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第二世界  作者: 長月 萩
91/115

本文90 徒弟制度

「ちょっと待ってください!中央の武器屋さんで扱えないクラスって、これ幾らなんですか!?」


 気持ちは解る。私もそれが聞きたいよ。私のそれより高いの解りきってるんだよ?


「小さい方で22,000圓だ。大きいのは25,000圓だな。これでも、ドミニクの弟子でアドルフが連れてきて、嬢ちゃんの知り合いって事でかなり割り引いてるぞ?」


 あ、二人とも硬直してる。生きてる?ねぇ、生きてる?割り引かなかった金額が気になるのは私だけですかね?


「そんなに払えません!二人の所持金合わせても、5,000圓無いんです…」


 あら、そんなに稼いでは無さそうだとは思ったけど、そこまで無いものなのか。あぁ折角生き返ったチュールさんもしょんぼりしてしまった。

 シフォンさんは目を見開いたまま、硬直し続けている。大丈夫かね?


「…無いとは聞いていたが、そこまで無いのか。だとよ、ドミニク。どうする?」


「…どうするも何も。採集に必要なら、弟子に必要なんだもの。師匠の出番でしょ。私が立て替えるわよ。本来成り立ての弟子には良すぎる物だから、シフォンちゃん、チュールちゃん、半額は持ってね。お金出来たら私に支払って頂戴。いいわね?」


「え?いや、そんな!」


「なんでドミニクさんが!?」


 師匠ってそんなことまでするの!?って驚きかけたけど、散々お世話になってて、グスタフさんもするのが当たり前みたいにしてるから、師匠は弟子の面倒をみるとかあるのかも知れない。


「…庚ちゃんもだけど、異邦人は徒弟制度について知らないのね。弟子をとったら、弟子として必要な最低限の物は、師匠が用意するのよ。食事時も挟んで修練してるなら、食事代も師匠持ち。私は職人は抱えて無いから、弟子はあなた達見習い二人だけ。面倒見るのは当然の事なのよ?一人立ちするようなら、道具を見繕うのも師匠の仕事。まぁ、それを買うのは弟子だから弟子の懐具合にあった道具を選ぶのが肝心なんだけど」


 グスタフさん、所持金殆ど吹っ飛ぶもの用意してくれましたっけ。完全に把握されてますね。って、お金は薬でしか稼いでないから当たり前か。


「私は今まで弟子を取ってこなかったわ。工房に置いてあるのは、見習いに使わせるには高級品ばかりなのよ。だから素材代の一部は支払うように言ったけど…安めの用意すべきかしらね?お金を持ってないだろうとは思ってたけど、ここまでとは思わなかったのが、正直な話だわ。綿なら何とかなるかしらねぇ。あ、うまいこと〔叩きバショウ〕が採集出来たら芭蕉布でも織って貰おうかしら。…今の時期には寒いけど」


「芭蕉布って薄いんですか?」

 聞いたこと有るけど見たこと無い。


「夏服向きなのよね。サラッとしてて暑い夏には着心地が良いんだけど。後、野営の際の蚊帳を編んだりもするわ。〔叩きバショウ〕は強度もあるから縄にもするわよ」


 ほほぅ。使い勝手が良さそうな物ですね。サラッとしてるって事は麻みたいなのかな?まぁ、どっちも植物繊維だ。…それを言ったら木綿もだけど、また違うんだろう。


 あ、やっぱり普通に「織る」ってドミニクさん言ってる。やはりそのつもりだったんだね。


「あ、あの!ドミニクさん、ちょっと話があるんですが」


 シフォンさんがやっと動きました。ドミニクさんとチュールさんを連れて奥に行く。


「なんだ?どうしたんだ?」


 アドルフさんがさっぱり解らないという声を出す。


「多分、弟子としてどこからやるのか、の話じゃないですかね」


「ん?どう言うことだ?」


「異邦人の世界では、分業化がかなりされてたんですよ。服飾の職人といえば、布から服を造り出すんであって、採集・糸造り・染色・布を織るを全部する人は殆どいなかったと思います。思い通りの布を造るため、とか、趣味で、とかはいましたけど、少数だと思います。皮革も解体・なめしまでは一緒にやってると思いますが、加工は別なんじゃないですかね?まぁ、仕入れるにはこの業者から、とかの拘りは有るとは思いますけど」


「こっちでも似たようなもんだぞ。グスタフ、ビバリー、ドミニクのやり方のが少数だ。あんなのばっかじゃないぞ?」


「ここにいる職人で「あんなの」じゃないの、ロイさんだけじゃないですか」

 四人中三人が、アドルフさんの言う「あんなの」なのはどう言うことですか?


