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6-8 巨岩の鎧兵

 黒い大剣が巨大な鎧兵の手で易々と振り回され、洞窟を崩しレオとリーナに迫る。


「あーもう、なんなのアイツ!なんなのこの滅茶苦茶なやつ!」


 向かってくる巨兵にリーナが雷を放つが、物ともせず向かってくる。


「アンタみたいなデカブツ用のは新しく考えてるのよ!」


 雷を弓の形に模っていく。


「一点集中!」


 力を凝縮させた雷が巨兵の中心を貫いた。


「へ~やるじゃん。意味は無いけど~」


 開いた穴から顔を覗かせてロンザリアがケタケタと煽っていく。


「こいつはー!」


 煽るロンザリアに再び雷を収束させ放つ。


 それを巨兵が大剣をクロスさせ重ね合わせる事で防いだ、大剣は二本とも砕けるも本体までは届かない。


 砕けた大剣も貫かれていた鎧も瞬時に直っていく。


「降伏なんてしても殺すけど、逃げ回られるのも嫌だから早く死んでくれない?」


「嫌に決まってるでしょ!!」


「じゃあゆっくり死んで良いから逃げ回るの止めてよ」


 大剣を横に振るい、風切り音と共に投げ飛ばしてきた。


「ふっざけんな!」


 風の渦を作り出し、大剣を巻き上げ持ち上げる。


「お返しよ!」


 飛んで来た大剣を逆に投げ返した。


 巨兵は飛び来る大剣を無造作に弾き飛ばし、壁に当たった大剣の轟音と岩が舞う。


 岩煙を振り払い、巨兵が新しく大剣を生み出し力を振るって行く。


「このままじゃジリ貧も良い所ね。んで、アンタはまだ起きれないの!?」


 横でぐったりとしてしまっているレオをぶんぶんと振り回す。


「ごめん、あと少しで、戻れると、思うから」


「あーもうっ!とっとと戻ってきなさいよね!」


 サキュバスの精神攻撃の直撃を受けたのだから、簡単に正気に戻れないのはそうなんだろうけど……何にせよムカつく。


 キスなんて、キスなんて、キスなんて!!!!


