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第二世界  作者: 長月 萩
80/115

本文79 放置

「おい、一体これはどうなってるんだよ!」


 あ、〔気絶〕かけた男が起きた。


「どうって、強盗失敗してとっ捕まったんだよ」


「なんだと!?八人もいたのにか!」


「こっちは九人だしねぇ」


「…七人しかいなかったぞ?」


 七人だとしても、一人しか違わないのにね。どれだけ自分達に自信が有ったのやら。



「とりあえず全部集めてくるか。ビバリーは気絶させたんだろうけど、グスタフはなにしたんだ?」


「眠らせただけじゃよ。起こすのは簡単じゃぞ?」



 アドルフさん力持ち。肩に一人、片手に一人ぶら下げて戻ってきた。グスタフさんは一人を肩に背負って戻ってきた。グスタフさんも力有るな。成人男性をそんなに軽々と運ぶとは。

 二人がもう一度同じようにして戻ってきて六人。あ、しまった。手伝えば良かったか。二人とも軽々と運んでるので呆けてしまった。


「さて、どうして欲しい?このまま放置されるか、街に連れて帰るか。あ、街に帰ったら即衛兵に拘束されるわよ?放置するなら、道だと邪魔だからどっか奥に持って行くけど?」


「…めんどくさいな」


 アドルフさん、ボソッと言わないでくださいな。どっちにしてもめんどくさいのに変わりは無いのか…。


「そんな、なぁ、見逃してくれよ。出来心だったんだ。もうしないからさ。人を襲ったのだって初めてだったんだよ」


 盗人猛々しいとはこの事か。…全然猛々しくないな。…今日はあがりが少ないとか言ってなかったか?


「そんな事云われても、もう罪状付いちまったから、衛兵詰め所で申し開きするしかないぞ?」


「なんだと!?…そうだ!「GMコール!」」


 え?なんでコールかけてるの?


「呼びましたか?」


 エフェクトと共にまた妖精が現れた。


「こいつら、縛り付けたまま放置しようとしてるんだよ!それは犯罪だろ!?」


「…彼らに対する犯罪行為が認められています。彼らには逮捕する権利があり、護送する義務は有りません。犯罪は認められません」


「俺はそっちのじいさんに縛られたんだ!じいさんには何もしていない!じいさんには逮捕する権利は無いだろ!なら犯罪じゃねぇか!」


「…拘束を犯罪被害者より依頼されています。犯罪行為は認められません」


「なら!そのじいさんとそっちの獣人に何かされた連中は!?」


「…あなた方の脅迫発言以降の行為であり、善意の救助者と認めます。犯罪行為は認められません」


 おお。真っ当ですね。


「私は罪状を裁定するのみです。罪状に不満が有る場合は衛兵詰め所にて、衛兵に申し出てください。尚、逮捕された場合、既に衛兵詰め所、及び役所に申し出られている犯罪行為も、加算される事をお伝えいたします。では失礼いたします」


 あらら。被害に有った人達が申し出てれば追加ですか。門番さん達が言ってたのと同一人物なら大変だな。



「納得したかの?」


「くっ…」


「街に連れてくとなると、全員起こさなきゃか?」


「起こすと騒ぐんじゃない?捨ててくのが一番楽よ?」




「…このままログアウトだとどうなるんだ?」


「次のインは街の中央広場だから、そこで拘束されるんじゃないの?」


「死んでも同じだよな?」


「デスペナ付いて、尚且つ罰則、ですよね。罰則がどんなもんか知らないですけど。庚さん知ってますか?」


「えっと、強盗の場合は物品の返却、賠償金の支払い、所持金の三分の一の没収だったかな?それにプレイヤーカーソルが15日間、犯罪者カラーの黄色になって、それが戻る前に犯罪犯すと、罰則が厳しくなったと思います。未遂は解らないです」


