8-2 糸目の幼馴染
魔法学校から戻った俺は、レオと街の外れで日課の特訓をしていた。
「マントを着けてから魔力系の部分は格段に良くなってるね」
模擬戦も終わり、レオが汗を拭っている。
「リーナ様様だな。学長にもマントが凄いって訳で話が出来たんだし」
「マントが凄いとは言っても、リョウ自身の頑張りがないと何の意味もないから、この強さはリョウの努力から生まれてるものだよ」
俺自身の力か、あれから変わってはこれたのだろうか。
「最初に会った時は、あんなに力だけが欲しいって我侭言ってたのにね」
「うぐっ、あれは本当に悪かったって思ってるから」
俺の言葉にレオが笑った。
「でも本当に強くなった。リョウはこれから軍に入るの?」
「それは、どうなんだろうな……多分入ろうとは思ってる」
悩んではいるが、恐らく自分がやりたい事に近いことは軍に入る方だろうとは思う。
でもまだ、それを決断するには気になることがあった。
「レオはこれからどうするんだ?」
俺が聞くとレオは暗く表情を落とした。
「分らない。でも村には、帰りたい」
俯き、思い悩む表情を浮かべている。
アデルさんが言っていた運命に対して不安があるのだろう。
ここで俺が「世界の真実ってやつが気になるから行ってみようぜ」と言うのは簡単だ。
言えば多分、レオも何だかんだ付いて来てくれる気もする。
でも、そんな俺の我侭で決めて良い問題ではない。
「俺はやっぱりレオがやりたいようにやるのが一番だと思うぜ」
「そうかな?」
「そうさ、運命だ何だと言われても、結局はお前がどうするかってのが大事だし。それに」
これも結局は俺の我侭なのかもしれないが、一つレオに言っておきたかった。
「俺はレオがどんな困難だろうと打ち勝てる強さを持ってるって、そう思ってるよ」
「買いかぶり過ぎじゃないかな?」
俺の言葉に少しだけレオの表情が綻んだ。
「そんな事はないさ。こんだけ強いんだし、どんな強敵にだって立ち向かう心だってある」
「僕は結構毎回の様に相手が怖いと思ってるんだけどね、戦わなくちゃ守れないだけで」
少し照れくさそうにレオが言う。
「それが出来るから強いんだって」
「そうかな、そうだと良いな」
レオが敵を怖いと思ってるのは少し意外ではあったが、考えてみれば力を誇示するようなタイプではないし、それに相手の力をキチンと考えた上で恐怖を乗り越える勇気を持ってるって事だ。
ならばとやはり思ってしまうが、これ以上は本当に止めておこう。
「それじゃあそろそろ宿に帰ろうか」
レオの言葉に頷いて宿へと帰る。
宿ではリーナが一応の回復を見せていた。これなら明日は軍の方に顔が出せそうだ。
日が変わり、呪いの道具を持って軍の本部へと向かい到着した。
「このボアフットの賞金って幾らぐらい貰えるのかしら」
一日経って船酔いから完全に復活したリーナが、前に貰った討伐の証明書をピラピラとさせている。
「色々な村でボアフットの名前を出したら驚かれたし、かなり強かったから金額も高いんじゃないかな」
そういや色々な場面でボアフットの名前は役に立っていたような気がする。
「あれ!?」
賞金を貰える窓口は何処だろうかと基地の前をうろうろとしていると、リーナが驚きの声を上げて一人の男性の下へと走って行った。
走って向かった先に、軍服を着た糸目で金髪の男性が居た。
「イヴァン、お久しぶり!」
突然話しかけられて男性は驚くと、リーナの顔を見てまた驚いた。
「リーナじゃないか、どうしてこんな所に?」
「ちょっと賞金を貰いにね、イヴァンだって何でここに?」
「ああ、少し前からバルレッタ勤務になってね。それでリーナは一人でここまで来たのかい?」
「ううん、レオとかと一緒に」
「レオと……」
リーナに言われて、イヴァンと呼ばれた男性がようやく俺たちの事に気が付いた。
「やあ、レオもお久しぶりだね。それで君達は初対面になるかな、私の名前はイヴァン・サレス、リーナ達の幼馴染と言った所さ。もっとも俺のほうが6歳も年上だけどな」
そう言ってイヴァンさんがこちらに笑顔を向けてくる。
「涼 真田です」
「エイミー・メラートです」
笑顔の自己紹介を受けて、俺達も名乗り頭をぺこりと下げる。
うーん、何故だろう。何処かこの笑顔に違和感がある気がする……
「それでリーナ達は何の賞金を受け取りに来たのかな?普段ならバルレッタまで来なくても良いだろう」
「ボアフットって奴をレオが倒して、その賞金となるとバルレッタまで来なくちゃいけなかったみたいなの」
「ボアフットを……レオが!?」
驚きにイヴァンの目が見開く。
「……そうか、そうか、凄いじゃないか!これは賞金どころか勲章物になるよ!ようし、俺が上に報告してくるからここで待っていてくれ。やっぱり凄いなレオは」
レオの肩をパンパンと叩き、イヴァンは喜んだ様子で走り報告へと向かった。
その姿を見送って俺はリーナ達に尋ねた。
「あのイヴァンさんってどんな人なんだ?」
聞いた俺の顔を見て、リーナが「はは~ん」といやらしい顔をした。
「もしかしてイヴァンの事を胡散臭いやつだって思ったでしょ?」
思いっきり心を見抜かれていた。
「いや、そんな事は無いぞ」
驚き訂正するも、リーナからは見透かされてしまっている。
「いいの、いいの、あの人は昔からそんな感じだから」
笑いながらリーナがそう言った。
「そうなのか?」
「うーん、確かにそんな感じかな。意地悪な人って訳ではないんだけどね」
レオは少し苦手そうな顔をしてはいるも、嫌ってるわけではないようだ。
「ちょっと変な人だけど、頭も良いし剣も強いし、悪い人ではないわ。村から出て軍に入った所までは手紙とかで知ってたけど、バルレッタに勤めてるとは知らなかったわね」
「バルレッタ勤務って何かすごい事なのか?」
「この国の軍の中心だからそこに配属されるって事はそれだけ強いって事よ、村を出てからも相当強くなってるんでしょうね。まぁレオの方が強いと思うけど」
「そこは譲らないんだな」
「当たり前でしょ」
ニカッと笑うリーナに、恥ずかしそうに顔を背けてレオがぽりぽりと頬をかいている。
話をしているとイヴァンが戻ってきた。
イヴァンの案内を受けて基地の中へと入っていく。
「それではようこそ、バルレッタ基地へ」




