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第二世界  作者: 長月 萩
99/115

本文98 包むのは無理

「料理人に菓子の専門家が居たろう?そいつで一回にどれぐらいの飴を造れるんだ?」


「コツは無いのかも聞いたんだけどな、火から下ろしたら、時間との勝負になるから、どんなに手早くやっても一回に五十個程が限界なんだと。あいつらで五十なら、俺らには三十出来れば御の字だろうよ」


 厨房から出て来てたヨハンさんが、そう答えた。



「飴の造り方が解ってないんですが、火から下ろして何をするんですか?」


「火から降ろしたら、練って棒状にするんじゃ。それを適当な大きさに切ってから丸めるんじゃよ。わしも三十個までしか造ったことが無いんじゃよ…」



「棒状にした飴が固まらなきゃ良いんですよね?固まるのは冷えるせいなんだから、熱した鉄板の上においたらどうです?溶けないで固まらない温度がどれくらいなのかは解らないんですけど」

 飴の造り方ってそうしてたよね?まぁ、鉄板の上でも上になってる所が固まらないよう、グニグニ捏ねてた気がするけど。


「だが、それだと、鉄板に面しているところは、固まらないが、上から冷えて固まってしまうのでは無いか?」


 カシムさんに指摘されました。

「だから、鉄板の上で捏ね続けるんです。一人でやるのは難しいですけど、魔力切れたら手作業するしか無いんですから、一人が捏ねて、一人が棒にして切って丸めるとか。三人いたら、更に分業出来ますよね?捏ねる人、棒にする人、切って丸める人。…棒にして切る人、丸める人のが良いですかね?」


「混ぜ合わせるのを鉄板の上でやるわけか。…料理人には出来るだろうが、俺らには鉄板も無ければ、その最適温度が解らないからなぁ」

 

 あ、デッカードさんに言われて気が付きました。そうそう鉄板なんて売ってないですよね。それだけじゃない。

「あ、手作業ならポーチや倉庫にしまっても、問題無いんですよね。鉄板は忘れてください」


「いや、固まるのを遅らせるのは良い考えだぞ?菓子職人に話してみる。あいつ等の手早さなら、もっと数が伸ばせるかも知れないからな。あいつ等が造れる数を増やしてくれたら、それだけこっちの負担が減る」


 ありゃ。ヨハンさんは乗り気になっちゃいました。…負担が減る事を喜ぶって事は、納品の売上より苦労のが多いって事?そんな疑問を、デッカードさんの科白が解消してくれた。



「料理人は仕事が終わってからするか、合間にするしか無い。店を休む訳にはいかないから。うまい具合出来たとしてもそう大量には無理だろうな…。時間が有るのは〔薬師〕なんだが、最適温度を割り出すのに一番近い所に居るのは、実験の時間が取れない〔料理人〕なんだから、世の中上手くいかないな…」



 しみじみ言われても…。店やってない自由時間の多い〔料理人〕さんは居ないんですかね?


「〔薬師〕は粉にする所からしないと〔工程省略〕が出来ませんから、何度も実験するのはしんどいんですよね。第一回とうたわれてる以上、競技大会が今後も続くのであれば、毎回こんな苦労をさせられるんでしょうかね?」


「毎回、粗品が飴とは限らんがのう。次は別の職人が苦労するかもしれんのう」



 なんか引っ掛かる科白を聞いた気がするんだけど…

「〔薬師〕は?…〔料理人〕は違うんですか?」


「〔料理人〕は粉からでも、〔工程省略〕出来るんですよ。同じ物造ってるのに、職業によって、必要工程が違うことが有るんです」


 カシムさん、ご丁寧にありがとうございます。…変なの。

 すり潰して混ぜてこそ〔調合〕なんですかね?すり潰してるだけでも〔調合〕増えるもんな。…じゃあ、すり潰してても〔料理〕は増えない?ゴマすりしてても?香辛料造ってても?それとも〔木工〕と〔細工〕みたいに、被る所が有るのかな…。



「〔工程省略〕じゃなくて、煮溶かす所と丸める所に〔短縮〕かける方が多くできるかもな。地味に紙に包む工程が一番しんどいかもしれないが、あれを省略は出来ないからなぁ。紙に包む、五個ずつ袋詰めする、この工程を〔短縮〕したいよな…」