「賠償金は幾らぐらい?」


「返却する物品と同額だったはずですよ?」


「…その金持ってなかったらどうなるんだ?」


「さぁ?」


 無い袖は触れないよね~。


「金持ってなかったら、所持品を売却してそれに充てるんだ。ちゃんと正規値段で買い取ってくれるぞ?それでも足りなかったら強制労働だな。世界人の場合だが」


「強制労働って何やるんですか?」


「そこまでは知らない。幾つかから選べるみたいだぞ?ただ、強制労働中は技能は一切伸びないらしい」


「うわ、酷い」


「異邦人はどうなんだろうな?まだ、金を払えない奴が出たって話は聞かないなぁ」


「え?そんなに異邦人から犯罪者が出てるんですか?」


 シフォンさんが驚いた声をあげている。うん。驚いたよ。


「ん~、犯罪者って言っても軽いもんだがな。落ちてるもん拾って届け忘れた、とか。後は売買するのに役所の許可が要るのを知らなかったとか。大半は「知らなかった」が原因だな。確実に摘発されるの解ってたら最初からしなかった!って奴もいたぞ?それは単なる開き直りだが、大半は初犯の段階で反省してるから、もうしないんじゃないか?」


「落とし物拾って、犯罪者になるの!?」


「所有権限の無い物を12時間以内に届けなかったら、着服扱いだな。門番、役所、衛兵詰め所のどれかに渡してくれりゃ良かったんだけどな。あ、街に居ない時間はカウントされないぞ?」


「所有権限が有るか無いかはすぐ解るんですか?」


「物によって、所有権限を付けられる物が有るんだよ。それはアイテム名に「専用」とか、但し書きが追加されたりする。捕まった奴も、名前が有るから自分で探そうとして、時間経過しちまったんだよな。そう言う場合は三カ所のどこかに拾ったことと、持ち主は探すってことを伝えておけば、落とし主が探してくれと言い出さない限り、預かってても問題は無いんだがな。売っ払っちまったら勿論着服だぞ?」


 日本の警察は優秀だと思うけど、完全に信じられる、と言うほどは優秀では無いんだよね。特に落とし物の場合、見つからない可能性も高い。名前が有るなら探して本人届けてあげよう、そっちのが早かろう、と言うのは善良な日本人が考えそうな事だ。裏目にでちゃったね。


「持ち主も、善意でしてくれたんだから咎めないでやってくれって話になって、これは罪になるから今後気を付けるように、と言う注意だけで、罪状も罰則も無かった筈だぞ。おまえ等も気を付けろよ?」


「知らなかったらやりそうだな…」


「えぇ。その人が私でもおかしくなかったわ…」



「ちょっと!そこっ!何時まで脱線してんのよ!」


 ウダウダ言ってる連中の相手を任せっきりにして、雑談してました。ごめんなさい。



「全く。異邦人とは犯罪の感覚が違うのかしら?」


「衛兵の優秀度の違い、じゃろう。この国の衛兵は瞬時に現れるし、間違いも犯さん。じゃがな、そうじゃない国では、ばれなきゃ大丈夫。これぐらいは許される。と言うのが有るんじゃよ。治安が悪い国では、衛兵と悪人、役所と悪人の癒着があったりもするんじゃよ。異邦人の国がどんなもんかは知らんがのう。まぁ、この子らを見るに、そこまで悪い国では無さそうじゃがの」


「…確かに私もこの国にきて、所有権限の落とし物の件は驚いたわよ。でも「所の法に矢は立たぬ」って言うじゃない?自分の滞在する国の法律ぐらい目を通しておきなさいよね。それとも、そんな諺知ないのかしら?」


「あります。「郷に入りては郷に従え」ってのが」

 こっちのが有名だけど、「所の~」も類語に載ってたはずだ。なぜそっちを選んだ、第二世界。…そんなの多いな。


「それ、同じ意味なの?」


「知ってる?」


「郷に従えは知ってるけど…」


「帰ったら調べるか…」


 口々に言う異邦人プレイヤー達。多分「所の~」より「When in Rome,」の方が有名だと思うんだけど、どうなのかね?



「おい!ほったらかしてんじゃねぇぞ!」


 おっとまた雑談に入っちゃいましたね。すみません。てか、なんでそんなに態度でかいの?何様なの?


「全く、煩いわね。本当に置いていこうかしら?」


「さっきからそう言ってるのに…」



「どうじゃろ?この起きてる二人は解いてやって、放置すると言うのは。後は勝手にすれば良かろう」


 グスタフさんまで放置方向?


「でも、解いたら危なくない?」


「かかってきたら返り討ちにすれば良かろう。この二人は魔法も使えん。そっちは長剣で、そっちは短剣じゃ。持っとるもんもなまくらじゃし、脅威にもならんぞ?嬢ちゃんのコート無し装備でも、かすり傷すら付けられんじゃろうな」


 え?そんなしょぼしょぼだったの?






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