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万難を排するは安寧

作者: ののこと

 ガチャリと遠くからカナ音。

 そしてバタンと内外を仕切る板切れがうるさく鳴く。

 とても寝ていられたものではない。

 たまらず包まるもふもふの温かきこと至高なり。

 このままもうひと寝入りといきたいものだ。

 然しながら、自身に木霊するひもじさは如何ともし難いものがある。


 致し方なし。

 ゆっくりと、惜しさを隠さずにゆっくりと這い出る。

 外は最近と変わりなく空気が冷たい。

 ブルッと身体を震わせて、四肢を伸ばしてのびをしてみる。

 うむ、まずまずだろう。


 そこで半開きの板切れが目に入る。

 もっと外に繋がるそれは私にとって蠱惑的で、ついつい近づいてしまう。

 そこは一段と寒い世界になっており、すぐにでも逃げ出したいくらいだ。

 それでも、少し奥。

 数歩進んだ先からは明かりが漏れていて、花開いた香りが漂う。

 ふむ、身繕いをしているようだ。


 それではと踵を返し、元の世界へと舞い戻る。

 やはり落ち着くものだ。

 端へと歩き向かい、用意された夕餉をいただく。

 あくまでも優雅に、高貴に。


 食べ終えて、口元を整える。

 私は綺麗好きなのだ。

 一通り整うと、少し考える。

 そして視線の先には、我がもふもふ。


 再び潜り込んだもふもふ。

 少し冷えているが、じき温まるだろう。

 そうする内に足音が聞こえる。

 身を繕ってきたのだろう。


 小さくほくそ笑む。

 恐らくやつは眠りにつく時、もふもふがひえひえだと思っているだろう。

 だが私のお陰でぬくぬくになっている事に驚愕し、またしてもひれ伏すであろう。

 想像すると笑いが止まらない。


 さて。

 万難を排して、待ちかまえていよう。

 こうしてまた、私は安寧を貪る。

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