 がむしゃらに魔法を放ちながらレオを連れて巨兵から逃げていく。


 逃げていく先に涼達が現れた。


「無事だったかと言いたいところだけど、普通にピンチっぽいな!」


 手に魔方陣を描き、エイミーと共に巨兵に攻撃を放つ。


 こちらに気が付いた巨兵が動きを止め直撃を受けるも、一切の傷を付けずにこちらに向いた。


「あれ?ハミルダは負けちゃったんだ。ま、良いや。お兄ちゃんは下がっててね~」


「そうは行くかよ!」


 出れば相手の躊躇を誘えるだろうと前に出た。


 が、予想を外して加速する大剣がこちらに振り下ろされる。


 唸り声を上げて地面に叩きつけられる大剣を必死に避けた。


「潰れちゃっても臭くなるまでは愛してあげるから、何も怖がらなくて良いよ~」


 その言葉の何処に安心できる要素があるって言うんだ。


 続けざまに振り下ろされる大剣に火球を放つも、微塵もスピードが落ちない。


 迫る大剣にリーナが雷をぶつけてなんとか逸らす。


 大剣が地面に叩きつけられ、衝撃が体を突き飛ばしていく。


 吹き飛ばされていく涼をレオが受け止めた。


「すまん」


「いや、僕もようやく動けるようになったから」


 そうは言うが顔は調子が悪そうに見える。何をされたかは知らないが、本調子と言うわけにはいかなそうだ。


 叩き付けた大剣を再び構えて巨兵が迫る。


「アイツはアンタの説得で止められたりしないの?」


「無茶言うなよ、話すら通じないだろうさ」


「それでもちょっとは気を逸らすぐらいはできるでしょ、ちょっとで良いから頑張って」


 威圧を放つ黒い巨兵相手に無茶を言うとは思うが、ここはやるしかないか。


 リーナに頷き接近戦を仕掛ける。


 魔力を纏ったダッシュで大剣の間を駆け抜けた。


 直ぐ目の前で唸る風切り音と、地面や壁が砕かれ弾ける音が鳴り響く。


 こいつは中々にキツイな。


「ロンザリア!お前は倒された部下に対して何か言う事は無いのか!?」


「倒したリョウお兄ちゃんが言う?」


 ごもっともだが気になっているのも事実だ。


「ハミルダと戦ったからこそ、お前の態度が気になるんだよ!」


 俺の言葉に巨兵の動きが止まった。


「それで?ハミルダは最期どんな顔をしてたの?泣いてたの?怒ってたの?」


 最期の顔……


「優しい顔をしてた……何かを気にしてるようにも見えたけど、静かな顔だった」


「ならいいじゃん」


 ロンザリアが鼻で笑った。


 笑いにに思わず睨んだ俺に対して続ける。


「あのね、お兄ちゃんの考えは人間の考えなんだよ。ロンザリアは魔物なの、人間がそう呼ぶように、アタシ達がそう名乗るように」


 巨兵が大剣を持ち上げ構えた。


「好きに生きて、好きに力を振るえればそれで良い生き物なんだよ」


 巨大な足を踏みしめ、大剣を振り上げた。


「死んだ魔物をどうこう思う奴なんて馬鹿だけだよ!」


 ロンザリアの叫びと共に大剣が振り下ろされる。


「そうかよっ!」


 魔力を脚に込め、振り起こる黒い暴風を避けていく。


「いい加減死んじゃえ!」


 巨兵が大剣を重ねて地面へと叩き付けた。


 巻き起こる衝撃と飛び散る岩に、壁へと殴り飛ばされる。


 壁に衝突した衝撃から回復する間も許さず、大剣が唸り声と共に振りぬかれた。


 不味い!そう思った瞬間、迫る黒い大剣を、黒い大剣が受け止め弾いた。


 レオが全身で抱きかかえるように捨て置かれていた大剣を持っている。


「おおおおおおお!!」


 レオが吼え、魔力が噴出し、大剣を肩に担ぎ上げ地面を踏みしめる。その場で回転を込めた一撃が巨兵を殴打した。


 大質量のぶつかる音が響き、殴られた巨兵が大きく後退する。


「こんの、化け物め!」


「それアンタが言う?」


 踏みとどまる巨兵に、リーナが風を蹴り上げ頭上へと駆け上がった。


「このデカブツはぶっ壊させてもらうわ」


 マントが煌きリーナの放つ全力の魔力が巨兵へと直接送り込まれる。


 巨兵はロンザリアの魔力によって作り、保たれている。


 一個の擬似生命体として作られるゴーレムと違い、中にロンザリアが入り直接魔力を使う事で加速度的な再生を可能としていた。


 それを乱すようにリーナの魔力が巨兵の全身を駆け巡る。


 巨兵が大きく揺らいだ。


「くっそぉ……下りろぉ!!」


 頭上のリーナを落とそうと、巨兵が腕を振るう。


「言われなくとも!」


 最後の魔力を叩き込み、風に自分を巻き上げ迫る大剣を飛び越えた。


「レオー!やっちゃえ!!」


 レオが大剣を振りかぶり、全身で巨兵へと叩き付けた。


 大剣が巨兵へと深く切り込まれる。


「駄目、このままじゃ形が保てない」


 崩れそうになる巨兵からロンザリアが脱出する。


 飛び出し下りた正面に、怒りに瞳を燃やすリーナが待ち構えていた。


「よくも、」


 ここに来る間に何度と無く馬鹿にされた。


「よくも、」


 レオに対してキスをした!


「よくも、」


 アタシはした事が無いのに!!!


「よくもやってくれたわね!!!」


 怒りの魔力を込めた拳がロンザリアの顔を捉えた。


 ロンザリアの体が宙を舞い、崩れていく巨兵へと転がり飛ばされる。


 殴られたロンザリアが手を付き、起き上がる。


 ムカツク……


「ロンザリア一人で死ぬもんか」


 目の前で魔法使いがトドメを刺そうと魔方陣を構えている。


「アンタ達も一緒に死ね!!」


 雷が放たれるよりも速く巨兵を自爆させた。


 洞窟内の全て包み弾ける爆風が起きる。


 エイミーが巨大な防壁を張り何とか爆風から俺達を守ってくれるも、周りの洞窟が破壊に耐えられない。


「崩れ落ちます!早く向こうへ!」


 崩れ落ちようとする洞窟から全力で走って逃げていく。


 走る勢いそのまま洞窟の外へと脱出した。


 脱出した洞窟の出口から、内部が崩れ落ちる大きな音が鳴り響いている。


 何と言うか、あいつらしく最期まで派手な散り方だったな。


 ロンザリアはあの爆発と崩落の中では生きては居ないだろう。


 洞窟内の探索はする予定だったが、今回は流石に疲れた。


 それは後回しにして、捕らわれている人々の救助を頼む為にも討伐完了を街に伝えに戻ろう。




 帰り道の間、リーナはずっと不機嫌な顔を変えなかった。


 何度と無く謝り、声を掛けるも全くもって機嫌を直してはくれなかった。


「なぁ、あの間に何があったんだよ?」


 街に着き宿に戻った時、涼が僕に聞いてきた。


「僕がサキュバスに操られそうになったんだ。あれだけ注意されたのに……僕が油断してた」


 あれは本当に危なかった。見た目が小さな女の子とは言っても、それに付け込まれてしまうなんて。


「その時さ、何かサキュバスにされなかったか?」


「キスをされた。あんな方法で攻撃するなんて思っても居なかったんだ、本当に油断してた」


 反省する自分を他所に「あちゃ~」とリョウが頭を抱えている。


「お前さ、とりあえずリーナに謝っとけ」


「謝ったさ、油断してごめんって、次は無いように気をつけるって」


「そこじゃねぇよ!」


「じゃあどこなんだよ!」


 大きく息を付いて涼が尋ねてくる。


「お前さ、リーナとキスした事はあるのか?」


 突然の質問だった。


「あっ、あるわけないだろ!」


 驚き顔が赤くなる。


「だからそこだろ、リーナはそれで怒ってるんだよ」


「今はそんな事は関係ないだろ!」


「いーや、あるね。リーナはお前の事が」


「レオ!こっちを向きなさい!」


 涼の言葉を遮るようにリーナが叫んだ。


 振り向いた先に、怒っている様な、泣いてもいる様な、赤い顔を浮かべたリーナが睨みつけている。


「リーナ……」


 リーナが意を決したかのように目を瞑り、こちらに顔を近づけてきた。


 思わず両肩を掴み自分から引き離してしまう。


 離されたリーナが目を開けた。


 開けた目に涙が滲みあがる。


 何かを言おうと口を開くも、リーナが肩を掴む腕を振り払った。


「レオの……馬鹿ッ!馬鹿ッ!馬鹿ッ!!!」


 宿の階段を駆け上がり、リーナが自室へと向かう。


 ドアが大きな音をたてて閉まった。

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