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1-3 改めまして質疑応答

「えーっと、何だか任されちゃったから知りたいことがあったらなんでも聞いてね。僕がわかる範囲でなら答えられるから」


 話を投げられたレオがこちらに話しかけてくる。


「なんか、ごめんな」


 面倒事となっている自分が申し訳なくなり謝るも、逆にレオはこちらを励ましてくれる。


「困った時はお互い様だよ。突然……遭難といえば良いのかな?知らない土地に迷い込んだら不安になるのは当たり前さ」


 レオは気にする事はないよと言った具合の笑顔をこちらに向ける


「はー、この世界に来て初めて会った人がレオみたいな人で本当に助かったと心から思うわ」


 大きく安堵のため息をつきながら本心でそう思う。


「ちょっとアタシはどうなの」


 リーナが突っかかって来たのでそれに答えながら話を続ける。


「いや、リーナにも感謝してるって。それで聞きたいことなんだが」


 頭の中でごちゃごちゃになっている質問事項を整理し、まずは先程のリーナからの質問の意味を聞くことにした。


「さっきリーナが手をこっちに向けてきたけど、あれはなんだったんだ?」


 最初の質問に対してレオが答える。


「あれは手の前に魔力を集中させてたんだ、慣れていない人には見えない位に。リョウには見えなかったんだよね?」


「手を出してるようにしか見なかったな」


「そうか」とレオが頷くとこちらに質問が来る。


「リョウが居た世界には僕たちが言う魔法みたいなのは無かったのかな?」


「うーん、俺が居た世界だと、あったとしても作り話の中だけだな」


「へー、じゃあ本当に僕たちが住んでる場所とは違う所から来たんだね」


「なんだよ信じてなかったのかよ」


 イヤミっぽく返すとレオが少し笑いながら答える。


「どうしても変な話だったからね。本当に他の世界から来たなんて」


 それもそうだ、突然異世界から来ましたと言われても信じる方が無理だ。


「まぁな凄いだろ。って俺が自慢できるような事でもない気がするが」


 ふと、手をかざして見て思う。ここに来た時に感じた魔力の感触。


 あれは自分の力ではなかった。しかし、自分で身につけることは出来るのだろうか。


「魔法って俺も使えたりするのかな」


 涼の呟きにリーナが答える。


「アンタの努力次第じゃない」


 素っ気無い答えだったが「自分にも使える」という事実に心が躍り始める。


 そこからは色々な事をレオに聞いていった。


 まずは俺が喋っている日本語はレオ達には自分たちの国の言葉に聞こえるようだ。


 試しにお互いに文字を書いてみても同じ事だった。


 文字が単語として成り立った時点でお互いに相手が読める字として目には映るようになる。


 リーナに他の国の言葉を使ってもらっても結果は変わらなかった。


 リーナ曰く翻訳の魔法なんてものはこの世界には存在せず、空間を移動する魔法は理論的には出来ても途方もない魔力が必要で現実的じゃなく、異世界に渡るなんて魔法は理論的にも絶対に無理との事だった。


「そんな訳も分らない空間を通ってきたんだから、最初のアンタの体にはあんなに魔力がくっ付いてたんでしょうね」


 俺の体が治っていたのはその途方もない魔力が体に付いていたせいで、回復魔法と同じような働きが勝手に起こったせいらしい。


 質問は続き、この世界の技術面や世界の情勢などを聞いていく。


 技術としては何と言うか想像通りと言うべきか、自分が元居た世界と比べると一つも二つも昔の世代で、科学の代わりに魔法が発展している世界であった。


 魔法に関しては、魔力は子供にも使える物で、そこから魔法として使うには鍛錬が必要な物らしい。


 そして今、この世界は魔王軍の脅威に晒されている!


「やっぱりあるのか魔王軍!」


 声を上げた俺に、不思議そうな顔でレオが尋ねる。


「やっぱりってリョウの世界にも居るものなの?」


「いや俺の世界には居なかったけど、こうやって飛ばされた世界にはあるもんなんだよ」


 その言葉にレオが少し顔をしかめるが、浮かれている俺はそれに気が付かずに続ける。


「そうか、あるんだな魔王軍。幹部とかも居るんだろなぁ、俺もその為に呼ばれてたりして……そうだ!レオ達は打倒魔王軍だったりはするのか?」


「僕たちは別に……村のお使いに出ているだけだよ。元々は他の大人の人が行く予定だったんだけど、リーナがどうしても外に出たいって言うから」


「良いでしょどうせ暇だったんだし、ちょっと町に行くぐらい」


 嫌そうなレオに噛み付いたリーナの言葉を聴き、そこらの森を見渡し思う。


「やっぱりこの辺って田舎なのか?」


「田舎も田舎、ド田舎よ。物はない、となりの村まですら一日かかる、独り立ちしていい年齢になったら絶対に出て行ってやるんだから!」


 立ち上がり宣言するリーナをレオが宥めようとする。


「まぁでも、田舎なおかげでここまで魔王軍は来ないし、静かで良い所だと思うし、僕はこのままでも良いと」


 宥めたいのか、そうでもないのか。そんなレオの言葉を聴いてリーナが怒り始めた。


「良いわけ無いでしょ!ぜったいにこんな村からは出て行ってやるんだから!それに出るときはアンタも一緒だからね!」


「えぇ……」


 気が付けば二人の言い合い……と言うよりもじゃれ合いのようになってしまっていた。


 仲が良いんだなこいつら……


 二人の喧騒を聞きながら満天の星空を見上げると、そこには二つの月が浮かんでいる。


「そうか……俺は本当に異世界に来たんだな」

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