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5-1 謎の襲撃者

 俺達は旅を再開していた。


 エーテルを貰い受け、村の人たちに別れを告げて道を歩いている。


 エーテルの洞窟には一度様子を見に行き、中での作業の様子などを見学させてもらった。


 目には焼き付けておいたつもりだが、輝く洞窟の事を思い出すとカメラがこの世界には無い事を悔やんでしまう。


 うーん、俺がカメラの作り方か構造でも解れば何らかの形で再現できたのだろうか。


 旅を再開して数日が過ぎ幾つかの村を訪れたが、次の村への距離を考えると今日は道中での野宿となりそうだ。


「野宿って久々だな」


 日も落ちてきたので寝る為の場所の確保や、各種家具を用意していく。


「無理せずに近くに村があればそこで泊まってたからね」


「野宿って準備が面倒だし、お風呂も髪をちょっと流すぐらいになるし、外で寝なくちゃいけないし、あんまりやりたくないのよね」


「でも、私は外で寝るのが初めてですので、ちょっと楽しみです」


「そう?」と聞くリーナにエイミーが「はいっ」と笑顔で答えている。


 俺としては野宿は割りと賛成派だった。


 勿論何日も続いていくと嫌になっては来るだろうが、やはり夜空の下で寝ると言うのは旅をしている感じがして良い。


 その日の夕食は俺が作り、組み立てた机を囲い皆で食べる。


「なんで、アンタまで料理が出来るのかしら」


 夕飯を食べながらぼそっとリーナが呟いた。


「君が料理を作ろうとしないだけでしょ」


 最近のレオはリーナの料理の事になると少しだけ冷たくなっている気がする。


 まぁあれだけ言われて完全に拗ねてしまっているリーナに、いい加減諦めが来ているのかもしれないが。


「リョウさんって自分で料理を勉強したんですよね?」


 食べている手を止めエイミーがこちらに聞いてきた。


「ん?そうだけど」


「んー。なんだか私の料理よりも美味しい気がします」


 俺の作った料理を食べながら真剣な顔で考えている。


「そうかな?」


 自分の料理を美味しくないとは言わないが、エイミーの料理も美味しいし、そう味の差なんて出ていないと思うが。


「いえ、そうです!今度機会があれば私に料理を教えてください」


 そう言われると断れないけど、しかし何を教えればいいんだろうか・・・


「うーん、そうだ、俺の世界の、と言うよりは国の料理を今度教えるよ。材料とかは似たようなのを見るし」


「はいっお願いします」


 夕食が終わり、片づけをして魔法の勉強が終わると寝る準備を始める。


 生憎と空は満点の星空とは言えず少し雲が掛かっていたが、雰囲気としては悪くないだろう。


 明かりも消して全員寝袋で眠り込む。


 全員が寝静まった頃、異変に最初に気が付いたのはエイミーであった。


 何か誰かが近づいてくる気配がある。


 周りにはリーナが魔物避けを張っており、その辺の魔物なら寄って来ない様になっているはずなのに。


 何か嫌な予感がするとエイミーが寝袋から出て立ち上がる。


 立ち上がったエイミーにレオが気が付いた。


「どうしたの?」


 寝ぼけ眼でレオが尋ねる。


「何か、魔物がこちらに近づいてきます」


 その言葉にレオの頭が目覚めた。周囲を警戒し、涼とリーナを起こす。


「うーん、なんだ?」


「なぁに?こんな夜中に」


「二人とも起きて、敵が来てる」


 レオに言われて俺たちも目が覚めた。おいおい夜襲かよ。


「周りに何体居るか解る?」


「固まった3体が二組に分かれて、こちらに向かっています」


 それを聞いてリーナがこちらに指示を出した。


「場所がばれてるなら、こっちも気付いてるぞってアピールした方が良いわね。リョウ、ちょっと薪に火をお願い」


 言われて魔法で火を付け、焚き木の火で辺りが照らされていく。


 襲撃者の姿はまだ見えなかったが、暗がりの向こうからキーキーと甲高い声が鳴り響いた。


「おい!相手気が付いてるぞ!お前等何かしたんじゃないだろうな!」


 その声に応える様に反対側からも声が鳴り響く。


「うるさい!俺達がへまするわけ無いだろ!お前達こそ何かやったんだろ!」


 両側で下手な口喧嘩が繰り返されていく。


「キーキーうるさいったらありゃしないわね」


「何を言ってるんだろう」


 リーナとレオがこの喧騒を聞いて呟いている。


 おや?何を言っている?


