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12-11 星が見える牢

 部屋に月明かりが差し込んでくる、レオは窓から星空を見ていた。


 レオが連れてこられた所は牢獄ではあるが、護送を担当した兵士の方達の厚意によって過ごし易いように寝具等は揃っている。


 彼らからして見れば僕は間違いなく化け物で、あの王達の様にこの存在を受け入れるのは誰だって難しいだろう。


 それなのに彼らは恐怖に耐え、出来る限りの配慮をしてくれた。


 僕の事を信じて良いのか、本当に人じゃない存在を受け入れられるのか。


 まだそれに答えは出せなくても、彼らはそれを真剣に考えてくれた。

 

 彼らの思いに答えられるように、何より自分自身の為に、これから何をすれば良いかを考えながら星を眺める。


 これから進んでいく道は変わりない、これからも勇者として皆と共に闘っていきたい。


 その為に僕はどうすれば良いんだろう……


 それを考える中で、もう一つ自分の心の中に刺さっているかのような物も考えていた。


 それは自分の生まれの事。


 ストレッジは僕が魔法によって作られた生物だと言った、それは真実なんだろう。


 なら、僕の両親は他人になっちゃうのかな……それとも、それでもお父さんとお母さんで居てくれるのかな……


 それらを考えながら星を見ていると、影がふっと視界に映りこんだ。


 何時の間にか牢の中に桃色の髪をした少女が立っていた。


 それに気が付き立ち上がる見張りを、まだ片側だけの金色の目で少女が誘惑する。


「ねぇ~おじさま、ちょっとロンザリアのお願いを聞いて欲しいんだけど」


 侵入者だと叫ぼうとした見張りがトロンッとした目になり、ロンザリアの手招く指に誘われて牢に近付いてきた。


 男はそのままロンザリアの前に跪き、その顎をロンザリアが指で撫でながら男に囁いていく。


「ロンザリアね、ちょっとここでお話したいの、誰にも邪魔されずに。だから~、おじさまは入り口に立って見張っていて欲しいの」


「ああ、分った、そうしよう」


 まるで夢の中に居るような顔をしている男がそう答えた。


「んふふ、じゃあお願いね~。あと、この事は誰にも言っちゃ駄目だからね」


 ロンザリアが見張りの唇を指でトンッと押すと、男はロンザリアに言われたように入り口前に立って見張りを始めた。


「いいよ~、お兄ちゃん出てきても」


 その声にロンザリアが空けた穴から涼が顔を出した。


「うわー、何か改めて見ると結構ヤバイ能力なんだなお前のって」


「ど~お、惚れ直しちゃった~?」


 ベタベタと引っ付くロンザリアを「はいはい」と引き剥がしつつ、涼がこちらを向く。


「よ、何だか思ったよりは元気そうだな」


「とりあえずね、ここの人も良くしてくれるし」


「確かに牢屋って割には居心地は悪く無さそうだな。これは全部ここの人が用意したのか?」


 牢の中を眺めて、置いてある椅子に座りながら涼が聞いた。


「うん、布団とかも色々と持って来てくれたよ。このまま捕えてるだけじゃ悪いからって」


「そうか、皆が皆あの王様達みたいな感じではないんだな」


 少し安心したように涼はそう言った。


「それでだ、一応俺達はお前を助けに来たんだが、エイミーが言うように何かやろうって顔してるな」


「エイミーが?」


「ああ、お前が自力で脱出しないのは、何か考えがあるんだろうってさ」


 それを聞いて「あっ」と気が付いた顔をしてしまう。


 それを見て涼が怪訝な顔をした


「お前、もしかして何も考えて居なかったのか?」


「いや、違う!僕が考えていなかったのは脱出のことだけで、ちゃんとこれから何をするかは考えてたから!」


 必死に弁明するも、ロンザリアが横で大笑いしてしまっている。


 うぅ……ここから自分で出るなんて事考えてもみなかった。


「まぁ良いや。それで、レオはこれからどうするつもりなんだ?」


 気を取り直して涼が聞いてくる。


 それに関してはちゃんと考えていた。


「えっと、折角来てくれたけどこのまま裁判に出ようと思う。そこでちゃんと皆に向かって僕の意思を伝えたいんだ」


「言っても何も聞いてくれないかもしれないぞ」


「それは分ってる、でも皆と一緒に戦いたいって意思は伝えないと。何も言わずに居なくなったら、それこそもう僕は皆と一緒に戦えなくなる気がするから」


 何も言わずに出て行ったら、皆の中には僕の力の恐怖だけが残ってしまう。


 だから伝えないと、僕の心を、今まで歩んで来た中で生まれ育った人としての心を。


「そうか……よし分った、後はお前に任せるよ。でも上手く行かなかったらちゃんと逃げて来いよな、俺たちは飛空艇で待ってるから」


「飛空艇で?」


 まさかの場所の名前に驚いた。


「ああ、アンセルムさんが俺達に飛空艇内にある小型の飛空艇をくれるんだ、何でも普通じゃ動かせないけど、レオなら多分動かせるってさ。だからそれに乗って神様に会いに行こうって話になってるんだ」 


