本文97 役割分担
集まったのは薬師が私とグスタフさん抜いて三人。その弟子の調合士達が五人。料理人は皆書き入れ時なので、ヨハンさんが仕事の合間に話を聞いて、後で連絡するそうだ。
「飴を造るのは、〔薬師〕の工房が四カ所、〔料理人〕の店が八カ所、店は無いが厨房が整っている二カ所。あわせて十四カ所で造る事になる。人数は四十人」
「その中で〔工程省略〕〔工程短縮〕が出来る者は〔薬師〕三人、〔料理人〕六人の九人じゃ。この九人は〔工程省略・短縮〕を優先する。その二つと〔付与魔法〕が被ってないのが、薬師側で三人、料理人側で三人。この六人は〔付与魔法〕を優先する。以上三つと〔治癒魔法〕が被ってないのが薬師側で二人、料理人側で四人。この四人は〔治癒魔法〕を優先する」
「〔工程省略・短縮〕が出来なくて、魔法も使えないが〔乾燥〕〔破砕〕が使える者が料理人側に十四人おるんじゃ。その者等は〔乾燥・破砕〕を優先する。どれも出来ない者は、悪いんじゃが、使いっ走りをして貰うぞ。薬師側で一人、料理人側で四人じゃな」
「何をしたら良いんでしょう?」
男の子が一人声をあげる。…この子小学生ぐらいじゃない?使いっ走り認定された子かな?
「わしの所に一旦、魔法石と生のリカバ・エムピ・スタミン、粉にしたリカバ・エムピ・スタミンを集める。それ以外の素材、リバイブと砂糖と水飴は各自で保管じゃ。魔力水はわしの所で造るんじゃ」
「お主の仕事は、一日一回、各工房を回って、空の瓶・粉にした素材・生の素材・魔力を込めた魔法石を集めて、わしの所に持ってくる。わしの所から魔力水の入った瓶・生の素材・空の魔法石を各工房に配りに行く。お主が回るのは薬師側だけで良い。出来るの?」
男の子は頷いた。
「素材や魔力水が完全に無くなる前に、回ってきたこの子に伝えるんじゃ。忘れたら自分で取りに来たら良いがの。数がややこしくなると適わんから、魔力水を造った魔法石は瓶に入れたままにして貰えるかの。さて、ここまでで質問は有るかの?」
全員首を横に振る。
「では、これが魔力水じゃ。20ℓあるから、当分持つじゃろう。完全に魔力水になるのは…そうじゃな、夕方六時過ぎなら大丈夫じゃ。そして〔治癒魔法〕と〔付与魔法〕が出来る者には魔法石を渡しておくぞい。20ℓじゃから、魔力40じゃぞ?足りんかったら魔力水が出来んし、50以上入れたら割れるからの。割れたら弁償して貰うぞい」
「こっ、こんなに渡されても魔力が足りません!しかも一つに魔力40なんて!」
10個渡された弟子の一人が青くなっている。20ℓはグスタフさん仕様でしたか。やっぱり。
「なに、一気に込めよ、とは言うてはおらん。余裕がある時に込めたら良いんじゃ。寝る前とかに余った分を込めるぐらいは、出来るじゃろう?必要が有るならそっちに使えば良いんじゃ。無駄にせんように多めに渡すだけじゃよ。10個でもまだ魔力が余りそうなら、言って貰えれば更に渡すぞい」
「全員の人数から言って、〔治癒魔法〕に比べて〔付与魔法〕を使える者は少ないんじゃ。〔付与魔法〕が使える者は、〔付与魔法〕を込めて欲しいんじゃ」
「〔工程省略〕をもう一回はできないけど、それ以下ならある、もう一度〔工程省略〕をする予定は無い、と言う場合に込めたら良いんですね?」
「そうじゃ。あくまでも〔工程省略〕優先じゃの」
「問題は造るのが飴だって事ですね。ポーションならまだしも、飴をそんなに大量に造った事なんて無いです。〔工程省略〕を使った所で一日にどれだけ造れるか…」
「それはわしもじゃよ。溶かすまでは良いが、伸ばして切って丸める時間を考えると、そう大量には造れんしのう」
「固まる前にポーチや倉庫にしまっては駄目なんですか?」
弟子の一人が聞いた。それ、私も思いました。
「ポーチや倉庫にしまってしまうと、工程がそこまでになってしまうんだよ。…今回は〔工程省略〕ではなく〔工程短縮〕にして鍋ごとしまうか、伸ばした状態でしまって、後は手作業でする方が、数が稼げるかもしれませんね」
さっき〔工程省略〕を使うと言った薬師さんが言った。
「オレは〔工程短縮〕までしか、まだ使えないからなぁ。どこの工程を省略したら一番楽になるんだろうなぁ?」
一人の薬師さんが言う。〔工程短縮〕。さっきからちょこちょこ出てきてますけど、特技ですよね?