 え?そうなの?紙に包んで完成じゃないの?今度はデッカードさんの科白に疑問を覚える。

 同じ疑問をダグラスさんが聞いてくれた。


「五つずつ袋詰めは仕方ないとしても、紙に包むまでが工程じゃないんですか?」



「飴が出来たら完成扱いなんだよ。実際、そのまま瓶詰めで10個幾らで売ったりもするしな。ポーションの瓶詰めをいつもしてるだろう?ポーションも〔工程省略〕では出来上がるまでで、瓶詰めはしてくれないんだよ」



 なんと!…入れ物なんでも良いって言ってたもんな。

 …瓶を一から造ってたら省略出来ないのかな?あ、ポーチや倉庫に入れる段階で工程が途切れるから、やるなら同時にしなくちゃいけないのか?…瓶を造る熱を使ってポーション造ってみたりとか…無理か。



「いずれにせよ、一種一万個なら、十四カ所で一日に一種を百ちょいずつ造れば、二十日までには出来るじゃろ。多くなることはあっても、少なくなる見込みは無い量なのがネックじゃが…異邦人がどれだけ参加するかじゃのう」



 一日百個なら、二人で造れば、全部手作業でもそんなに大変じゃ無いかも。…二十日間毎日ならしんどいか?



「飴をそんなに大量に造って、素材の値段があがったりはしないんですか?」



 フランクさん、もっともな疑問ですよね。確かにそうだ。



「役所が調整してるんだろう。素材は役所が持ってきてくれてるからな。どうせなら乾燥させた奴、持って来てくれれば良かったのにな。大量に失敗しなかったら大丈夫なはずだ。失敗重ねて素材が足りなくなったら自腹だ。…煮溶かすのは〔短縮〕した方が良いかもな。砂糖と水飴以外の素材は、そんなに大量には使わない。多分一番高くつくのは砂糖代だ」



 今度はジョルジオさんが答えた。

 焦がしたら台無し、丸める前に固まったら台無し?…〔保温〕かけて固まるの防げないかな?固まってきたら〔加熱〕で柔らかくするのも不可だったり?…〔工程省略〕や〔工程短縮〕使わないなら、使っても良いんだよね?


「今日の所は弟子が造るだけで、終わりになるじゃろうのう。明日からが本番じゃ。〔省略〕と〔短縮〕で分業、どっちもやってみて、効率の良い方でしたら良いじゃろ。どっちにしろ弟子達は単純作業ばかりになるが、まあ、〔調合士〕〔薬師〕の仕事自体が単純作業の繰り返しみたいなもんじゃ」


 うんうん、と皆さん頷いてます。あ、ダグラスさんだけ「え?」な顔してます。弟子に成り立て?



「〔付与魔法〕の魔法石を融通して貰って助かったよ。探すのも大変だから、造るのは無理かと思ってたんだ…これ終わったら十個程ストックしておくか。誰か協力してくれないか?」


「うちは〔治癒魔法〕が無いから交換するか?〔付与魔法〕よりは使える奴が多いが、魔力だけくれ、とは言いにくくてな。…〔治癒魔法〕が使えないから、〔調合士〕になったのに、たまに使うから困ってたんだ」


 ヤシロさんが頷いて、ジョルジオさんとデッカードさんの間に合意がなされたようだ。

 …魔法の成長も出来るのに、魔力込める事は嫌がられるの?


「嬢ちゃんは平気で、魔力が空になるまで込めるが、普通は自分が使う為に残しておきたがるんじゃよ。〔薬師〕や〔調合士〕は回復ポーションを自分で調達出来るが、他の者は時間回復を待つか、買うかせばならんからの」


 あ、魔力回復ポーション結構高いんだった。買わないから実感無いけど。寧ろ魔力は余ってる事のが多いし。持久力が一番足りてないよ。


「流石はグスタフさんの弟子ですね。やることが豪快だ」


 …カシムさん、それ女の子への誉め言葉じゃないよね?


「グスタフが女の子の弟子を取った、と聞いた時には心配したが、大丈夫そうだな」


 …ジョルジオさん、根拠はなんですか?


「回復ポーション沢山用意しておけよ?行動範囲広いからな、この人」


 …デッカードさん、忠告ですか?



 薬師三人とナハトさんが頷いて、残りの四人は首を傾げている。…なんのフラグよ、これ。

 

 



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