7-2 いざ、謎の島へ
目が覚めるとベッドの上で眠っていた。
「ここは……」
「良かった、目は覚めましたか?」
水着の上に上着を着たような格好のエイミーがこちらに近づき、俺の手を優しく握ってくれる。
えっと……
「ここは海の近くの病院です。お二人とも倒れてしまっていたので、人を呼んで運んでもらいました。レオさんも先程目を覚ましていましたよ」
そうだ、あの訳の分らない幻覚を見て気を失っていたんだ……頭がまだぼーっとしている……
「あの……島はどうなったんだ?」
「島?」
「そうだ……島は」
視点が定まらない目を浮かべて呟く姿を見て、エイミーがどうしようかとオロオロしている。
島……?島って何だ……
自分で言っているのに、その意味を良くは解っていなかった。
「なんか、アンタもふらふらと変な事を言ってるみたいね」
エイミーと同じように水着の上に上着を羽織ったリーナが、何やらふら付いてるレオを連れてやって来た。
「レオもふらふらと外に出たと思ったら島がー島がーと言ってたし。何度か引っ叩けば正気に戻らないかと思ったけど、まだふらふらしてるのよね」
いや、そのふら付きは叩きすぎなんじゃなかろうか。レオの頬がちょっと赤くなっている。
少しずつ頭がハッキリとしてきた。
だけど、同時に浮かんでくる島のイメージ、これは何だ?
荒廃した島に一つだけ朽ちた城が立っている。そんなイメージが浮かんでくる。
「あ、あれっ?ここは?」
ふらふらしていたレオもようやく目覚めた。
「よっ、お互い何だか気絶してたみたいだな」
「そうだ、あの時大勢の心が頭の中に入ってきて、それで……そうだ島に行かないと」
ふらふらとまたレオが歩いていこうとする。
リーナがその手を掴み、隣のベッドへと押し倒した。
「アンタは寝てなさい!」
布団を被せて腹の上にドカッと座り込む。「ぐへっ」と呻く声が下のレオから出た。
「んで、リョウは大丈夫なの?ちゃんと起きてる?」
「まだ頭はくらくらするけど何とか」
「あのー、僕ももうふらふら行ったりしないから、上から下りて貰えないかな?」
リーナは言われてレオの顔を見た後に、座る位置をずらし腹の上から下りた。
「じゃあちょっと状況整理をするわね。レオとリョウと気絶してたけど、何があったの?」
レオに顔を向けて目を合わせる。先にレオが喋った。
「僕は色々な人の声が聞こえた後、破壊と共に悲鳴が上がってそれに耐え切れなかった」
「俺も同じ様な感じだな。二人はその声は聞こえなかったんだよな?」
俺の質問にリーナとエイミーが頷く。
「変な幻覚みたいなのは見えたけどね、声とかは別に」
「突然リョウさんとレオさんが苦しみ始めて、声を掛けても気が付かなかったのはどうしようかと思いました」
半透明の街は他の人も見えていたんだな。
「あの幻覚?は何だったんだ……」
「呪い等とは違うように思えますが、なにか邪悪といいますか……そんな気配は感じました」
エイミーの言葉にリーナが「うーん」と唸る。
「あれ程、それも街を覆うような幻覚なんてよっぽどの事じゃないと作れない筈だし、それにあの馬鹿みたいにデカイ魔法陣も何だったのかしら……脅しのつもり?」
「脅しにしては何処か大仰しいと言うか、関係の無い事までやっている様に思う。それに僕とリョウだけ声が聞こえるってのも変だ。そんな事をする必要があるとは思えない」
ベッドからレオが起き上がり、こちらを向いた。
「頭がハッキリとしてきても、朽ちた城がある島の風景が何故か浮かんでくる。これはリョウも?」
言葉に頷いた。
「そうか、ならこれにも何か意味があるんじゃないかな?島へと誰かから呼ばれているような気がする」
「誰かねぇ……」
誰かに呼ばれている……確かにそんな感じがする。
頭の中に浮かぶ城に誰かが呼んでいる。
「よし、悩んでても仕方ないし着替えてここの市長にでも会いに行きましょう。なにか捜索隊とか出して情報を集めてるでしょ」
リーナが立ち上がり着替えへと向かおうとする。
着替えか……そうだよなぁ……着替えるよなぁ……名残おしいなぁ……
エイミーを目で追っていると、その目にエイミーが気が付いた。
一度目が合うも、その目の理由に気が付くと恥ずかしそうに顔を背ける。
「その、また着ますので……あまりジロジロ見ないで頂けると……」
「すみませんでした!」
反射的に土下座の体勢になる。
「いえ、そこまで謝る事では」
迫真の土下座にエイミーが思わずフォローを入れてしまう。
「……アンタは何かアタシには無いの?」
リーナに言われてレオが深々と頭を下げた。
「また水着姿を見せてください」
「そこは別に真似しなくて良いの!まぁ……また水着は着るけど、一回だけなんて勿体無いし」
恥ずかしげに髪を指でくるくるとさせていく。
「とにかく、早く準備して行くわよ」
恥ずかしさを誤魔化すようにリーナが他を置いて急ぎ足で着替えへと向かって行った。
着替えも終わり市長の元へと向かう。
鉱山の街シルヴィオ市長の軍への紹介状を見せたら快く話を聞いてくれた。
俺やレオの言う島は確かに突然と沖合いに姿を現しており、それに対する捜索隊を出そうとしているようだ。
「私はヴィエステの市長ディーノと申します。それで件の島に対して何か話があるとか」
「はい。僕とリョウがあの不可思議な幻覚が起こった後に、何か城のある島が頭の中に浮かぶようになり、そこから呼ばれている感覚があります。捜索隊を出すとの事でしたので、それに同行させて貰いたいのですが」
レオの言葉にディーノが顎に手を当て考える。
「ふむ、にわかに信じ難い話のようにも思えますが、シルヴィオ市長の紹介もありますし同行を許可しましょう。それでですが、何か今回の件に対して心当たりはありませんか?」
「いえ、それに関しては僕達は何も」
「そうですか。貴方達は昨日この街に付いた旅人のようですし、今回の事件は偶然か必然か、何にせよ解決を期待していますよ」
捜査協力を任せられ、調査船へと向かう。
「帆船なんだな」
大きな帆を付けた船がそこにはあった。
「魔法を使って風を起こすし、アンタの居た世界の帆船よりは多分速いと思うけどね」
見た感じでは良く解らないが、何かしら魔法による装置もあるのだろうか。
荷物を纏めて調査船に乗り込む。
調査隊の方々にも挨拶を済ませて港を出た。
島からの声……どうして俺とレオだけに聞こえるのだろうか。
その答えを求めて沖に浮かぶ謎の島へと向かった。




