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10-1 首都への中継地

 リベールとの戦いが終わり、俺達はキャンプへと戻り首都への旅を再開していた。


 途中ロンザリアの襲撃があるのではとも思ったが、ロンザリアはあれから姿を見せなかった。


 このまま諦めてくれると嬉しいのだが。


 生憎と曇り始めた昼の少し前に、首都の前の中継地となるサヴォーナ砦へと着いた。


 流石にバルレッタと比べたら小規模ではあるが、それでも結構立派な砦だ。


 首都との目と鼻の先とも言えるし、ここが実質最終防衛線と言った感じなのだろうか。


 俺はレオと一緒に砦の構造を見て回って行く。


 砦の中ではバルトロさんが先に着いて待っていた。


「お二人とも、移動お疲れさまであります。話では道中で魔王軍の残党と戦ったとか」


「はい、でも兵士の方達と協力して何とかなりました」


 俺が答えるとバルトロさんが笑顔を返してくれた。


「それは力になれたようで何よりでありますね。それで、それとは別にレオ殿」


「はい?」


 何やら困った様にも見えるバルトロに言われて、レオが何事だろうと返事をする。


「レオ殿がこの砦の兵全員に稽古を付けてくれると兵が話しておりますけれど、宜しいのでしょうか?」


「え?」


 キャンプ地で交わした約束が何時の間にか規模が大きくなっている。


「あー、一応それは同行していた兵士だけの予定の筈だったんですけど」


 固まってしまっているレオの代わりに俺が答えた。


「そうでありますか、それは申し訳ない。では自分から彼等には中止するよう、皆さんに迷惑をかけぬよう言っておきましょう」


 そう謝り、兵士達へと伝えようとするバルトロにレオが待ったをかけた。


「待ってください、僕やりますから」


「いえ、レオ殿は無理して付き合う必要はありませんよ。彼等には自分から厳しく言っておきますので」


「えっと、僕がやりたいんです。やらせて下さい」


 逆に頼み込むレオを見て、バルトロは少し驚いていた。


「こちらとしては嬉しい申し出でありますが、宜しいのでしょうか?」


「はいっ」


 返事を受けて、バルトロがうんうんと考える。


「それはありがとうございます。では自分も手伝いますので、こんな我侭を望んだ彼等をビシバシと鍛えてあげましょう。それでは、昼食の準備もそろそろ出来ますでしょうから、食事が終わってから準備といたしましょう」