「ん?相手の騒ぎの内容って聞こえないのか?」


「ええと、キキークワーシャーみたいな感じにしか」


 俺の疑問にエイミーが答えてくれる。……ふむ、成る程。


「これって魔物の言葉で喋ってるのか」


 俺からしてみれば今でも口煩い喧嘩が続いているが、皆には恐らく何か獣の様な言葉で聞こえているのだろう。


「アンタ魔物の言葉も解るって、本当に便利な体質してるわね」


 リーナが少し驚いた顔をこちらにむける。


「あれ?でもリーナ達も魔物と喋ってる時があったよな?」


「あれは相手がこっちの言葉で喋ってたのよ。言葉が喋れる魔物は大体こっちの言葉で喋ってくれるけど、今回はそうでもないみたいね。それで、アイツ等なんて喋ってるの?」


「えーと、奇襲に失敗したのはお前のせいだ!いいや、お前だ!って感じだな。後は人質とかどうとか」


 そう言っていると魔物がこちらに叫び始めた。


「キーッ!オマエラノオンナ!オレタチツイテコイ!キーッ!」


 なんだなんだ、突然片言になったぞ。


「何だかこっちに交渉でもしたいみたいだね」


 そのレオの言葉で理解した。そうか、レオ達に解る言葉で喋り始めたのか。


「オマエラノオンナ!ヒトジチ!キズツケダメ!ダカラクル!キーッ!」


 叫び続ける魔物をどうしようかと皆で集まり話していく。


「どうする?一応こちらに危害を加えるつもりはないみたいだけど」


「どうもこうも、人質とか言ってんだから相手の意見は無視よ、無視」


「どうやら無傷で私とリーナさんを捕らえたいみたいですが、目的はなんでしょうか?」


「さっきまでの話だと何だか上の奴に無傷で捕えろって言われているみたいだな」


「サッサトシロッ!キーッ!」


 話していると相手から催促が飛んできた。


「ああっもう!うるさいわね。アンタ達!目的はなんなの!?アタシ達を捕えて何をしようって言うの!?答えなさい!!」


 リーナが魔物たちに向かって叫び返した。しかし、何故か答えが直ぐに返って来ない。


 しばらくして魔物が叫んだ。


「ワカラナイッ!ユックリイエッ!キーッ!」


 まさかの返答に思わず噴出してしまう。


 リーナが地団駄を踏んだ後にまた叫び返した。


「アンタ!!何が!!したい!!の!!?」


「オシエナイッ!キーッ!」


 まぁ敵に教えないってのは普通の反応と言えばそうなんだろうが……


 返答にリーナがぷるぷると震え始めた。魔力が目に見えて溢れ出して来ている。


「あったまきたっ!!」


 リーナの手に魔方陣が描かれる。


「エイミー!場所解るでしょ?捕らえて!」


「えっでも……」


「いいから!」


「はいっ!」


 慌ててエイミーが目を瞑り、場所を把握して光りの鎖で捕えた。魔物達の驚きの声が上がる。


「消し飛べ!!」


 声がしていた方向に雷が轟き落ちた。


「やばい!魔法使いだ!お前等逃げろー!!」


 逃げていく魔物達の声が聞こえる。どうやら狙いは外してしまったようだ。


「チッ、外した。もういい、寝る!」


 本気の舌打ちの後、リーナは寝袋に入って横になった。


「さっきの魔物は何だったんでしょう?」


「さあな」


 エイミーの疑問に肩をすくめて答える。


 なんにせよまだ夜中だ。早く寝てしまおう。

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