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ベーコンエッグ その2

テペヨロトルがジャムが塗られた方のパンをかじる。


さくっと香ばしい音がした。


そういえば苺やスイカは野菜だという。


ジャムとはいえ野菜嫌いが野菜を食べた……と思ってつい緊張してしまう。


「ど、どうだ?」


「あんまああああい!」


「美味しいか?」


「とっても美味しいね。これはえーっと、なんだっけ?」


「苺ジャムだ」


「苺ジャムかぁ。とても好きです」


続いてテペヨロトルは目玉焼きを食べる。


彼女はどうやら白身から食べていく派らしい。


器用にナイフとフォークで白身を切っていった。


司は目玉焼きに塩を振ると、下に敷いてあったベーコンと一緒に半分に切ってパンの上に載せる。


少し厚めのトーストなので口を大きく開かないといけないが、大きく開くからこそ「食べてる」と強く実感できる気がした。


噛みしめると、パンに塗られたマーガリンの風味がベーコンの塩味と混ざり合い、卵の白身のぷりぷりとした食感がたまらない。


「わあ、それテペヨロトルもしたい!」


もぐもぐもぐっと、ジャムのついているパンの半分を食べると、テペヨロトルは司の真似をした。


二人でオープンサンド状態のベーコンエッグを食べる。テペヨロトルが卵の黄身に到達した。


黄身はとろけ落ちないくらいのほどよい半熟加減だ。


濃厚な黄身の美味しさが口いっぱいに広がって、テペヨロトルの顔がほころんだ。


「お、美味しい。美味いよぉ。あのねあのね!黄色のところがトロッとしてて、とっても良い感じ。目玉って焼いても美味しいんだぁ」


「そ、そうだな。ともかく気に入ってくれたみたいでよかった」


司はほっと一息つきながらカップのコーンスープを飲む。


コーンの甘みが感じられるクリーミーな口当たりで、パンにぴったりの味だ。


お腹が温まって心地よい。


「あちちちち」


スープを一口飲んでから、テペヨロトルはオレンジジュースも飲んだ。


「ぷはー。これも好き。甘いけど、さっぱりする!」


「オレンジジュースも好きなんだな」


果物がたっぷり入った野菜ジュースなら、テペヨロトルも飲んでくれるかもしれないな。


と、つい考えてしまった。


食べるたびに何かを発見して、喜んだり驚いたりする彼女に、司はなんともいえない気持ちにさせられる。


うまく言葉にできないが、それが悪い気はしなかった。


不意に、司のスマホが鳴った。


食事中だが液晶に表示された相手の名前を確認して、通話ボタンを押す。


『も、もしもし!司?司なの?』


「どうしたんだひじり?さっき、うちに来たみたいだけど」


『え?あの……な、なんでもないわ。とにかく無事なのね』


「無事もなにも……そうそう、さっき玄関に出てきた女の子なんだけど……」


司はテペヨロトルのことを、どう伝えるべきか迷った。見ず知らずの少女を保護している……なんて言って良いのだろうか。


ひじりに「警察や大使館に連絡すべきだ」と正論を言われると、返す言葉もない。


『女の子じゃないわよ!』


「え?女の子じゃないって……」


聞き返した司に、ひじりは早口でまくしたてた。


『お、女の子!そうね!そうそう女の子よ!なんで司が女の子と一緒にいるの?どういう関係なの?説明してちょうだい!』


「えーと……それはその……」


拾った。


なんて子猫じゃあるまいし、かといってテペヨロトルの姿をひじりに見られた以上、遠い親戚とは言えない。


金髪碧眼褐色肌で、外見的に違いすぎる。


嘘をつくのは心苦しいのだが、司は両親に頼ることにした。


「母さんの知り合いの娘さんだ。日本の食文化に興味があるらしいんで、今はその……うちにホームステイしてもらってる」


『そんなわけ……え、あ……うん。そ、そうなのね』


先ほどから司以上にひじりの方が動揺しているようだった。


「大丈夫かひじり?」


『大丈夫よ!司は、その……彼女に逆らうなっていうか、な、仲良くしなさい!』


「あ、ああ。そうするよ」


『ともかく、絶対にその子を刺激しないようにね!』


「刺激って……例えば?」


『小さくて可愛い女の子に、手を出すなんて馬鹿な真似はしないでって意味よ!』


「お前、俺のことをなんだと思ってるんだ」


『本当に心配してるのよ。今から対策を練るから……ともかく無事でいてね』


ひじりの方から通話は切られてしまった。


うまく(?)ごまかせたようだが、つい、司の口からため息が出る。


嘘をついてしまった。それに、一緒に食事をしている最中に電話というのも、テペヨロトルに失礼だ。


「ごめんなテペヨロトル。食事中に電話なんかして……あっ」


「美味しいのに残したらもったいないから、テペヨロトルが食べておきました」


司のベーコンエッグの残り半分が、お皿の上から消えていた。


「ごちそうさまでした」


「あ、ああ……おそまつさまでした」


ピンポーン!


司が唖然としたところで、新海家に来客を知らせるチャイムが鳴った。


「またひじりか?」


残りのパンに手を着けられないまま、司はインターホンをとった。


液晶画面が切り替わり、マンションの玄関ロビーが表示される。



そこには見知らぬ外国人の女性が立っていた。

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