 そう言ってバルトロは去って行った。


「なんか意外だな、レオがこんな事を受けるなんて」


 俺がそう聞くと、レオが自分の手を見つめながら答える。


「リベールと戦って……何だろう、戦う理由?いや、ちょっと違うかな。でも何か、戦いの中で分ることがある気がするんだ。だからここの人達とも戦ってみようかなって」


「そうか、何か色々と見つかりそうなんだな。じゃあ頑張ろうぜ、もっとも俺は稽古つけて貰う側だけどな」


「うん。……そうだ、前は聞けなかったけどリョウはどうして戦おうって決めたの?」


「俺か?」


 聞かれて空を見上げる。こういう時は晴れていて欲しいものだ。


「俺の夢の為だな」


 カッコ付けてそう言った。


 それを見て思わずレオが噴出した。


「笑う事はないだろ」


 不満げに言うも、俺もつられて笑ってしまっていた。


「いや、ごめん。でも、ふふふっ」


 レオは口を押さえて懸命に笑うのを堪えている。


 何だかカッコ付けて言ってしまった事が恥ずかしくなって来たな。


「アンタら何やってんの?」


 リーナとエイミーが何時の間にか傍に来ていた。


「食事の用意が出来たとの事でしたので呼び来たのですが、レオさんどうかいたしましたか?」


 笑いを堪えているレオを見て、エイミーが不思議そうに尋ねる。


「いや、気にしなくて大丈夫、ふふふっ」


「どうしたのでしょう?」とエイミーがこちらを向くも、恥ずかしくなって顔を背ける。


「ま、何馬鹿やってるかは知らないけど、とりあえずご飯にしましょ、ご飯に」


 リーナの言うように皆で昼飯へと向かう。


 昼飯を食べ終わった後は予定通り砦の兵士総出での訓練となった。


 訓練に参加する兵士全員があの四本槍の一人であるバルトロさんと、それに並び立つ、いやそれを越えると噂のレオと手合わせできる事にテンションが上がっていた。


 バルトロさんの指示の元に訓練の内容の説明が入り、模擬戦が始まっていく。


 しかし、二人が強いのなんの。


 砦の兵の数は約2600、その内参加したのが1000人ほど、その全員を1対3での戦闘で次々とボコボコにしてしまうのだから半端じゃない。


「かー、バルトロ様の強さは知っていたが、お前さんのご友人もとんでもない強さだな」


 横で二人の戦いっぷりを見ていると、訓練には参加していない兵士がこちらに話しかけてきた。


「自慢の友人です」


「本当そうだろうさ。これは俺も参加したかったな~、でも仕事があるから仕方ないか」


「お仕事手伝いましょうか?」


「ん?はははっ良いよ、良いよ、むしろお前さんはあの二人と戦って、もっと強くなってくれたほうが俺達は助かるよ」


「そうですか……いや、そうですね。頑張ってきます!」


「おう、頑張って来い!」


 俺の背を叩いて兵士の人が仕事へと戻っていく。


 ようし、俺も挑戦しに行きますか。




 サヴォーナ砦での訓練が続き、時間は雲がかかって解り難いが夕暮れ時となっていた。 


 皆がレオとバルトロに挑むのを、リーナとエイミーは椅子に座ってくつろぎながら見ている。


「なんか男達は元気よね」


「元気なのは良いことですが、大怪我をする人がでるんじゃないかとハラハラします」


「本当にね」


 微笑みながらレオ達の戦っていく様子を見ていく。


 見ていく中でエイミーがリーナに聞いた。


「リーナさん」


「なあに?」


「私に隠している事はありませんか?」


「……別に、何も無いわよ」


 聞かれてリーナはさも何も無いように振舞った。


「いいえ、リョウさんは何かを知ったから、リーナさんに信じると言ったのですよね?」


 そう聞かれたリーナは少し俯き考えた後に答えた。


「……そうね、多分、ありがたい事にね。……ごめん、嘘ついた」


「いいえ、私も無理やり聞いたようでごめんなさい」


 しばしの沈黙が流れた後にエイミーがリーナへと聞いた。


「それは、私には話せないことですか?」


「うん、ごめん」


「それはレオさんに関係ある事ですよね?」


「うん、リョウが知ったのも多分そう」


「……でしたら、私もレオさんの事を信じます」


 リーナが顔を上げて、エイミーの方を向いた。


「私はリーナさん達が何を隠して抱えているのかは分りません。ですが、お二人の事を私も信じます」


 強い瞳で自分を見るエイミーを見て、リーナがとても優しい顔と声で答えた。


「ありがとね」


 その声を聞いてエイミーは確かに心に決めた。二人の事を信じようと。


「その顔をレオさんにも見せてあげたいです」


「え、何かアタシ変な顔をしてた?」


「いえいえ、とても良い顔をしてました。私もちょっとドキッとしちゃいました」


「そ、そう?うーん、どんな顔をしてたのかしら」


 リーナがどんな顔をしていたのかと、自分の顔をむにむにと触った。


「まぁ良いわ、夕飯まで部屋に戻ろうと思うけど、エイミーはどうする?」


 立ち上がりながらリーナが聞いた


「そうですね、私も一度部屋に戻ります」


 エイミーも椅子から立ち上がり答えて、空を見上げる。


「今は曇ってますけど、ヴィットーリアに着いたら晴れると良いですね」


「そうね、折角の機会だし晴れてくれないと」

 

 二人して空を見上げる。




 湖の畔でリベールは目を覚ました。


「俺は、生きているのか……」


 確かにレオに負け、最後の一撃を斬られた筈なのに、何故。


 生きては居たものの今にも力尽きそうな体を起こすと、目の前にはつまらなさそうな顔をしたロンザリアが居た。


「まさか、貴様が助けたのか?」


 聞かれてロンザリアがリベールを睨みつけた。


「はぁ?んなわけないじゃん。アンタが勝手に生きてたのよ死に損ない」


 俺が自力で……そうか、まだ俺は戦えるのか。


 自分が想像したよりも浅い傷を魔法で回復していく。


「ではお前は何故ここに居るんだ?」


 舌打ちをしてロンザリアが答える。


「ここに来たのは偶々よ、偶々。やる事がなくなって何となく戻ってきたらアンタが居ただけ。お兄ちゃん達の後を追ってたんだけど、それが出来なくなっただけ」


「何かあったのか?」


 聞くも、何があったかはリベールも直ぐに気がついた。


「ケーニヒが来た」




 サヴォーナ砦の人々は全てそれに気がついた。


 雲の上に途方も無い力がある。


 その力は雲を破り、獄炎と化して地上へと落ちてきた。

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