とか、考えていると、グスタフさんが顔色を読んでくれたようで、説明してくれた。
「〔工程短縮〕と言うのは、工程のうちの一つだけを省略出来る特技じゃよ。〔工程省略〕の前に覚える特技じゃ」
工程一つだけ省略か。一番手間の掛かる工程を省略すれば良いんだね。飴造りなら…どこになるんだ?
「焦って焦がさないように、溶かす所に使うのが一番無難じゃないのか?」
魔法石を受け取らなかった薬師さんがそう言った。
因みに、〔工程省略〕発言はカシムさん、〔工程短縮〕発言はジョルジオさん、魔法石を受け取らなかったのはデッカードさんと言うそうです。
カシムさんは〔工程省略〕〔付与魔法〕が使えて、その弟子のナハトさんは〔治癒魔法〕と〔付与魔法〕が使えて、ラシッドさんは〔治癒魔法〕が使える。
ジョルジオさんは〔工程短縮〕と〔治癒魔法〕が使えて、弟子のフランクさんは〔治癒魔法〕が使える。
デッカードさんは〔工程省略〕が使えて、弟子のヤシロさんが〔付与魔法〕を使えて、ダグラスさんは使いっ走り。
…多分明日には、弟子の人の半数は名前忘れてそうな気がします。薬師さんも危険です。ごめんなさい。この世界がファーストネームだけで良かった。カタカナ名の人たまに三つも四つも名前有ったりするからな。でも、今の所は無いけど、そのうち名前被りも出て来そうだね。
それにしても男性ばかりなのはなんでだろう?女の子成分が足りないよ?
「ところで、お主らの所には弟子が一通り造るだけの素材は有ったのかの?折角の機会じゃ。一から造らせた方が良かろう」
皆さん口々に既に用意はしてある、と言ってました。皆様用意の宜しいことで。
「既に造っている魔力水と、粉にした素材はどうしたらいいですか?と言っても、5ℓしか無いし、素材も大した量は無いんですけどね。まだ皮を剥いている所で連絡が有ったので」
カシムさんの所は両方揃ってるから、自前でもなんとかなったんですね。…両方揃ってるのはグスタフさんとカシムさんの所だけ。つまり、半分の工房しか自前で調達出来なかったんだ。
料理人側の〔付与魔法〕と〔治癒魔法〕使える人の少なさはびっくりだね。それなのに、覚えるかどうかは別としても、異邦人は全部覚えられるんだよね?バランス大丈夫なの?
「好きにしたら良い。魔力やら特技の融通はするが、売上は各自が納品した分じゃからのう。まだ剥いておらん分は、こっちに渡してくれたら良いぞ」
「今有る魔力全部使って、五個込めましたが、どうしますか?ここで渡してしまいますか?後で纏めて渡す方が良いですか?」
仕事が早いナハトさん。あ、ヤシロさんが慌てている。
「全部使っても三つしか込められません…」
さっき青くなって発言したのはヤシロさんだ。あまり魔力が無いんだね。
「じゃあ、それらと空の魔法石を交換するかの。…無理せんで良いからの?〔付与魔法〕を使える者は少ないから、皆で協力する事にしたんじゃ。さっきも言うたが、他に使う予定があるんじゃったら、無理に込める事は無いからの?」