「む、それはここが北西区だからだよ。そんな連中ばかり集めた職人街だからだ」


 アドルフさんが偉そうにする事じゃないでしょう…てことは他の人達もそうなのね。ロイさんは木工師の癖に武器屋なんかやってるしね。

「シフォンさんもチュールさんもそれを知らなかったんですよ。チュールさんはやる気みたいですけど、シフォンさんは考えもしなかったようで、悩んでるんじゃ無いですかね?」


「さっき、嬢ちゃんが話がある、と連れてったのはそれか?」 


 ロイさんの科白に頷く。


「一人はやる気だと言うが、採集はどうするんだ?ドロップしかしないのは無理だろう?一部採集もどうか解らない。嬢ちゃんは普通に採集出来るが、違いはなんなんだ?」


「魔物の死体を残すには〔解体〕を覚える必要が有るんです。私は例外的に最初から出来たんですが…」

 残酷描写と痛覚については黙っておこう。


「庚ちゃんが解体するって言ったのはそれのせい?」


 あぅ。ビバリーさん鋭い。

「はい。私は例外的に〔解体〕覚えてないのに、死体を回収できます。それを異邦人に説明するのが面倒なので〔解体〕覚えておけば、説明しなくて済むかと思いました。なんで例外なのかは、自分でも解らないんです」

 嘘は付いてない。なんでここに来たのかさっぱりだ。


「なら別に獣を解体せんでも、植物を解体すれば良かったろうに」


 え?今なんて言った?

「植物の解体?」


「〔叩きバショウ〕で言えば、繊維を取るためにはばらす訳だから充分〔解体〕なんだよ」


 …そんな方法が。グロい思いをしなくても良かったの?

「…知りませんでした。でも獣の解体をすると言ったのには綺麗に出来るようなら高く売れるかも、と言う欲も有りましたし、やってみて損したとは思ってません。覚えた方が良さそうな技能ですし」


 植物も獣もどっちも解体なんだな…ん?

「植物で〔解体〕のレベルがあがったら、獣の解体も上手になったりします?」


「多少はね。心臓の位置とか、ここに刃を入れたらいい、とかは解るようにはなるけど、実際に動かす手は、そうは簡単に動いてはくれないから、獣の解体を巧くなるには、獣を数多く解体するしかないわ。植物の魔物は内臓無いのも多いし、本体ごと倒す必要が有るのは一部なのよ」


 内臓あるのが居るんだ…。

「魔物植物は一部採集が基本なんですか?」


「致命的な攻撃してくるのじゃなきゃ、基本放置だ。採集で必要なのは本体じゃないことが多いんだよ」


「魔物なら狩らなくちゃいけない、ってもんでも無いんですね」


「有用な魔物植物は、下手に狩って、居なくなる方が痛いわ。植物以外の魔物は素材にするなら、狩る必要があるのが殆どなんだけど、素材にもしない、肉も食べない、攻撃もしてこないなら、狩る必要無いでしょ?」



 そりゃそうだ。無駄な殺生は、しないにこしたことは無いね。



 三人が戻ってきた。


「今回はチュールちゃんの分だけにするわ。〔叩きバショウ〕は採集しに行くけど、シフォンちゃんは見学。一部採集出来ないかどうかの確認なら一人で充分ですものね。…シフォンちゃんの気が変わるかも知れないから取り置きだけはしてくれる?そうね…一ヶ月でいいわ」



「了解。で、最初の予定の、その子の武器はどうするんだ?鉈使うなら、それでも良かったが、今の状態なら武器無しだろ?」


「そうだ。話が大きくずれたが、その為にこの子をここに連れてきたんだよ。持久力は大丈夫か?」


 アドルフさんに聞かれて、小さく「はい」と答えるシフォンさん。…買わないって事は弟子にはならないかもなんだね…。

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