちょっと鈍ってるんじゃないの? そんなことじゃ、『東』とのやり取りで後れをとることになるわよ?」

「ふむ……神は我らの怠惰を許さぬということか」

「そんな大げさなもんでもねえと思うがねぇ」

「はいはい、その辺で。それぞれが持論を展開すると揉めるのはわかってることでしょ?」

「同感」

「では、それぞれで動くので良しとして。で? 相変わらずの我らが『お嬢様』はどうされているのだ?」

「「「………………」」」

「……おい?」

「一応、カウベルに仲介は頼んではいるのよねえ……『影』ちゃんは?」

「連絡なし」

「こっちも同じくだぁな。てか、あんたの方は?」

「……進展がないから尋ねたのだ」

「まあ、少なくとも、私たちにとって不利益になることはしないでしょ。個人的な恨みは買っていてもね。案外、もう興味を持って動いているかも知れないわよ?」

「……だといいがな」



◆◆◆◆◆◆



「本日のサイファートの町周辺のお天気予報です」

「本日は全域が晴天に恵まれ、このまま一日中晴れる模様です」

「日差しが強いので、外出の際はお気を付けください」

「それと、確率は低いですが、『虚界』周辺での揺らぎのような兆候が見られます」

「なるべく、町から外へ出るのは控えてください」

「予備的ではありますが、クエストが発令する可能性がありますので、対応できる方はご協力をお願いします」


「引き続き、細かい地区ごとの天気予報です」



◆◆◆◆◆◆



「あ、しまったな」

「どうしたのですか?」

「新しく予報が追加されたらしい」

「なのですか? えーと……あー、『はぐれモンスター増加確率40%、スタンピード発生確率15%』ですか。今日はコロネさん、外へお出かけしてるのですよね?」

「まあ、リディアが一緒だから大丈夫だとは思うが」

「なのです。『虚界』の側で暮らしているなら、誰もが通る道なのです」

「それにしても」

「何です?」

「こっちに来て初めての外出で、これ(・・)に当たるかも知れないってのはなあ。まったく、コロネのやつ、引きが強いというか何というか」

「でも、リディアさんと一緒なら十分運が良いのです」

「……それもそうか」

「なのです」

「まあ、そうは言っても色々と大変だろうからな。よし、今日の晩飯はちょっと良いものを用意しておくか」

「――――! それはピーニャも楽しみなのですよ!」

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