「神様に?……そうか、うんそうだね。全部の答えを知りに行こう」


 魔王も、この世界も、知りたいことが、知らなくちゃいけない事が沢山ある。


 ずっと気になっていたし、今がタイミングだろう。


「ね~え、ロンザリアもそれ付いて行って良い?」


 椅子に座る涼の背中に寄りかかりながらロンザリアが聞いてきた。


「何だよいきなり」


「だって、お兄ちゃんの記憶から出る過去の光景を見たら興味沸いたんだもん」


 そのロンザリアの言葉に涼が「しまった」という顔をする。


「これ大丈夫なのか?島が出てきてしまうとか、場所がばれるとか」


 そう涼が立って慌てふためくが、ロンザリアの方はのほほんと答える。


「大丈夫なんじゃな~い?ロンザリア一人分だし。それにどうせもう手遅れだし、考えるだけ無駄だって。だらか連れてって~、連れてって~」


 ロンザリアが背中に抱きついたまま駄々を捏ね始めた。


 それに「まぁ仕方ないか……」と涼が溜息をついた。


「それで、俺は一緒で良いと思うけど、どうする?」


「僕も一緒で良いと思うよ、ロンザリアのお陰で今回は助かってるんだし」


 二人の言葉にロンザリアが「やったー!」と無邪気に喜んだ。


「はぁ……うっし、それじゃ俺は帰るから、どうなるにせよまた明日だな」


 ロンザリアを背中に背負ったまま涼が立ち上がる。


「うん、また明日」


 涼が牢に開いた穴に入って帰っていった。


 穴が閉じると共に見張りの兵士が元居た場所に戻り、夢から覚める。


「ふわぁ~、流石に眠いな……」


 そう眠そうに目を擦って仕事に戻っていく。どうやら何も覚えていないようだ。


 さて、僕も明日に備えて寝ようか。


 明日の裁判がどうなるにせよ、僕達はイザレスに向かう。


 この世界の、魔王の事を知る為に。




 涼は穴の中をロンザリアを背負って帰っていた。


「明日の裁判は上手く行くかな」


 俺のつぶやきに俺の後頭部に顔を埋めていたロンザリアが顔を上げる。


「駄目なんじゃない?」


「お前言い難い事でも結構はっきり言うな。後そろそろ下りろ」


 俺がそう言うと「は~い」と素直にロンザリアが背から降りて行った。


「だって、あのストレッジの空間で頭ぐっちゃぐちゃにされた状態で正体を言われたんだよ?誰もレオの事なんてちゃんと見るわけないじゃ~ん」


 歩きながらくるくるとロンザリアが回っていく。


「それに~、ストレッジの思惑と違ってお兄ちゃん達はレオを信じられてるし、孤立させちゃおう作戦は失敗だったって事でもう気にしなくて良いんじゃな~い」


「気にするなって言ってもな……」


 確かに気にしても仕方のない事ではあるが、やはり今回の事は色々と気にしてしまう。


 世界が向けるレオへの目線はストレッジによる恐怖のフィルターが掛かっている。


 もしもそれが無かったのなら、こんな事態にはならなかったのかもしれないと。


 もしもあの場面を止める事が出来たのなら、もしも俺に力があれば、そんな叶わない願いを。


「お兄ちゃんも人間にしては割りと出来る方なんだけどね」


 俺の考えを読んで、ロンザリアが回るのを止めて振り向いた。


「そうか?」


「うん、人間の中で、中の上ぐらいはあると思うよ」


 そりゃまた中途半端な評価だな。


 そう思い自分の手の平を見る。


 普通の人の手、大きな力を望むにはあまりにも普通の手。


 力を込めて拳を握っても、それは変わりはしない。


「俺は俺が考えていたような力は持ってなかった。別にそれが嫌だとはもう思わないけど、でも今はそんな力が欲しいって思っちまうな」


 歩みを止めて自分の拳を見る俺の顔をロンザリアが覗き込む。


「お兄ちゃんはレオを助けられてるよ、お兄ちゃんが本来出来る範囲よりも多くの事を命を懸ける事で。それでもまだ足りない?」


「足りてない。レオはもっともっと遠くに居る、俺の命なんて全部使っても届かないぐらいに遠くに」


 そう答える俺を見て、ほんの少しだけロンザリアが悲しそうな顔をした。


「まぁ、お兄ちゃんの生き方なんだから好きにすると良いと思うけど、お兄ちゃんが死んだら皆悲しむよ、それだけは覚えておいてね」


 その顔と言葉を聞いて自分の言葉を思い返す。


「別に死んでも良いって思ってる訳じゃないさ……」


 そうは言うも何故だか顔を横に背けてしまった。


 それを見てロンザリアが俺に正面から抱きついてくる。


「分ってるなら良いけどね。でも、これからロンザリアも仲間になるんだし頼ってくれたら嬉しいな」


 顔を上げてにっこりとした笑顔でそう言った。


 その笑顔を見て俺も一つ息を付き、ロンザリアの頭を撫でる。


「ああ、よろしく頼むよ……あっそうだ」


「なに?」


 これから一緒に旅するに当たって、一つだけどうしても変えてもらいたい事があった。


「とりあえずその格好は止めて普通の服を着てくれ」


 ロンザリアの服装は今までと変わらない非常に露出度の高い服を纏っていた。


 雰囲気の流れで少し慣れてしまったが、よくよく見なくても奇抜すぎる上に目に毒だ。


「え~、ロンザリアはサキュバスだからこの格好が普通なんだけどな~。ほらほら~、それって魔物差別じゃな~い?」


 割と気にしている事を利用してこいつは……


「駄目だ、俺達と一緒に来るなら普通の人の服を着る事。もしくはせめて露出を下げてくれ」


「えー……」


 ロンザリアは俺から離れながら文句ありげな顔をするも、それでも纏っている服を変化させてくれた。


「これで良い?」


 見た目が変わった服は、飾りの付いた白いブラウスに黒いふんわりとしたスカートという清楚な雰囲気を出した服に変わっていた。


 何と言うか、前にこんな服がネットで流行ってたな。


 細い尻尾は何処かに通す場所があるのだろうか、外に出てフリフリと動いている。


「ちなみに~」


 ニヤ~とロンザリアが口角を上げる。


「お兄ちゃんが好きなガーターベルト付きで~す」


 スカートの裾をつまみ少しだけ上げて、その中身をチラリとだけ見せる。


 その仕草に思わず硬直してしまう。


「ねぇ~、お兄ちゃん好きでしょ、こういうの」


 チラリ、チラリとソックスから上の生脚を、今にも下着が見えそうな位置までスカートを持ち上げて見せ付けてくる。


「うっせぇな!そういう仕草も禁止!」


 顔を赤くさせながら禁止令を出す俺を、ロンザリアがニヤニヤと笑いながら「は~い」と返事をした。


 くっそ、絶対守らない気がするぞこいつ。


 今回はロンザリアの俺と二人で行きたいって我侭でリーナとエイミーは宿に残ってもらったが、これは残ってもらって正解だったかもな。


 というか、これからこいつのイタズラを女性陣の前で受けるかもしれないのか……


 そう思うと胃が痛くなってきた。

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